巻き添えで召喚された会社員は貰ったスキルで勇者と神に復讐する為に、魔族の中で鍛冶屋として生活すると決めました。

第３４話 それから、３年後・・・

フローディアを殺してから、早いもので３年が過ぎようとしていた。殺した直後は、目標を無くしたみたいな喪失感を味わっていたが、数日もしたら新たな目標が案外簡単に見つかるモノでそれは、俺の周りに居る女共を全員孕ませる事だった。あの当時、俺の子を宿したのはターニャとリィナだけだったがそれからほぼ毎晩代わる代わる交代で抱いていくと、３ヵ月後にまず始めに美沙が妊娠した。

更に１ヶ月ほどすると今度はサーラとマリアも俺の子を宿し、その翌月にはセレスまで身篭ってしまう。こうなると血縁関係がややこしくなるのがマリアとリィナだ。生まれる子供達は異母兄弟になる筈なのだが、セレスの子は祖母の子にも当たるのでマリア達には叔母か叔父になってしまう。とりあえず深く考えない様にしたみたいだった。

そして、まずリィナが出産を果たし男の子が産まれた。そして俺とリィナは名をヨシムネと命名したのだが後日とんでも無い事が発覚した。デウスの奴がうっかり記憶を持たせたまま転生させていやがった。

「惚れた女とその女を奪った奴の子供として転生させられるってどんな罰ゲームだ！？」

と、１年位してようやく喋れる様になってから片言で言われるとさすがに俺とリィナは申し訳無く思ってしまうが、直接の原因のデウスはしれっとした顔で

「うっかり記憶を消すのを忘れてました、てへっ♪」

と開き直っている。そのデウスの傍らでは６人の幼児が眠っている。　以前抱いた時にデウスは受精卵を体内で保存していた様だったんだが、リィナの出産直後に６つ子で産むとは思わなかった。長谷川の記憶を残したまま転生させた罰として、６つ子の名前は全て　お○松、と○松、十○松・・・と某有名作品の名前にしたのだが、皆に贖罪を済ませてから子を産むと言っていたのにどさくさに紛れて産む辺り、結構こいつも悪い女かもしれない。

その後産まれた、美沙・サーラ・マリア・セレスの子も全て男の子だった。ターニャの産んだラケシスの他が全て男の子だったのには俺も流石に驚かされたが、更に驚かされたのが美沙が４人に男の子の名付け親になった事だ。

だが美沙の子には助三郎、サーラの子が格之進、マリアの子には弥七、そしてセレスの子に八兵衛と命名するから、まだ上手く喋れないヨシムネにまで

「水戸黄門かよ！？」

と、ツッコミを入れられていたが美沙は大真面目だ。

「どうせなら、みんなで世界中を歩いて回りながら暮らすのも楽しそうですから」

と言われると、確かにそう思えてきてしまう。

あと周辺で変わった事といえば、元勇者のロベルトだ。彼はこの魔族領に腰を落ち着けたのだがその傍らにはサーラの母親が寄り添っていた。ロベルトは邪神に利用されて魔族領に無理やり連れてこられたサーラの母親を気遣い、何度も足繁く通う内にお互いに惹かれ合う様になり格之進が無事に産まれるのを見てから２人は結婚した。

サーラは複雑な表情を浮かべていたが、これまで王の妾として蔑まれてきた母親が本当の幸せを掴もうとしている姿を見て影でロベルトに

「母の事、よろしくお願いします。お義父さん」

と伝えている所を見てしまったが、他の皆には内緒にしている。

魔王と勇者を必要としない世界に変わり、それまで世界を支配する立場にあったターニャはその地位を自ら退き世界を２１の州に分割し、その州の長の中から代表を選出して国を治めていく形に変えた。その後、州の長は一定周期で人族・魔族・人と魔族のハーフが交代しながらその任に就き特定の種族だけが繁栄する事を防ぐきっかけになる。

人族と魔族の共存が進む中で、舞台から姿を消そうとしているのはゴブリン・コボルト・オーク達だ。昔は人の女が攫われて苗床となっていたが、色々な町や村で対策が取られる様になり自然繁殖が難しい彼らは自然と数を減らしていく。一部の例外として、とあるオークの住処だけは一定数をその後も数百年に渡り維持し続けるのだが原因は不明だ。

一見すると世界は平穏な平和に保たれている様に見えるが、実際は裏で血生臭い争いがいまだ絶えない。神界でも主神である筈のデウスが下界に降りてしまった為に混乱しているらしく、それまで配下だった神々が新たな主神になろうと火花を散らしているとデウスは言っていた。

だがデウスはその時知る事が出来なかった、配下だった神々が手を組みデウスが主神に戻る事が無い様に存在を消そうとしている事に。そして、デウスと一緒に下界で勇者と魔王を必要としない世界に変えた異世界からの異物である俺や、他の家族達も始末する為の軍勢を派遣する準備が整おうとしていた事も。

そして、唐突にその日がやってきた。空を白い影が覆いつくし、天使を中心としてデウスの配下だった神々が指揮する神軍が俺達の住む家に攻め入ってきたのだった。