魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)

三毛猫 ポチ

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アツモリ、地獄の養成所へ行く

第75話 三者からの依頼

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 敦盛たちは足取り重くドルチェガッバーナ城へ行ったのだが・・・何故か王宮の門番が敦盛たちが王宮へ入るのを拒否した!ルシーダは聖職者らしく毅然とした態度で「セレナ王女殿下からギルドに依頼があって支部長命令で王宮へ来たのに、王宮へ入れないのはおかしいです!」と門番に詰め寄ったが、それでも門番は「聞いていません」を繰り返すだけで殆ど押し問答になっていた。
 仕方なくエミーナが『魔法の巾着袋マジックポーチ』からセレナ王女の指輪を取り出して「セレナ王女に取り次いで欲しい」と頼んだから、今度は逆に門番だちがひれ伏さんばかりに驚いて、門を入ってすぐの所にある詰め所の兵が一人、大慌てでぶっ飛んで行ったほどだ。
 結局、知らせを聞いて門まで駆けつけてきたマーチ侍女メイド長が、敦盛たちの姿を見て「大変失礼を致しました」と深々と頭を下げたほどだ。

「・・・勘弁してくれよなあ。俺たちはセレナ王女からの依頼を指名されたのも同然なのに、どうして門番が通してくれないんだあ?依頼を断るように仕向けてるとしか思えないぞー」
「重ね重ね申し訳ありません。ですが、門番たちに非があるとも言えないのです」
「どういう事だ?」

 敦盛は想定外のマーチ侍女メイド長の言葉に怒り言葉を引っ込めた形になったけど、そのマーチ侍女メイド長は「はーー」とため息をつきながら
「実は・・・さきほど、王宮の庭にエルフがいた事で王宮内が大騒ぎになりまして・・・」
「「「「「 エルフ? 」」」」」
「左様で御座います。それもハイエルフの若い女です」

 マーチ侍女メイド長の思わぬ発言に、敦盛だけでなくエミーナたちもハモってしまったほどだ。このファウナでハイエルフの女といえば・・・シルフィしか考えられない!
「・・・騒ぎを聞きつけたセレナ様とレクサス様が庭へ行ってエルフと直接お話をされた事で、ようやく王宮内が落ち着きを取り戻したばかりなのです。当然ですがプレオ侍従長もフィールダー近衛騎士団長も『門番は何をやっていたのだ!』とばかりに怒り心頭で門番たちを叱責したものですから、結果的にアツモリ様たちに御無礼な態度を取った形になり、申し訳ありませんでした」
 マーチ侍女メイド長は再び深々と頭を下げたし、詰め所にいた門番も含め、全員が敦盛たちに深々と頭を下げたけど、敦盛たちは「はーー」とため息をつく事しか出来なかった。まさか自分たちのパーティの一員が王宮内に勝手に入った事で、逆に自分たちが疑われる切っ掛けになったのだから、怒りのやり場がないのだ。
 まあ、樹木の精霊ドライアードに命じて姿を消したか、あるいは大地の精霊ノームに命じてトンネルを掘ったかのどちらかで王宮の庭に勝手に入ったというのは容易に想像がつく。シルフィは『深層の森』から出た事がないから、人間たちの事をあまり知らない。王宮がどのような所かも分かってないから、フラッと入り込んだとしか思えない。ある意味、敦盛たちの監督不行き届きなのだからシルフィに責任を押し付ける訳にはいかないのだ。
 でも、結果論になるけどホントに偶然ではあるがパーティメンバー全員がセレナ王女のところに集まった事になったのだ。それが不幸中の幸いだ。

 マーチ侍女メイド長が案内したのは今回もセレナ王女の私室だ。

” トントン ”

 マーチ侍女メイド長が扉をノックしてから少し間を置いて、扉が内側から少しだけ開けられた。扉を開けたのはセフィーロ執事だったから敦盛も意外に思ったけど、とにかく敦盛たちはセレナ王女の私室に入った。
 セレナ王女は敦盛たちの姿を見ると立ち上がったが、前回の時と違い、笑顔で出迎えた訳ではなかった。いや、どちらかと言えば緊張した表情であり、隣にいるレクサス支部長も眉間に皺をよせているほどだ。ただ、相変わらずではあるがシルフィはニコニコしたままだ。
 マーチ侍女メイド長が椅子を引いたから敦盛たちは座ったけど、敦盛から見て時計回りに満里奈、エミーナ、ルシーダ、ココア、シルフィ、レクサス支部長、セレナ王女だ。セフィーロ執事は後方に控えているけど、何故かセレナ王女の後ろには二人の武官が立っている。
 一人はブロンドヘアーの持ち主だ。セレナ王女の双子ではないかと思う位に顔が似てるが、目の前にセレナ王女がいるから絶対に別人だ。背中まで届きそうな髪を軽く後ろで纏め上げてるが、その目は獲物を狙う鷹のように鋭く、腰に剣を吊るしているが何らかの魔法を付与された剣のようた。
 直立不動の姿勢からエミーナは騎士かと思ったが、この国どころか大陸西側では女は騎士になれないから、あるとすれば厳格な騎士の家系出身の令嬢だ。その証拠に胸の膨らみは男ではない。もう一人は栗色の髪の持ち主で、バンダナを巻いている。こちらは剣を吊るしてない。だが、全く隙があるように見えないし、目つきは非常に鋭く、それだけで威圧感を感じる。緩やかだけど胸の膨らみから見て、こちらも女性だ。

 敦盛たちが全員座ったところでセレナ王女も座ったけど、そのセレナ王女は真っ直ぐに敦盛の目を見た。
「・・・このたびは、わたくしのたっての依頼を引き受けて下さり、感謝の言葉も御座いません」
 セレナ王女はそう言って頭を下げたけど、顔を上げた時のセレナ王女は前回と違って悲痛の表情で敦盛を見ていた。どういう事だ?
 そんな敦盛の疑問の声が聞こえたかのように、セレナ王女は再び話し始めた。

「・・・今回、レクサス支部長に直接お願いした仕事というのは、グロリア大公、ティーダ宰相、わたくしの三者からの依頼です」
「「「「「 三者? 」」」」」
 敦盛たちは思わずハモってしまったが、相変わらずではあるがシルフィはニコニコしたままだ。
「そうです。担当直入に言います。アツモリ様、幽霊退治をお願いします」
「「「「「「 幽霊退治!? 」」」」」」

 さすがに今度はシルフィもハモった。しかもシルフィから笑顔が消えた。どうやら事の重大さがシルフィにも分かったようだ。
「・・・今回の目的地は、アリアドネ郊外にある、レパード子爵の別荘です」
 セレナ王女は言葉を選ぶかのようにゆっくりと目的地を告げたが、その言葉を聞いたエミーナが突然立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待ってください!レパード子爵の別荘と言えば、『地獄の養成所』とまで言われた場所です!そこで幽霊退治をしろと言わたら、考えられる事は1つしかない!こんな要請、絶対に馬鹿げている!素直にハイと言える訳無いです!」
「落ち着け!」

 レクサス支部長はエミーナを叱責した形になったけど、それでもエミーナは立ったまま、なおも抗議を続けようとしたが、レクサス支部長が再び「落ち着け」と言った事で、ようやくエミーナは座ったけど不機嫌さを隠そうともしない。ルシーダも明らかに顔色が悪いから何か知ってるとしか思えないけど、ココアは内容を知らないようで不安そうな顔でエミーナとセレナ王女を交互に見ている。敦盛と満里奈は互いに顔を見合わせているが、当たり前だが敦盛も満里奈も、何故エミーナが不機嫌なのか、その理由は全然知らない。
「・・・エミーナ様が怒るのも無理ないです。ですが、わたくしにも責任の一端が無いとは言えないのです」
「どういう事ですか?」
 セレナ王女は申し訳なさそうにエミーナに頭を下げたけど、エミーナはその発言が意外だったようで、思わずセレナ王女に聞き返してしまったほどだ。
「・・・エミーナ様が仰った通り、レパード子爵の別荘が『地獄の養成所』とまで呼ばれるほどの場所になったのは、わたくしも承知しております。もちろん、レパード子爵が蒔いた種なのは間違いないですが、レパード子爵の提案をティーダ宰相に許可するよう指示を出したグロリア大公も、その予算執行書にサインしたティーダ宰相も事の重大さが分かってます。ですから、既にグロリア大公が自身の直属の騎士団の半数を向かわせたのですが・・・」
「全滅したから、仕方なくセレナ王女に泣きついてきたという訳ですか?」
「その通りです。エミーナ様は御存知ないかもしれませんが、わたくしの教育係を務めたのがレパード子爵ですし、レパード子爵の妹というのがアリアドネの行政官の夫人になります」
「セレナ王女はアリアドネ公を兼ねている。アリアドネの街はレパード子爵の領地に隣接してるから無感心という訳にはいかないし、その代理者ともいえる行政官の義理の兄の不始末が事の発端だ。しかも元・教育係だから、セレナ王女には道義的責任があると仰いたいのですか?」
「簡単に言えばそうなります。アリアドネはマックスマーラ王国との国境の街ですが、ファウナとはアトロポス山を挟んで反対側にあり、山の麓には我が国有数の保養地であるルキナもありますから、交易、観光の拠点として大勢の人が集まります。今は噂は広まってませんが、分かってしまうのは時間の問題かと思われます。そうなる前に決着をつけたいのです」

 セレナ王女はそう言うと立ち上がって深々と頭を下げたから、慌てたエミーナが「そんな事をされたら困ります」と言って逆にセレナ王女に座るよう促したほどだ。
 そんなセレナ王女が座った後、後ろに立っていた二人に目配せをしたから、二人は頷いた。
「・・・今回の件を全てギルドに丸投げするのは、わたくしの良心に反します。ですから、わたくし直属の配下の者を2名、同行させます。あのあたりの地理にも詳しいし、レパード子爵の別荘にも行った事があるので、道案内に最適かと思います」
 セレナ王女がそう言うと、後方にいた二人のうち剣士が1歩、前に出た。
「・・・わたくしの名前はバネット。見ての通り剣士だ」
 そう言って頭を下げたが、その礼は騎士そのものだ。女の騎士は有り得ないから、エミーナの勘はどうやら当たったようだ。
「・・・あたしはモコ。拳聖アベニールは師であり父だ」
 もう一人の武官風の女はそう言うと軽く頭を下げたが、その一言でエミーナも納得がいいった。アベニールといえば、ドルチェガッバーナ王国どころか大陸西側で名を知らぬ者はいない程の武闘家だ。その遺伝子を継ぐ子なら、セレナ王女が直属の者として雇ったとしても全然不思議ではない。
「・・・今回、この2名をアツモリ様に同行させますが、アツモリ様が自身の手足の如く命令しても構いません」
 セレナ王女は敦盛の目を真っ直ぐに見てそう言ったが、敦盛は「分かりました」とだけ答えた。

 レクサス支部長が眉間に皺を寄せたまま重々しい表情で口を開いた。
「この件がおおやけになると、ドルチェガッバー王国は危機的状況になる。結果だけを見たら我が国が魔王軍に協力した言われても仕方ない事であり、何が何でも噂が広がる前に全てのケリをつけねばならない。本来なら王国騎士団の全軍を上げてでも片付けなけれならないなのだが、そんな事をしたら連合騎士団の結束にヒビが入る。オレとしてもギルドの全員を招集したいのだが、時間がない。しかも、今回の特異性を考えたら『古代語魔法』『神聖魔法』『精霊魔法』の使い手がいるパーティでないと恐らく無理だ。そう考えた時、青銅ブロンズであったとしても『ニャンニャンクラブ』以外の選択肢がないのだよ。もちろん、今回の件を解決したら、成功報酬の形ではあるがゴールドクラスで払う事は約束する。他のギルドメンバーもファウナから出る事を禁止するし、『疾風イル ヴェント』を始めとした他のパーティも、ファウナに戻るよう連絡を取る。君たちから要請があれば応援を向かわせるのも約束する」
 それだけ言うとレクサス支部長は敦盛に向かって「頼んだぞ」と言って深々と頭を下げた。
 敦盛は『魔王軍に協力した』というレクサス支部長の言葉、それと『幽霊退治』というセレナ王女の言葉、さらにはエミーナが不機嫌さを隠そうともしなかった事から、相当な難題を押し付けられたと直感し、正直逃げ出したい気分だった。

 エミーナはこの場でバネットとモコと軽く話をして、ギルドで落ち合ってから出発しようという話になって、敦盛たちも同意したから立ち上がったが、その敦盛が立ち上がった時、レクサス支部長はこう言った。
「命を大事にしろ。最悪、目的を達成できなかったとしても、内容次第では依頼料を満額支払うのを約束する」
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