魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)

三毛猫 ポチ

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アツモリ、地獄の養成所へ行く

第76話 羨ましいぞ

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 敦盛たちは一度『海の神ネプトゥーヌス』へ戻ったけど、それはルシーダが自分の部屋に置いてあったを持ち出すためだ。シルフィの右腰には銀色に輝く弓、左腰には細剣レイピアを吊るしているが、魔力の波動を検知できる人なら、どちらからも痛いくらいの魔法の波動を感じているはずだ。背中の矢筒に入ってるのは真銀ミスリルの矢だけど、エミーナの『魔法の巾着袋マジックポーチ』の中には、この10倍以上の矢が入っている。

 そんな敦盛たちがギルドに行ったら、既にバネットとモコ、ココアは来ていた。

「・・・全員、揃ったな」

 敦盛が七人を見渡したけど、なぜかエミーナが首を横に振った。
「・・・おーい、エミーナ」
「ん?敦盛、どうした?」
「出発しないのか?」
「出発したいんだけど、ミニカさんが来ない」
「はあ?」
「これから行く場所で必要な物をギルドが、正確にはセレナ王女の名前でギルドが手配したんだけど、それを取りに行ってる」
「おいおいー、俺達は時間が惜しいんじゃあないのか?」
「それは事実だけど、同時に目的を知られるとまずい。だからアリアドネ経由ルキナ行きの馬車で行く。今夜はアリアドネで宿を取って、そこから先は徒歩で目的地へ行く」
「ふーん」

 敦盛はすぐにでも出発すると思っていたから拍子抜けした格好だ。でも、失敗は許されないのだから、事前準備も大切だ。
 敦盛たちは輪になってミニカが来るのを待ってるけど、バネットはセレナ王女の私室にいた時と違って完全武装と言ってもいい恰好だ。女でありながら騎士のような振舞いをしていたし、装備も騎士顔負けだから、敦盛的には気になっている。

 そんな敦盛の視線に気付いたのか、バネットは
「ん?どうかされましたか?」
「あのー、バネットさん」
「バネットで結構だ、アツモリ様」
「そ、そうなのか?」
「全然構わない」
「そ、それじゃあバネット、君の剣は魔法王国時代の物なのか?」
「あー、これかい?」
 バネットはそう言うと鞘から剣を一気に抜き取ったけど、その剣は白銀に煌めいていた!
「そ、その輝きは聖剣!」
 ルシーダがバネットの剣を見て叫んだけど、バネットはニヤリとした。
「その通りだ。ただ、これは魔法王国時代の物ではない。師が譲ってくれた物だが、師が言うには今から50年ほど前に、バレンティノ教団の最高司祭が自らの死を悟った時にバレンティノ神を自らの体に降臨させ、それと引き換えに神の奇跡で自分の魂を宝玉に封じ込めた物だから、言うなればバレンティノ神が作った聖剣だ」
「へえー。という事は地上の代理人ともいうべき聖人の魂が封じられた剣という事か・・・」
「ちょっと待ちたまえ。たしかに今の最高司祭のアバロン様は男性だが、この時の最高司祭は女性だ」
「あれっ?そうなの?」
「神の代理人である最高司祭は高司祭の中から選ばれるが、性別は関係ないのだよ。実際、7つの神は男の神が4人で女の神は3人だけど、今の教団のトップは男性が3人で女性が4人だ。それに、魂の強さに性別は関係ない。あるのは使い手の魂と共感できるか、出来ないかなのだ。共感できなければ普通の魔法の剣と同じか、それ以下の力しか発揮できない」
「ふーん」
「この剣と盾と鎧は3つで1つなのだよ。宝玉に込められた魂と共感出来れば最大限の効果を発揮できるし、重さも感じなくなるけど、魂と共感できなければ重くて男性でも動けないほどだ。わたくしが軽々と装備できるということは、使い手を剣が認めた証拠だ」
 敦盛も満里奈も興味津々にバネットの剣に触れているが、たしかに神々しいまでの威光を感じる。バレンティノ神の代理人を務めた程の人物の魂なのだから、相当強い魂だというのは敦盛にも分かる。バネットは金属鎧プレートメールとマントを装着してるが、その輝きから聖属性なのは間違いない。背中には歩兵が使うような円形の盾ラウンドシールドをつけているが、輝きから聖属性なのは間違いないし、盾を持ってるからには、状況に応じて片手持ちと両手持ちを使い分けてるようだ。


 モコは武官の服の上に外套コートを着ているが、さっきから微かに金属が擦れる音がしているから、武官の服の下には鎖帷子チェーンメイルを重ね着してるのは間違いないが、これも相当な重量になるから軽量化の魔法が掛けられているはずだ。バンダナには不思議な模様が描かれているが、模様ではなく魔術師なら読めて当たり前のルーンなのだから、何らかの魔法が付与されたバンダナなのは間違いない。だが・・・モコの手袋グラブ、いや籠手ガントレットには2つの模様が描かれている!
「・・・あのー、モコさんの手袋グラブは・・・」
「アツモリ、あたしの事はモコで構わない」
「そうなの?」
「『モコさん』などと呼ばれると調子が狂う。だからモコでいい」
「そ、それじゃあモコと呼ばせてもらうけど、モコの手袋グラブには2つの模様というか紋章のような物が刻まれてるけど・・・」
「ああ、この事かい?」
 そう言うとモコは両手の籠手ガントレットを『ガチン!』とばかりに重ね合わせた。
「うわっ!火柱と水しぶきだ!」
「その通り!」
 敦盛は思わず声を上げてしまったけど、モコはニヤリとして敦盛を見ながら
「大海原の覇者フェンディと太陽の守護者ヴェルサーチェは神であり同時に夫婦だ。この籠手ガントレットは夫のフェンディの力、すなわち水の属性と妻のヴェルサーチェの力、すなわち炎という、相反した2つの力が込められていて、左右同じ属性にする事も出来るし、違う属性にする事も出来るし、攻撃の途中で左右の属性を自由に変える事も出来るし、籠手ガントレット方形の盾ヒーターシールドに変えることも出来る」
「マジかよ!?」
「普通の人間では使いこなすどころか、全く使いこなせないクセのある代物なのは間違いない。フェンディの水の力は氷の力に、ヴェルサーチェの太陽の力は聖なる力にも変えられるから実質4つ、あー、いや、わざと属性を消す事も出来るから5つの属性を持っている籠手ガントレットなのさ」
「嘘だろ!?」
「ホントだ。どんな物も急激に熱せられた後に急激に冷やされたら壊れる。だが、神が作りし永久不滅の金属オリハルコンは一瞬のうちに変えても問題ないのさ」
「へえー」
「世界に1つしかない、伝説級の武器であり同時に防具さ。当然だが神々の大戦の時に作られたと言われている代物だから、ドルチェガッバーナ王国の国家予算10年分に匹敵する価値があるぞ」
「国家予算10年分!」
「本当だ。父が餞別代わりに譲ってくれた物だ。因みにこの外套コートは『水のコート』。炎系の攻撃のダメージを軽減する効果があるけど、最近は値上がりして魔王が出現する前の3倍くらいになってるから、普通の市民では買えないレベルになっちゃったのは間違いない。その前に買っておいて良かったと思ってるよ」

 バネットもモコも普通の人から見たら信じられないくらいの武具を持っているのだから、敦盛だけでなくルシーダやココアも互いの顔を見合わせながら唖然としている。こんな武器を持つ人物がセレナ王女の配下にいるのだから、その実力も相当な物だというのが手に取るように分かる。持ってる武器や防具は贅沢そのものだから、敦盛は内心、「羨ましいぞ」とボヤいてしまったほどだ。

「・・・遅くなりましたー」

 敦盛たちはミニカの叫び声に気付いて声の方を向いたけど、ミニカが肩で息をしながらギルドの敷地に走り込んできたところだった。
 ミニカがゼーゼーと肩で息をしながらエミーナにカバンを渡したけど、その中には2つ布袋が入っていた。それを受け取ったエミーナはカバンを開けて布袋を取り出したのだが・・・
「はあ!?これだけかあ!」
「勘弁して下さいよお。タダでさえどの教団へ行っても『神の酒』が不足気味なのはエミーナさんでなくても知ってる筈ですよ。セレナ王女殿下もそれが分かってたから、わざわざ直筆の手紙を持たせて教団が持っている全ての『神の酒』を出させた位ですけど、それでもセレナ王女殿下の希望の数の半分ですよ。セレナ王女殿下の代理人でなかったら絶対に『教会で懺悔してから帰れ!』って怒鳴られたとしか思えないくらいに白い目で見られたんだからさあ」
「だからと言ってさあ、この程度の数じゃあ、全員に死ねと言ってるのと同じだぞ!」
「勘弁して下さいよお」
 エミーナはなおもミニカにブーブー言ってたけど、それをバネットが「はーー」とため息をつきながらも
「・・・エミーナ様、今は贅沢を言ってる場合ではない」
 と、本物の(?)騎士顔負けの冷静さで諭したから渋々顔だけどエミーナは引き下がった。ただ、敦盛の耳にはエミーナが「自分の装備の方が贅沢だぞ」とボソッと言ってたのが聞こえたから、顔には出さなかったけど笑えた。
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