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第四話
しおりを挟む「まぁ夜会でいつも令嬢の濃い化粧とキツイ香水の匂いから逃げている殿下にとっては、我が妹の相手をするのはさぞかし不快で苦行でしょうね」
「全くだ」
そんなやり取りをしながら思う。
妹は、確かに私よりよほど見目を気にしてる。
そんな彼女を「美しい」「華がある」と周りがはやし立てている事も知っているが、そこにばかり気をつかうせいでやりすぎている節もある。
そもそもあそこまで自分を磨き上げる為には、日夜時間と労力と金がかかる。
美容の為になら湯水の如く金を使い果たしていく彼女を、きっと殿下は理解できない事だろう。
匂い以外にもそういう弊害があるから無理だと思ったんだけど。
「否、そもそもお前の妹子《いもうとご》は、確か政治の話も経済の話もできないだろう」
「まぁ、それはそうね」
「そんな相手と一緒に茶など飲んだとして、一体何が楽しいんだ」
「目の前の『花』を愛でる事にでも楽しみを見出せば?」
「そんな趣味は俺には無いな」
半ば投げやりに言った彼に、私は思わず笑ってしまう。
ちょっと面白くなってきたので、試しに妹のプレゼンをしてみよう。
そう思って、私は続ける。
「でも一応あれでもあの子は、殿方から会話面でも人気なのよ? もちろん私みたいに実益的な会話は出来ないけど、相槌の打ち方は一品だから」
因みに妹の三種の神器は「えーっ、知りませんでした!」「凄ぉい!」「もっと色々教えてください!」である。
単純な言葉だが、あれで結構男受けは良い。
私がそう説明すると、彼はフンッと鼻を鳴らした。
「そんなの時間の無駄ではないか」
「あー、やっぱりそう言っちゃうよねー」
「分かってて言っただろ」
「そんな事ナイデスヨ」
「まったく意地の悪いことだ」
ちょっといじけた様な抗議の目に、私は小さく笑ってしまう。
が、多分この辺が潮時だ。
コホンッと一つ咳ばらいをして、改めて本題に戻る。
「ねぇ殿下、この手紙への殿下側の返答について、一つ案を上げてみても?」
「言ってみろ」
「お悔みの言葉に葬儀出席の申し出を添えるんです」
「葬儀? 君、もしかして――」
「えぇ」
彼の「まさか」という苦笑いに、私はニヤリと笑みを浮かべた。
「お父様には私の葬儀をしてもらうわ!」
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