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34話 イザベラ様と友人になりました。

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「えっ!?」

あまりに突然の言葉にポカンとしているとイザベラ様はうんうんと頷いて一人で納得し始めた。

「あなた良いわね。髪も白金で綺麗で容姿もウサギみたいに可愛いし、それに人を見た目で判断しないし。うん、私のお友達になりなさい」
「は、はぁ……」

私はあまりに突然の「友人になりなさい」命令に困惑していた。
するとアーノルド王子が顎に手を当てながら頷いた。

「ふむ、友人か。良いかもな」
「えっ?」

アーノルド王子はいたって真面目な表情で、何かの冗談を言っているような顔ではなかった。
そしてノエル様の方を見ると何故かノエル様も納得したように頷いていた。

「そうですね。同い年ですし、気が会うかもしれません」
「えっ!? 同い年!?」

私とイザベラ様が!?
改めてイザベラ様を見る。
纏っている雰囲気というかオーラが大人の女性といった感じなので、まさか私と同い年の十七歳だとは思わなかった。
私が驚いているとイザベラ様が不服そうな顔で頷いた。

「そうですわよ。私、十七歳です」
「そ、そうなんですね……」

とても「もっと上の年齢かと思いました」とは言えない……。

「もしかして、老け顔だと思いました?」

イザベラ様の表情に影が落ちる。
恐らく今まで散々言われてきたことなのだろう。

「い、いえ! そんなことは……。私より同じ年齢で政務までこなしているなんて大人だな、とは思いましたけど……」

実際、私と同じ年齢で政務をこなしているイザベラ様はとても凄いと思った。
私も実家でやらされていたりしたが、それは強制的な理由でイザベラ様のように自ら進んで政務をしたいなんて理由はなかった。
私と違ってイザベラ様は立派な人だ。

「そうですわよね! ちょっと大人っぽい雰囲気なだけで、老け顔なんてことはないんですわ」

老け顔という言葉を否定するとイザベラ様の表情がパッと明るくなった。
その表情を見るとやはり年相応なんだな、と思う。

「リナリア、やっぱりあなたは私の理解者ですわ。私のお友達になってください」
「え、えっと……」
「あ、そうだ。私の友人になったら良いことがたくさんありますわよ。貴族同士の友人関係を甘く見てはなりません。まず私は公爵令嬢ですから、公爵家と繋がりができます。それに何か困った時は公爵家の権力で──」

イザベラ様は人差し指を立てながら自分と友人になることのメリットを次々と説明していく。

「あ、あの……」
「イザベラ、リナリアが困惑しているぞ。とりあえず離れろ」

アーノルド王子がイザベラ様から私を引き離そうとするが、ぎゅーっと力強く私の手を握って離さない。
その姿はまるで駄々をこねる子供みたいで、ちょっと可愛いと思ってしまった。

「いやです。こんな子久しぶりに見つけたんですもの。絶対に離しませんわ」
「別に誰もリナリアに関わるななんて言ってないだろ。リナリアの迷惑になっているからとりあえず離れろと言っているんだ」
「……それならしょうがないですわね。未来の友人に迷惑をかけて悪印象を持たれるわけにはいきませんし、ここは一旦離れることにしましょう」

イザベラ様はアーノルド王子の言葉で潔く引き下がった。
一旦イザベラ様が離れたことによって、私はようやく一息をつく。嫌ではなかったけど、先ほどから驚きの連続で息をつく暇もなかった。

「で、どうかしら私とお友達になってくれる?」
「えっと……」

私は迷う。
友人になってくれと言われたことはとても嬉しい。私には今まで友人と呼べる人は少なかったし、もし友人になっとしたらイザベラ様はきっと私によくしてくれるだろう。
だけど、だからこそ良いのだろうかと思ってしまう。

「そもそも、私なんかが友人で構わないのでしょうか……」

私はそもそも貴族としては忌避されるような育て方をされてきた人間だ。
それに私はイザベラ様と違って、立派な人じゃないし。
そんな私が友人になっても……。

「あなたがどうして友人になっても構わないかどうか考えているのか分からないけれど」

私が不安に思っているのを察してかイザベラ様が私の不安を払拭するような言葉を投げかけてきた。

「私が友人になって欲しい、と言ったのだからあなたは考えるのはなりたいかどうかよ。あなたはどうしたいの?」
「私は……」

イザベラ様が私の瞳を見て質問してくる。
私は考えて、答えを出した。

「友人になってください」
「ええ、これからよろしくね。リナリア」
「はい」
「よし! それなら今日のパーティーは私と一緒にいましょうね」
「え?」
「そうだな。イザベラも久しぶりに友人とパーティーに出れるんだしそれが良いだろう」
「アーノルド様黙っていてください。それに私は少ないだけで友人は他にもちゃんといます」
「で、でも私はノエル様と……」

私はノエル様を見る。
元々はノエル様とこのパーティーはいる約束だった。
私としてはノエル様が一緒にいてくれた方が安心するし、いてくれた方が良いのだが……。

「ええ、せっかくですから彼女と一緒に回ってきたらいいと思いますよ。パーティーでの立ち回りを教えてもらえるでしょうし、いざという時にはフォローしてくれるでしょう」
「わかりました」

ちょっと不安だけれど、ノエル様が大丈夫だというのだから大丈夫だろう。
私は頷いた。

「よかったなノエル。イザベラがついているからこれでパーティー中の心配は要らないだろうし、ここで将来の味方を探すことに専念できるじゃないか」
「……うるさいです」

アーノルド王子の言葉にノエル様は苦虫を噛み潰したかのような顔になった。

「それに、私はそうだとは言ってません」
「どうかな。ま、どちらにせよ色々見極めるのは大事だぞ。もしもの時のためにな」
「……」
「じゃあ今から行きましょう! もうパーティーの準備はできているはずですわ」
「イザベラ様!?」

イザベラ様が私の手を取り、部屋から飛び出した。
というわけで、今日のパーティーはイザベラ様と一緒にいることになった。
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