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2話

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 私は内心で喜んでいた。
 婚約を解消!? それもマーティに押し付けられるなんて、これ以上に最高の条件は無い。

「え……?」

 アルバートはまさかこんなにすんなりと婚約破棄を受け入れると思っていなかったのか、ポカンとしている。
 マーティも何か裏があるのかと怪訝な表情をしている。

 私は別に何も企んでいない。
 ただ婚約破棄されたのが最高なだけだ!

 身内を虐めていたという冤罪を被る必要はあるが、身内なら処罰されることもないし、実質何もデメリットが無いのと同じだ。

 加えて婚約破棄ということは王家の方からかなりの慰謝料が出るはずだ。

 私にはこの婚約破棄を受け入れない選択肢は無かった。

「今更殊勝な態度をとったって無駄よ! 私とアルバート様が婚約すれば権力のおこぼれに預かれると思っているのでしょうけど、私とお母様はあなた達ホーリー家と縁を切るわ!」

「ああ……最高……!」

 私は感激のあまり涙を
 自ら縁を切ると宣言してくれるなんて、なんて親切なのだろう。
 私と父の、今すぐにでもこの家から出ていって欲しいという思いが通じたのだろうか。

「すぐに婚約破棄出来るように今すぐにお父様に伝えてきます」
「あっ、おい! 待て!」

 アルバートの気が変わるうちに、と私は静止の声を振り切り父の部屋へと急ぐ。

「お父様! 聞いてください!」
「どうしたシスティア!?」

 私は興奮しながらアルバートが婚約破棄を切り出し、マーティと婚約しようとしていることを伝える。
 加えて、マーティとルーシーが家との縁を切ると宣言していることも。

「それは本当か!?」

 父は私と同じくらい感激していた。
 マーティやルーシーのことで私より悩んでいたはずだから、喜ぶ気持ちは私より大きいはずだ。

「今すぐ! 今すぐ婚約破棄するんだ!」

 そして私と父は瞬時に婚約破棄の手配をし、アルバートとの婚約を終わらせた。
 宣言通りマーティがアルバートと婚約するとホーリー家との縁を切り、家を出ていった。

 より大きな玉の輿を成し遂げたいのだろう。

 身内を虐めた、という誹りはうけたが予想通り特に処罰は無かった。

 マーティとルーシーはそのことで「納得いかない!」と騒いでいたが、一度決まったことは覆らないので声を収めるしかなかった。

 私と父はマーティとルーシーから解放された。



 それから婚約を破棄された私は新しい婚約の相手が見つからなかったので、父の許しを得て新しく商会を作った。
 そこで作った商品は次々とヒットし、数年もしないうちに国内有数の大商会へと成長していった。

 その時のことだ。
 マーティとルーシーが屋敷へと押しかけ、「金を渡さないと暴露する!」と再び脅し始めたのは。
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