虚言癖のある妹に婚約者を取られたけど一向に構いません。

水垣するめ

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1話

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 公爵令嬢の私、ルナ・プライスの一歳下の妹、エミリーには十年ほど前から虚言癖がある。
 一度、エミリーが厨房にあるお菓子を盗み食いしたのがバレて、三日間お菓子抜きの罰を与えられた。
 それが可哀想だと思った私は、「盗み食いをしたのは私です」とエミリーの罪を被ってあげた。
 当然私はこっぴどく叱られ、三日間お菓子抜きになったが、エミリーには何のお咎めもなかった。

 しかし、エミリーはこれに味を占めてしまった。

 それからエミリーは自分の都合が悪くなったり、両親に叱られそうになった時に、「お姉さまに命令されました!」だとか臆面もなく嘘をついて私に罪をなすりつけるようになった。

 また、私の物が欲しい時に、私から取るために嘘をつくようにもなった。
 「くれる約束だったでしょう!」とか「お姉さまが私から盗んだの!」なんて嘘をついて私からあらゆるものを奪っていった。

 普通そんなエミリーの嘘はバレるに決まっているが、質の悪いことに、エミリーは誰かに信じてもらうことに長けていた。
 それでエミリーは両親や使用人を信頼させ、私から大切なものを奪っていった。

 そして現在、私は十七歳、エミリーは十六歳になり、同じ学園に通っている。


★★★


「ルナ・プライス! お前との婚約を破棄する!」

 それは突然のことだった。
 私の婚約者である皇太子のレオ・ロバートは教室のど真ん中、大衆の面前で婚約破棄を言い渡した。

「レオ様、何故でしょうか?」

「そんなこと決まっているだろう! 貴様がエミリーのことを虐めている性悪女だからだ!」

「ああ! レオ様、いいんです……! お姉さまにも虫の居所が悪い時はありますもの……!」

 レオの隣にはわざとらしく目に浮かべた涙を拭うエミリーがいる。

「いいや我慢ならない! このクズとは今すぐに婚約を破棄する!」

「いえ、私は──」

 そんなことはしていません。と主張しようとしたとき、レオが私に怒鳴って言葉を遮った。

「黙れ! 言い訳は無用だ! 全てエミリーから聞いている! 俺はお前との婚約を破棄し──エミリーと婚約する!」
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