愛されすぎて死んだ未来を、病弱な身体でやり直す ~未来視の公爵が選んだ、双子という嘘~

kuku

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2話 悪夢の重なり

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夢を見ていた。
 暗くて、狭くて、息が苦しい。
 胸の奥が、どくどくと嫌な音を立てている。
 刃が落ちる。
 首に冷たい感触が走る。
 同時に、胸を刺し貫かれる痛み。
 ——違う。
 ——二つある。
 殺される感覚と、
 処刑される感覚が、
 重なって、混ざって、分からなくなる。

「——っ」

 短く息を吸って、目を開けた。
 天井がある。
 布に包まれている。
 自分の身体は、小さい。
 生きている。
 そう思った瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。
 心臓の音が、まだ耳に残っている。
 あれは、夢だった。
 そう言い聞かせても、
 身体だけが、さっきまで死んでいた感覚を覚えている。

 誰かの気配がした。
 視線を動かすと、父がそこにいた。
 静かに、深く、こちらを見ている。
 赤子を見る目ではない。
 まるで、何年も先まで知っている人間が、今を確認しているみたいな視線。

 母の姿もあった。
 けれど、母は私を見ていなかった。
 私の身体。
 小さな手足。
 ちゃんと息をしているか。
 母が見ているのは、
 今ここにある命だった。
 父だけが、違う。
 父は、私を見ている。
 ——私という存在そのものを。

「……同じだ」

 低く、静かな声。

「君が見たものは、私が知っているものと、同じだ」

 意味は分からなかった。
 けれど、その言葉が、胸の奥に沈んだ。
 知っている。
 この人は、何かを知っている。
 それが、私のこれからに関わることだということだけは、はっきりと伝わってきた。

 父の手が、布を握りしめる。
 白い指先が、強く布を掴んで、
 それでも離さない。

 ——迷っている。
 その手は、
 本来なら、
 もっと甘く、
 もっと無条件に、
 一人の娘を抱きしめていたはずの手だ。

 けれど今、そこにあるのは、
 律する覚悟と、優しさの間で揺れる沈黙。
 私は声を上げなかった。
 上げられなかった。
 まだ何も知らない。
 けれど、
 ここから先は、
 選ばなければならないのだと、
 なぜか分かってしまった。
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