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第3話 追放だって言ってるだろう?

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「もう一度いう。お前は追放だ! このロクデナシめ! 俺のパーティーから、出ていけぇ!」

 俺は目の前のロクデナシに、そう言った。

「そ、そんなぁ! 酷いよ! ジャスティス! お願いだよぉ」

 だが、そいつは俺に縋りついてきた。
 ええい、うっとおしい。
 なよなよしていて、まったく好感の持てない人物だなぁ……。
 きっと原作でも人気がないんだろうということが、容易に想像できる。

 すると、俺の後ろから声が聞こえてきた。
 どうやら、俺たち以外にも誰かいるようだ。
 そりゃあそうか、パーティーから追放っていうことは、他のパーティーメンバーがいるはずだ。

「そうよそうよ! ジャスティスの言う通りよ!」

 お、どうやらお仲間も、俺の味方をしてくれるようだな。
 まあ、俺が勇者であり、パーティーのリーダーであり、主人公なのだから当然だ。
 きっとヒロインなのかな……?

「そんなぁ、マチルダまで……!」

 お、どうやらこの女の子はマチルダというようだ。
 オレンジっぽい茶髪の、気の強そうな女の子。
 名前がわかってよかった。
 いきなりの転生で、なにもわからないからな。
 仲間の名前がわからないんじゃ、いろいろと不都合だ。
 まあ、まだ肝心のこのロクデナシの名前はわからないんだが……。

 マチルダという女の子は、どうやら格好からして、魔法使いのようだった。
 いかにもな格好だから、原作の内容を知らない俺でもわかるぞ!
 それにしても、最近のラノベの女の子は可愛いなぁ……。
 マチルダは、胸が袋のようになっている服を着ていた。
 まるでわざと強調しているかのように、胸の下にひものようなデザインがある。
 ただでさえ爆裂おっぱいなのに、まるで魔法のようだ……!

「だいたい、今までがおかしかったのよ。アランのようなただの荷物持ちのザコを、パーティーメンバーにしておくなんてね……! 全部ジャスティスが優しかったから、なんとかなっていたのよ……?」

 そうか、このロクデナシの青年は、アランっていうんだな。
 いかにもモブって感じだな。
 まあ少なくとも、ジャスティスよりはぜんぜん主人公ぽくない名前だ。
 それにしても、ただの荷物持ちなのか……それなのに、なんかさっきから偉そうだ……。
 まるで自分のことを主人公だと思っているかのような立ち振る舞い。
 俺が主人公だというのに、やれやれ……。
 というか、そんな荷物持ちをなんで俺はパーティーに入れておいたんだ?
 まあ、ジャスティスという名前だし、きっと優しい勇者なんだろうけど。
 それを、なぜ今になって追放するんだろうか。
 追放しなきゃいけない俺自身、よくわかっていない。
 これは、慎重に周りの話を聞いて、いろいろと探っていく必要がありそうだ。

「ぼ、僕にだってやれることはあるさ! 僕には、アイテムボックスという固有のスキルがあるんだから! みんなも、それでいろいろ役に立ってきたはずだ! そうだろ……!?」

 なるほど、確かに便利そうなスキルだな……。
 だが、それでもこいつには戦闘能力がないんだろ?
 だったら、追放も仕方ない気がするが……。
 なにか、他にもっと情報が欲しいところだ。

「ねえ、ジャスティス! 黙ってないでなんとか言ってくれよ!」

 アランは、そう言って俺の胸をどんどんと叩く。
 さっきからなんだこいつは……。
 俺はうかつに発言できないんだ。
 それにしても、なよなよして縋りついてきて、マジでうっとおしいキャラだな。
 そんな俺に助け舟を出すように、もう一人の登場人物が口を開いた。

「見苦しいですよ、アラン。私たちは先日のクエストで、アイテムボックスと同じ効果のレアアイテムをゲットしました。なのでもう、あなたのスキルは無価値なんです。わかっているでしょう? いい加減、あきらめてください」
「そんな……ユリシィまでそんなことを言うの……!?」

 どうやら、もう一人の女の子はユリシィというみたいだった。
 この子は、見た目からして聖女だろうな。
 修道服の豪華版みたいなのを着ている。
 聖女ユリシィかぁ……高潔で、間違ったことなど言わなそうな、完璧な女性という感じのイメージだ。
 マチルダもおっぱいが大きかったが、ユリシィもなかなか負けていない。
 聖女という肩書とのギャップで、ものすごい背徳感だ。
 それにしても、ユリシィの言う通りなら、アランの行動はマジで意味が分からないな……。
 アイテムボックスの希少性もないっていうわけだし……。
 アランの追放は、当然という気もするが……?


◆◆◆◆


 この後、原作の『追放勇者』では――。
 激昂したジャスティスが、アランを強制転移魔法で、ダンジョンの奥地へと追放してしまう。
 追放されたアランは、そこでヒロインと出会い、覚醒する。
 一方でジャスティスたちは、アランのアイテムボックスから、アイテムを回収せずに追放してしまったせいで、のちに困ることになるのだが……。
 それはまた、別のお話。
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