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第13話 巫女だよ

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 今のところ、スライムとゴブリンたちはうまくやっている。
 スライムたちはいまだに俺に水をやりにきてくれるのだが、
 ゴブリンたちはちゃんとスライムが俺のためにやってると理解しているようで
 スライムに

「おう、スライム、今日もごくろうな、ご神木さまのために」

 と、スライムを応援してくれている。
 よかった。スライムとゴブリンが対立とかしたら面倒になるところだった。

 今日も一日、ゴブリンたちのようすを眺めていると――。

 一人のゴブリンの少女が、俺のもとへやってきた。
 たしかこの子はまだ小さい、5歳くらいのゴブリンだったはず。
 えーっと、名前はミヤコだったっけ。

 ミヤコは俺のほうをじーっと見ている。
 なんのようなのだろうか。
 こんな木を眺めていても、おもしろいことないだろうに。
 俺は独り言をつぶやく。

「お嬢ちゃん、なにかようかなー?」

 すると、ミヤコはまるで俺の声がきこえているかのような反応をみせた。

「別に、ようはないよ」
「は…………?」

 いま、こいつは返事したか……?
 俺は木だから、俺の声は誰にも聴こえないはずなんだけどな……。

「もしかして、俺の声……きこえてるの……?」

 恐る恐る、きいてみる。

「うん、きこえてるよ?」

「まじか……」

 マジでこの子にはきこえているようだ。
 他のゴブリンにはきこえないはずなんだけど……。

「なんでだろうか……」
「うーん、わかんない。だけど、たぶん魔力の波長があうからだと思う……!」
「そうなのか」

 そういえば、魔力ってのがあったな。
 ゴブリンたちがここで暮らすようになってから、俺の成長はさらにはやくなっている。
 というのも、ゴブリンたちが垂れ流している魔力を、どうやら俺が吸っているようなのだ。
 ようは、ゴブリンたちがここに住むかわりに俺に魔力が栄養素としていっているようなのだ。
 つまり、そういう感じで、ゴブリンたちとは魔力のやり取りがある。
 だから魔力の波長があう個体は、言葉もわかる……ってことなのか……?
 ちょっと無理やりな解釈だけど、そう思っておこう。

「じゃあ、俺の声きこえるってことは……! みんなと会話できるじゃん……!」
「そうだね。ご神木様はみんなとお話したいの?」
「もちろん。したいに決まってる……!」

 だって暇だもの。
 ずっと俺は話し相手もいないで、日がな一日ゴブリンを眺めるだけの暮らしだもの。

「通訳しようか?」
「たのむ……!」

 ということで、ミヤコをゴブリン村の巫女に任命した。
 さしずめ世界樹の巫女といったところか。

 まずはミヤコから事情を説明してもらって、村長のリンダを呼び出す。

「おいおい、世界樹様の声がきこえるとか、ほんとうなのか? 嘘じゃないだろうな」
「ほんとだもん!」
「あのー世界樹様、きこえてますか? こいつの言ってることは本当ですか?」

 リンダがそうきいてくるので、俺は木の実を地面に落として応える。
 木の実と枝を落として、「ほんと」と文字を地面につくる。

「おお……ほんとだ」

 信じてくれた。

「すごい……! 世界樹様と会話できるじゃないか……!」
「そうだよ」

 ということで、みんなを集めて会合を開くことになった。
 いつもの祭りの方式だ。
 キャンプファイヤーのもとに、たくさんのゴブリンたちが集まっている。

「では世界樹様との交流会を始める。まずは世界樹様、我々になにかききたいこととかはありますか?」

 リンダがそうきいてくるので、俺はミヤコに通訳を頼む。

「えーっと、ゴンザレスとアンリはどうなったかだって」
「ふむ……誰ですかなそれは……?」

 あ、そっか。名前はこっちがかってに決めて呼んでるだけだもんな。

「世界樹様、みんなに名前つけてるんだって」
「ほんとうですか! それは光栄だ! ぜひ名前を教えてください」

 リンダがそういうので、俺はみんなの名前を教えていった。

「おお、俺はリンダというのか……! すばらしい名前だ……!」
「さすがは世界樹様のネーミングセンスだ」
「この名前大切にしよう」
「やった! 俺にも名前ができたぞ」
「そういえば、名前がなくて不便だったんだよな」

 ゴブリンたちからはおおむね好評のようだ。

「それで、ゴンザレスとアンリはどうなったんだ? だって」

 ミヤコが通訳してくれる。

「それがききたいことなんですね……あはは……。世界樹様も噂好きなんですね。まあ、見てのとおりですよ」

 リンダがゴンザレスとアンリを指さす。
 二人は手をつないで、なかよく座っていた。
 注目されて、顔を赤くする二人。

「おお、よかった。末永くお幸せにな」
「世界樹様、ありがとうございます」

 とまあ、こんな感じで今日もゴブリンたちは平和だ。
 ようやくゴブリンたちとの会話方法を得た俺は、これからさらに楽しいことが待ってそうだと胸を躍らす。
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