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新章 私は今、平民の筈でしたよね?~元悪役夫人、ミッションを言い渡される~
プロローグ
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そこは王立グラドーマ学園。
ここは余程の異例がない限りは貴族の子息や子女、もしくは平民の豪商の子供でなければ入学出来ない特別な園だ。故にあらゆる知識も、普通なら知らないで当たり前のマニアックな知識を得る事が出来るまさに知を得る者の為にある楽園。
そこに、一つの野望を胸に抱いた娘がいた。
―――うふふふふ……これから私の逆ハー・イージーモード人生が始まるのよ!
不埒な事を考えているが、見た目だけで言えば清純タイプだ。茶色のセミロングの髪に赤く細いリボン型のカチューシャ。童顔で、体形は小柄で細身。
彼女が、ここが前世のTLマンガの世界で、ヒロインが自分だと分かった時は喜びで舞い上がっていた。
今の生活も悪くはないが、マンガのストーリーでは数多な優良物件のイケメンに思いを寄せられ、特別だと大事にされる。しかしメインヒーローは、そんなヒロインを誰よりも愛し、大事にしてくれるのだ。数多な障害を撥ねつけながら。そんな人生、最高過ぎる。
だが、一つ不満があった。
ヒロインは、ヒーローではないイケメン達に愛を囁かれ、挙句に体を奪われる目に遭う度に逃げ回っていた事だ。
何故そんなもったいない事をするのか分からない。襲ってくるのはあちらなのだ。求められているのだから答えて、受け入れれば楽しい時間を過ごせる。
そんな彼女は前世では所謂肉食女子だった。
愛は奪うものだから取り合えず食っちまえが大体のノリである、TLものに転生したのは適任だったとも言えなくは、ない。
―――据え膳食わぬは恥って言うもんね!
都合よく『男の』という文字を外しつつ、キャラを物色するその瞳は獣が餌を求めるが如くギラついている。その目はやがて一か所に釘付けになった。
―――いた!!
ヒーロー達が!
メインヒーローの王太子を始め、眉目秀麗なメンツが揃っている為、そこだけ華やいで見える。雑誌のカラー表紙そのままだ。
―――待っててね♪ 貴方達のヒロイン(私)がすぐ行くわ~!
―――が、その浮足立った気持ちは寸前で遮られた。
ピーーーーーーーー!!!
「!?」
突然響き渡ったホイッスルの音。
追いかけるようにドンドコ、ドンドコと太鼓の音が場を揺らす。その二つの音は共鳴しつつ、リズムを刻みながら何故かこちらに近づいてきている。
駆けだす体制のまま、娘は固まる。何も知らないのか、周りも戸惑う顔を見合わせている。
そんな学園の門の向こうに、小山のようなものが見えてきた。
「な、何だあれは……?」
困惑する人々の思いに構わず、破壊的な熱量を持ってそれらは乱入してきた。
「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」
威勢のいい掛け声と共に、小さい祠がついているお神輿みたいなものを担いだ屈強な男達と、それを囲む男達の群れ。
本来ならここで、学園直属の警備兵達が現れる筈なのに、誰も動く気配はない。そうやっている内にも、神輿は担がれ揺らされている。
と、その祠に片手で捕まって立つ細身の人物が、神輿に捕まりつつも声を張り上げた。大声であるのに何故か気に障らない音程の女性の声。
「皆さん、入学おめでとう! 新しい門出を心から祝福しよう!! 全能の神すら、皆さんを祝福されてます、皆さん全員をヒーロー、そしてヒロインとしてここにある事を!!」
その言葉にいち早く反応したのは―――。
「は、はぁぁぁーーー!?」
いきなり現れた予想外の神輿から出て来たとんでも発言に、娘はカッと怒りを覚える。
この馬鹿MC、何言っちゃってくれてんの?
この世界のヒロインは私! 私なの。モブがヒロインやヒーローとか、どうすれば思えんの? もしか狂っちゃってる??
と、恨みを込めて声のした神輿を睨む。どんな奴かは光が邪魔して見えない。けどかろうじて分かったのは、女だという事だけ。
ここは余程の異例がない限りは貴族の子息や子女、もしくは平民の豪商の子供でなければ入学出来ない特別な園だ。故にあらゆる知識も、普通なら知らないで当たり前のマニアックな知識を得る事が出来るまさに知を得る者の為にある楽園。
そこに、一つの野望を胸に抱いた娘がいた。
―――うふふふふ……これから私の逆ハー・イージーモード人生が始まるのよ!
不埒な事を考えているが、見た目だけで言えば清純タイプだ。茶色のセミロングの髪に赤く細いリボン型のカチューシャ。童顔で、体形は小柄で細身。
彼女が、ここが前世のTLマンガの世界で、ヒロインが自分だと分かった時は喜びで舞い上がっていた。
今の生活も悪くはないが、マンガのストーリーでは数多な優良物件のイケメンに思いを寄せられ、特別だと大事にされる。しかしメインヒーローは、そんなヒロインを誰よりも愛し、大事にしてくれるのだ。数多な障害を撥ねつけながら。そんな人生、最高過ぎる。
だが、一つ不満があった。
ヒロインは、ヒーローではないイケメン達に愛を囁かれ、挙句に体を奪われる目に遭う度に逃げ回っていた事だ。
何故そんなもったいない事をするのか分からない。襲ってくるのはあちらなのだ。求められているのだから答えて、受け入れれば楽しい時間を過ごせる。
そんな彼女は前世では所謂肉食女子だった。
愛は奪うものだから取り合えず食っちまえが大体のノリである、TLものに転生したのは適任だったとも言えなくは、ない。
―――据え膳食わぬは恥って言うもんね!
都合よく『男の』という文字を外しつつ、キャラを物色するその瞳は獣が餌を求めるが如くギラついている。その目はやがて一か所に釘付けになった。
―――いた!!
ヒーロー達が!
メインヒーローの王太子を始め、眉目秀麗なメンツが揃っている為、そこだけ華やいで見える。雑誌のカラー表紙そのままだ。
―――待っててね♪ 貴方達のヒロイン(私)がすぐ行くわ~!
―――が、その浮足立った気持ちは寸前で遮られた。
ピーーーーーーーー!!!
「!?」
突然響き渡ったホイッスルの音。
追いかけるようにドンドコ、ドンドコと太鼓の音が場を揺らす。その二つの音は共鳴しつつ、リズムを刻みながら何故かこちらに近づいてきている。
駆けだす体制のまま、娘は固まる。何も知らないのか、周りも戸惑う顔を見合わせている。
そんな学園の門の向こうに、小山のようなものが見えてきた。
「な、何だあれは……?」
困惑する人々の思いに構わず、破壊的な熱量を持ってそれらは乱入してきた。
「わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい!」
威勢のいい掛け声と共に、小さい祠がついているお神輿みたいなものを担いだ屈強な男達と、それを囲む男達の群れ。
本来ならここで、学園直属の警備兵達が現れる筈なのに、誰も動く気配はない。そうやっている内にも、神輿は担がれ揺らされている。
と、その祠に片手で捕まって立つ細身の人物が、神輿に捕まりつつも声を張り上げた。大声であるのに何故か気に障らない音程の女性の声。
「皆さん、入学おめでとう! 新しい門出を心から祝福しよう!! 全能の神すら、皆さんを祝福されてます、皆さん全員をヒーロー、そしてヒロインとしてここにある事を!!」
その言葉にいち早く反応したのは―――。
「は、はぁぁぁーーー!?」
いきなり現れた予想外の神輿から出て来たとんでも発言に、娘はカッと怒りを覚える。
この馬鹿MC、何言っちゃってくれてんの?
この世界のヒロインは私! 私なの。モブがヒロインやヒーローとか、どうすれば思えんの? もしか狂っちゃってる??
と、恨みを込めて声のした神輿を睨む。どんな奴かは光が邪魔して見えない。けどかろうじて分かったのは、女だという事だけ。
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