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閑話~公爵令嬢と侯爵令嬢~
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「待って! お願い待って――!」
必死に追いかけてきたマリア・ナルシトに男達は立ち止まる。
マリアはしばらく呼吸を整えた後、悲壮な表情で訴える。
「あ、あんなのデタラメだよ! きっとカヤラとあの子らがグルになって、私の事嵌めようとして!」
「不可能です」
マイト・シャーマニテイが否定する。
「今日の計画は僕らだけにしか知らない。それに今思えばオリガは僕らに怯えていた。あれが演技とは思えない」
「それにラッセン嬢とラチェット嬢は、水と油って言われるほどの不仲だ。それが一介の伯爵家子息と、どう結びつく? お前の事は信じてやりてぇが……」
――信じてやりたい。
ゴーランドの言葉は、そのままユリアスの本心だった。きっとマイトも同じだろう。
マリアの事は、信じていたい。
だが……自分達の中に、彼女に対する不信感が芽生えているのも事実だ。
まず初めて対面したカヤラ・オリガだ。彼はひたすら弁解も出来ず、自分達の恫喝に怯えていた。
あの時は『自分より弱い女には暴言を吐くクセに、強者には怯える小心な小悪党』と思っていたが……学友に檄を飛ばされた後に、自分達を真っ直ぐに見て『やっていない』と言い切った。
それに、ラッセンの呼びかけに応えた令嬢達。彼女らも嘘をついているようには見えない。何人かがラチェットの側付きだと言う事実が大きい。マリアが心底邪魔ならラチェットに吹き込めば良いのに、今までしていなかった。
そして――この件の『証人』達だ。彼らの不自然さに今頃気付く。
ラッセンにほのめかされたような強要からの自白ではない。だが彼らを自分達に引き合わせたのはマリア自身だった事、マリアの為にと集まってくれた割に、加害者のオリガをまともに見る事をせず、ラッセン達がマリアを悪し様に言うのに対しても無言だった事。
それらを目の当たりにして、信じてやりたいと思う反面、もしかしたら……という疑惑がある。
ゴーランドも同じだろう。“信じたい”と言いながら表情には迷いが出ている。
あの場で出てきた、自分達が知らなかったマリアの一面。他者を言葉巧みに利用し、自分は何もしようとしない厚顔さ。
更に高位貴族の令嬢2人に対する暴言。その様は彼らの信じていた、清純で弱々しい少女では無かった。
「そ、そんな……!」
ずっと味方だと思っていた3人の予想外の答えにマリアの顔が青くなる。そんな彼女にユリアス、いや王太子は元気づけようと事実を述べた。
「でも心配しなくていい。真偽は後日、王家で精査される事になるだろう。大丈夫、王宮の捜査班は優秀だから」
「そ……そんな大げさな……」
「何も大げさではありませんよ、マリア。……思えば始めからこうするべきでした。ケ……ラッセン嬢にボンクラ呼ばわりされるはずですね……」
「大々的にやっちまったからな……」
口々に後悔の念を呟きながら、マリアに別れの挨拶をして去って行った。マリアはぽつんと立ち尽くしたまま、真っ青な顔で呟く。
「そんな……そんな大事になるなんて……」
「ノゾキなんて悪趣味ですわね」
草むらで潜んでいたのに、突然投げかけられた声にギョッ、と飛び上がる。
けれど相手を視認した後、ホッと肩の力を抜いた。
「人聞きの悪い……。諜報活動と呼んで欲しいですわ」
草むらに潜んでいたケイト・ラッセン。
それに声をかけたのはジュリアン・ラチェット。
お互いに高位貴族と称されている2人は、互いの顔を見て笑った。
必死に追いかけてきたマリア・ナルシトに男達は立ち止まる。
マリアはしばらく呼吸を整えた後、悲壮な表情で訴える。
「あ、あんなのデタラメだよ! きっとカヤラとあの子らがグルになって、私の事嵌めようとして!」
「不可能です」
マイト・シャーマニテイが否定する。
「今日の計画は僕らだけにしか知らない。それに今思えばオリガは僕らに怯えていた。あれが演技とは思えない」
「それにラッセン嬢とラチェット嬢は、水と油って言われるほどの不仲だ。それが一介の伯爵家子息と、どう結びつく? お前の事は信じてやりてぇが……」
――信じてやりたい。
ゴーランドの言葉は、そのままユリアスの本心だった。きっとマイトも同じだろう。
マリアの事は、信じていたい。
だが……自分達の中に、彼女に対する不信感が芽生えているのも事実だ。
まず初めて対面したカヤラ・オリガだ。彼はひたすら弁解も出来ず、自分達の恫喝に怯えていた。
あの時は『自分より弱い女には暴言を吐くクセに、強者には怯える小心な小悪党』と思っていたが……学友に檄を飛ばされた後に、自分達を真っ直ぐに見て『やっていない』と言い切った。
それに、ラッセンの呼びかけに応えた令嬢達。彼女らも嘘をついているようには見えない。何人かがラチェットの側付きだと言う事実が大きい。マリアが心底邪魔ならラチェットに吹き込めば良いのに、今までしていなかった。
そして――この件の『証人』達だ。彼らの不自然さに今頃気付く。
ラッセンにほのめかされたような強要からの自白ではない。だが彼らを自分達に引き合わせたのはマリア自身だった事、マリアの為にと集まってくれた割に、加害者のオリガをまともに見る事をせず、ラッセン達がマリアを悪し様に言うのに対しても無言だった事。
それらを目の当たりにして、信じてやりたいと思う反面、もしかしたら……という疑惑がある。
ゴーランドも同じだろう。“信じたい”と言いながら表情には迷いが出ている。
あの場で出てきた、自分達が知らなかったマリアの一面。他者を言葉巧みに利用し、自分は何もしようとしない厚顔さ。
更に高位貴族の令嬢2人に対する暴言。その様は彼らの信じていた、清純で弱々しい少女では無かった。
「そ、そんな……!」
ずっと味方だと思っていた3人の予想外の答えにマリアの顔が青くなる。そんな彼女にユリアス、いや王太子は元気づけようと事実を述べた。
「でも心配しなくていい。真偽は後日、王家で精査される事になるだろう。大丈夫、王宮の捜査班は優秀だから」
「そ……そんな大げさな……」
「何も大げさではありませんよ、マリア。……思えば始めからこうするべきでした。ケ……ラッセン嬢にボンクラ呼ばわりされるはずですね……」
「大々的にやっちまったからな……」
口々に後悔の念を呟きながら、マリアに別れの挨拶をして去って行った。マリアはぽつんと立ち尽くしたまま、真っ青な顔で呟く。
「そんな……そんな大事になるなんて……」
「ノゾキなんて悪趣味ですわね」
草むらで潜んでいたのに、突然投げかけられた声にギョッ、と飛び上がる。
けれど相手を視認した後、ホッと肩の力を抜いた。
「人聞きの悪い……。諜報活動と呼んで欲しいですわ」
草むらに潜んでいたケイト・ラッセン。
それに声をかけたのはジュリアン・ラチェット。
お互いに高位貴族と称されている2人は、互いの顔を見て笑った。
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