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家族
しおりを挟む帰宅すると、皆が揃って出迎えてくれた。
「お帰りなさいカヤラ。大丈夫?」
青い顔で心配そうに言う母さん。んん? えらく情報が早いなと思っていたら
「パーティに出ていた後輩が教えてくれたのよ。……災難だったわね」
同じく、少し青い顔をした姉さんが言った。――心配かけちゃったな……。
そして……兄さんは、
「カヤラ! 王太子殿下達にケンカ売られて言い返したって!?」
「あ、いや……」
誰が言ったんだ? ケンカなんて。
その後ろで、
「坊ちゃま、ご無事で何よりです!」
「事情は聞きました! こんな言いがかりを付けられるなど腹立たしく……!」
「カヤラ様がDVなんてする訳ないですよ、全く!」
メイ達、ウチで働いてくれてる皆が怒りの声をあげる。皆、心底僕を信じてくれている。
前世の僕なら“この人達に絶望を与え続けている”と思い、自分を責めただろう。
でも今世でやっと気付けた。
この人達は……僕の味方だ。それぞれ表現が違うだけだった。
だからこそ、僕は笑えた。皆に笑顔を向けられた。
「みんな……ありがとう」
こんな僕を心配してくれて。
「カヤラ」
そんな安心感に浸っていたら、父さんに名前を呼ばれた。厳しい顔をしている。
「帰ってきて早々、悪いが……何があったか話してくれるか?」
そう言って書斎の方に顎を向けた。
書斎に設置されているソファに僕らは座る。正面に父さんと母さん、僕を挟んで兄さんと姉さんって配置だ。
メイが配ってくれたお茶を、両手で包むように持つ。じんわりと伝わる温もりに心が溶かされる。温もりに支えられるように、僕はポツポツと話しだした。
マリアが王太子殿下達と仲良くなったこと。
それを指摘したら“僕らの将来の為”と言われたこと。
その内、どんどん会う約束を破られるようになり、おばさんに言っても“許してあげられるわね”としか言われなかったこと。
そして……マリアの誕生日のパーティで、騎士団長子息に“クズ”と言われたこと。そして今、卒業パーティの場で僕がDVをしている冤罪をきせられ、訳が分からないまま罪を認め、婚約破棄に同意しろと迫られたこと――。
「そういう事は、俺らにも言えよ」
兄さんがガックリと肩を落としている。
「マリアに口止めされてて……」
「はぁー……。お前って変なところ義理堅くて我慢強いからなぁ……」
「耐えることばかりが相手の為じゃないのよ?」
兄さんには呆れられ、母さんに長いため息をつかれる。
こうゆうところ、僕はまだ分からない。どこまで言って良いのか、どう言えば良いのか、そして……どんな事なら言っても迷惑にならないのか。
前世でもそうだった。距離の掴み方が分からない。1人でオタオタしている間に、周りはドンドン先に行ってしまう。
「ごめん……」
「謝る必要はないわ。とにかく……こんな事をされたんですもの。婚約はこっちから破棄させてもらうわ。良いわよね、あなた」
「ああ…………」
父さんも厳しい顔で頷く。父さんとおじさんは友達だから悲しいだろうな。
僕の視線に気付いたのか、今度は
「なぜ、お前が気にやむ?」
「僕がもっとキチンとしていたら……」
「お前には非がない。あるのはあくまでマリアだ。まさか王太子殿下を利用しようとするなんてな……。ナルシト家全体に関わるぞ。領地没収か、爵位返還も覚悟しないと」
「ぶっちゃけ考え無しなのよ。カヤラが黙ると思っていたんだわ。人の弟を馬鹿にして……!」
兄さんと姉さんが、自分の事みたいに怒ってくれているのは嬉しい。
でも、僕は……怒りよりも裏切られた悲しみが強かった。
僕には王太子殿下達みたいなかっこよさなんてない。
だけど……大切には思っていた。だって前世も含めて初めて出来た“彼女”だよ?
殿下達みたいに高価なプレゼントはあげられなかった。安物だからせめてと、オリガミの花を付けていた位だ。あれは女の人が喜ぶから。
いつかは……2人で父さんと母さんみたいな夫婦になるんだと。
おじいちゃんとおばあちゃんになるまで、一緒にいるんだと……思っていたんだ。
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