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第二章 15歳、学術学院魅惑のイッチ年生時代
【舞台裏の文化1】 隠れ親馬鹿と「そうだよ」
しおりを挟む———本当に。
「……お前は本当に、それでいいんだな?」
「ああ、本当はもっと……だったけど、もうこうするしか……」
「本当の、本当に、その子でいいんだな?」
「ああ、こんなの不味いのは……分かってる。でも、それでも俺は、もう、ただ指咥えて待ち惚けるなんてできない」
この生の根底から作り変えられた躰と心では、もうあの子なしでは生きていけないんだ。
と、それはとある日の、某所にての話。
———ならば、いっそのこと。
この場に居ない「誰か」への思いを声色に滲ませ、男は切なげに目を伏せた。
「……つまり、そのお嬢さんは、私の息子を。お前を、そんなにも変えて仕舞うような娘なのか?」
「そうだよ」
なので、普段の不遜な姿からは到底想像できない、もはや「どちら様?」と聞きたくなるような変わりよう。
そんな息子のいじらしい様子を見ちまったお父様(:隠れ親馬鹿)は「……ふむ」と顎を撫で、どこか感慨深そうに……。
「……その娘は、お前にそんな顔をさせるほどの、美女なのか?」
「そうだよ」
「……それだけ、お前から見てkawaii娘なのか?」
「そうだよ」
お父様は続けた。
そして、
「これまで年齢問わず、あれだけ女性と言う女性を毛嫌っていたお前が、なぁ。……一応聞くが、そんなお前の相手となる子は娘の格好した同性ではなく、普通に女である、生物学的に見ても真っ当な娘さん、女の子だよな?」
「そうだよ。……そう、なんだよ」
「……お前は、その子とは、これからもずっと……。
それこそ、物理法則、時系列的に揺り籠からは無理でも、墓場、墓に入るその時まで、健やかに。
日夜構わず、365日、春夏秋冬、24時間、問わず問わせず。
"婚姻"と言う名の大義名分の元、お前はその子と来世まで一緒にいたいのか?」
———それも、笑顔で。
「~~~っ。ああ、そうだよ!」
「……フフ、これだからお前は未だ青臭いガキなんだ……」
だが、いいだろう。
どこか不敵に笑う父親に、男はゾワっと背筋を伸ばした。
「ッ!!」
「お前の気持ちはよーく、分かった。時は金なり……なら、父さんの言う通りにしろ」
然し、お父様はそんな息子を余所に、(顔には出さないが)内心で黒い算段を付けだすのであった。
……可愛い息子の口から、相手方の名を聞くまでは。
「……『今』からでも、な?」
世間では血は争えないというけれど、一体誰に似たのやら。
幼い頃から馬鹿みたいに理想が高く、身内から見ても無駄に目が肥えている……が。
それでも、お前はこの俺の可愛い息子であり、我が家の誰より(一部を除きさえすれば)誇れる長男。
……そして何より、誠であろうと義理であろうと、可愛い娘を持つのは……まぁ、ぶっちゃけ……。
生まれ持つ魔力などのアレコレで、上にいくほど女旱になる、こんな世の中では、特に王家・上位貴族間ではある意味最強のカード、最も贅沢な男親の夢である。
ので。
(他でもないこの子が好きになるくらいだ……)
こんなご時世でなくとも、生粋のお貴族様生れ育ちであるお父様の腹は黒い。
だから、お膳立てくらいは? してやんよ??
任せろ!!
と、言わんばかりに。
この国北部の中枢上位貴族にして、二児の父ではあれど、未だ若々しくナニカと現役。
壮絶な美貌を誇る美丈夫「いや、でも待てよ……」と思いながら、微笑み———
「 」
「……分った。試してみる」
同じ第一性であるだけでなく、第二性まで同じな人生の先輩として、父親の様子に若干不安げな顔をするも、ようやく覚悟を決めた男の顔となった息子に、そっと耳打ちをした。
「でも、もしも万が一。そのヤリ方でしくったら、三代先まで呪うから」
「……それだとお前も含まれないか?」
そして自分の親相手であろうと、脅しをかけて来る息子を「コイツほんと危ない奴だな、一体誰に似たんだか……」と思いつつ……ものの数秒後。
さり気なく「で、誰なんだ?」と聞いた……自分と同じ色彩をした息子の口から飛び出る有名人、超絶「大物」におったまげることとなる。のも知らずに———。
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