【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

文字の大きさ
11 / 55
第1部 新しい世界

第11話 現実

しおりを挟む
「いいかい、イルマちゃん。もし誰かが聖魔法を見たいと言って来たら、体調が良くないからと言って断るんだ」
「うん」

「そして討伐か何かの目的でこの城を出るような話があれば、逆にそれに強く参加したいことを伝えるんだ」
「分かったわ」

「俺達はこの街の事を知らない。それに今のまま街を出ても金も装備もない」
「そうね」

「だが討伐なら装備が揃う。そこにお金があれば言う事はないけど。その時は俺と一緒じゃないと嫌だと言うんだ。俺が側に居ないなら、行かないとゴネるんだよ」
「そ、そうするわ」
 なんか恥ずかしいような気がするけど、ここから出るためだもの。


「イルマちゃんは何人まで、charm魅了に掛けられのかな?」
「1人ずつなら何人でもできるわ。ただ時間が経過すると弱くなるから、掛け直さないといけないけど」
「では一度なら?」
「4~6人ね。でも同時ではなくて、わずかにずらして1人ずつ掛けて行く感じね」

「では防具はフード付きのものをねだるんだ」
「一度にcharm魅了を掛けられる人数制限があるなら、逆にフード付で角を隠した方が早いからさ」
「それは、そうね」

「これからは日差しが強くなるから、フード付きが良いて言えば良いから」
「防具を作る時は、そう言うわ。そしてどうするの?」

「討伐に行ったら隙を見て、2人で逃げ出す。これしかない」
「もし逃げ切れなったら?」
「大丈夫だよ、こう見えても多分、イルマちゃん1人を守るくらいは強いはずだから」
「ああ、頼みますね」
 大丈夫かしら?

「さあ、いつまでも話してたら怪しまれるから、もうそろそろ終わりにしようか」
「そうね、また」



 俺は立ち上がりドアを開けた。
 するとそこにはメイドのイルゼさんと、レーナさんが待っていた。

「お話は終わりましたか?」
「えぇ、終わりました」

「ではビッチェ王女様をお呼び致します」
 イルゼさんはいう言うと、一旦下がった。
 そしてビッチェ王女とオバダリア侯爵がやって来た。

「イルマ様はお部屋にお戻りください。タケシ様は残って頂けますか」
「分かりました」
 俺達は部屋の中に入り、再びソファに座った。

「タケシ様、イルマ様とはどんなお話をされたのでしょうか?」
「元の世界の他愛のない話ですよ。それから家族に会いたいと言っておりました」
「やはりそうでしたか。こちらの世界に来たばかりですから」
「そうですね、ビッチェ王女様。とても寂しいようで、情緒不安定になっております」
「情緒不安定?」
「情緒不安定とは僕らの国では、心や感情が安定しない状態のことを言います」
「安定しない状態ですか」
「はい、ひどくなると体にも異常が出てきます」
「体にもですか、それはいけません。ではどうすれば良いのでしょうか?」
「心を穏やかに過ごせる環境を作ることです。しばらくは、そっとしてあげましょう」
「分かりました、そう致します」

 俺は解放されメイドのイルゼさんと部屋に戻った。
「では何かあればお呼びください」
 そう言うと、イルゼさんは部屋から出ていった。

 やはり俺は重要視されていない。
 聖女の話し相手くらいの存在か。

 

 それから3日が経ち、なにもなかった。
 聖女のオマケの俺は特する事がない。
 仕方がないのでイルゼさんに、城の中を案内してもらっていた。
 後は食べては寝ての生活だ。

 なんとかトイレの場所を覚えたが、午前中は清掃が入り違う棟のトイレに行かないといけないことが分かった。
 仕方がないので都度トイレに行くたびに、イルゼさんに案内してもらうのが恥ずかしかった。
 いい歳をして誰かと一緒でないと、トイレに行けないなんて…。


 それを抜かせば案外、良い生活かもしれない。
 働かず3度の食事があり、専属メイドも付いている。
 衣食住があり、一般市民の3倍近い給料をもらえる。
 もらえるのは来月だが。

 夢の様な待遇だ。

 だが物事は良いことばかりでは、ないことを思い知った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...