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第10章 蒸気機関車

第155話 物事はクリーンに

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「 「 「 ギィ~~~~~~~!! 」」」

 蒸気機関車用の城門が開いた。

 蒸気機関車はゆっくりと、煙を吐きながら城門をくぐって行く。
 専用の城門は街の人が出入りする城門から少し離れて創ってある。
 それは搬入する時に、人が側に居ないほうがいいからだ。
 
 蒸気機関車の横幅は約3m、高さ4m、長さは20mくらい。

 漆黒で大きな見たことも無いものが、ゆっくり堂々と街の中に入ってくる。
 遠めに見ていた人たちも、驚いてこちらを見ている。

〈〈〈〈〈〈〈〈 ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉

 それをからかう様に、ディオさんが汽笛を鳴らす。
 その音を聞いた多くの人々が驚き、尻もちをついている人もいる。

「ディオさん、やりすぎです。機関車を初めて見たら、驚くのは当然ですから」
「あははは、すみませんエリアス様。つい、面白くて」

 そして以前、俺が来た時に創った駅に蒸気機関車が停車した。

「エリアス様~!!」

 蒸気機関車から駅に降り、呼ぶ声のする方を見るとエリアス商会の社長アルバンさん、シャルエル教大司教ヨハネス様、アバンス商会のアイザックさん達が居た。 

 俺はディオさん、アルガスさん、セサルさん達と機関車を降りた。

「おはようございます、エリアス会長」
 アルバンさんが挨拶をしてくる。
「みなさん、おはようございます!」
 俺も挨拶を返す。

「これはまた蒸気機関車とは凄いものですな。巨大で漆黒で遠くから見たらドラゴン級の魔物ですな」
 やや小太りで50代半ばの大司教ヨハネス様がそう言った。
 また太ったな、この親父は。

「えぇ、本当に驚きました。こんな巨大なものだとは…」
 アイザックさんも驚いている。

 そして俺はアルバンさん達に、ディオさん達を紹介した。
 これからこの街に機関車で通う事になるんだから、仲良くやって欲しいものだ。

「実は城門で事前に伝えていたはずなのに、魔物と勘違いされ中に入れなくて…」
「そうでしたかエリアス会長。でも次からはもうそんなこともないでしょう」
「念のため次回までに蒸気機関車の正面に、エリアス商会のロゴを描いておこうと思います」
「それは良いお考えです。それから先日、お伺いいたしました場所に土地を買いました。後は整地をお願いいたします」

 前回来た時に開拓村から蒸気機関車で石炭、鉱物を運んできた時に保管する場所が必要になることを話しておいた。
 条件は城門近くに土地を買い、大きな倉庫を造りそこに降ろすというものだ。

 ㎡で言っても分からないだろうから、大雑把に駅のある城門から手前に250m、横に300mくらいの土地が欲しいとお願いしておいたのだ。
 ただ城門近辺は街から出入りしやすく一等地だ。
 
 土地代が高くお金持ちの大きな邸宅や商家がたくさんある。
 よくそんなところを買えたものだ。

「しかしよく立ち退きを、了承させることが出来ましたね。アルバンさん」
「えぇ、最初はお金の力で相場の2倍、3倍と値段を上げていきながら購入しましたが、ある程度購入が進むと売らないと言い張る家が出てきまして…」
「そ、それは、そうでしょうね」

「困ってしまい大司教ヨハネス様に相談して、お力をお借りいたしました」
「お手数をお掛け致しました、ヨハネス様」

「なにをおっしゃいますかエリアス様。私はあなた様のしもべですぞ。なにごとも、この大司教ヨハネスにお任せください」
「いったい、どの様なことをされたのでしょうか?」

「まずシャルエル教の大司教である私が、お宅に訪問すれば大概の方は売ってくださいました。それでも駄目な場合は金貨を目の前で、100万円ずつ積み上げて行くことでしょうか。そうするといい返事がもらえまして。それでも駄目ならお子様やお年寄りが居る家でしたら、一人歩きは危ないですから、と強面の人を毎日、何人か角材を持たせて警備に付かせておりました。その誠意にうたれて売却を決められたり。それと不思議と私の話を断った家は、その夜に窓ガラスが割られたり…「「あぁ、もう大丈夫です。ありがとうございました!!」
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