ありがちな異世界での過ごし方

nami

文字の大きさ
54 / 72
第6話 三大竜【大地の覇竜編】

6 マッチョトリオと再会

しおりを挟む
 途中、山小屋を見つけた。
 現在、時刻は11:20。山歩きをしているせいか、既に空腹を感じる。私達は見つけた山小屋にて、早めの昼食を摂ることにした。

「おお! こりゃ、うめーな! クリンちゃん、きっといい嫁さんになれるぜ」

 クリンちゃんの手作り弁当を一口食べるなり、ケンユウさんが絶賛する。
 誉められたクリンちゃんはほっぺをほんのり赤く染め、えへへと嬉しそうに笑う。

「あら、アレックス。あんた食べないの?」

 弁当はおろかお茶にすら手をつけようとしないアレックスに、ノイアさんは不思議そうに訊いた。

「今月は忌月いみつきなんだ。日没まで一切の飲食はできない」

「へえ、あんたマナシアか?」

 ケンユウさんが珍獣を見るような目でアレックスを見る。

「ああ」

「ひえ~、よくあんな宗教に帰依できるな。つーか、まだそんな宗教に属する奴がいたのかよ……。ドMじゃねえとあんなドSな戒律守れねーだろ。あんたサドっぽいのに実はマゾなんだな」

 ケンユウさんは悪戯っぽい笑みをアレックスに向ける。アレックスは黙りを決め込んで、ケンユウさんのからかいの言葉を無視する。

「それにしても魔物達のしつこさにはいい加減ウンザリするわね。次から次に襲ってきて……」

 ポテトサラダをつつきながら、ノイアさんはため息を吐く。

「連中も新鮮な人肉にありつきたくて必死なのだろう」

 アレックスは私に視線を向けて言った。

「ちょっと! なんで私を見るの?」

「奴らは人間の肉を何より好むからだ。お前のような子供は特にな」

 アレックスは視線を外してしれっと言った。

「なんで人間の肉が好きなのさ?」

「知るか。まあ、人間が一番魔物に好まれる味をしているのだろう」

 アレックスはそう言い捨て、煙草を吸ってくると外に行ってしまった。
 程なくして昼食は終わり、片付けをしていると、

「グオオオオォォッ!」

 突然、恐ろしい咆哮が聴こえ、和やかな雰囲気を壊した。
 窓から様子をうかがうと、オーガが棍棒を振り上げ、アレックスに襲いかかろうとしていた。
 だがアレックスは余裕で攻撃を回避し、強烈なキックで倒した。

「先を急ぐぞ。こいつが意識を取り戻すと面倒だ」

 私達が山小屋から出るなり、アレックスは淡々と促してきた。
 オーガは白目を剥き、口から泡を吹いて気絶している。

「凄いなあ。キックで一撃だったね。その細い体のどこに、そんな力があんの? あ、もしかして実は物凄い馬鹿力の持ち主とか?」

「そんなわけないだろう。そいつと一緒にするな」

 アレックスはケンユウさんを顎でしゃくる。

「そりゃ、どういう意味だ!?」

「どうだっていいだろう。さっさと行くぞ」

 アレックスはケンユウさんを軽くあしらい、すたすたと歩き出した。

 歩き始めて数分後、そいつらは現れた。

「へへっ、また会ったな。それよりさっきの見てたぜ! なよっちいモヤシ野郎だと思ってたが、オーガを一撃で沈めるたァなかなかやるじゃねえの」

 山の入口で私達を小馬鹿にしていた、あのマッチョトリオだった。

「? ……なんだ、お前達は?」

 アレックスは首を傾げ、少し間を置いて訊く。嫌味ではなく、どうやら本当に覚えていないらしい。

「アレックス、忘れちゃったの? ほら、山の入口であたし達にイヤなこと言ってた筋肉バカのオジサン達だよ」

 クリンちゃんがデザートの栗饅頭をあむあむと食べながら教える。クリンちゃんにしては珍しくキツい言葉を使ったものだ。“筋肉バカ”って……。私はもちろん、ノイアさんもロートレックさんもケンユウさんも思わず吹き出した。
 その様子を見て、マッチョトリオの顔が引きつる。

「お、お嬢ちゃん~、そういうこと言っちゃいけないなぁ~。オレ達、おじさんじゃないから。お兄さんだよ。お・に・い・さ・ん!」

 リーダー格と思われる赤マッチョがニカッと歯を剥き出しにし、無理矢理に笑顔を作ってクリンちゃんに言い聞かせる。その顔がハッキリ言って怖い! 小さな子供だったら見た瞬間泣き出すこと請け合いだ。
 精神年齢が幼児並のクリンちゃんだ。ビクッと跳ね上がりアレックスの後ろに隠れてしまった。

「クリムベールを脅かすな。ああ、あの時の奴らか。記憶するに値しない、くだらん連中だったから、すっかり忘れていた。……で、私達に何か用でもあるのか?」

 アレックスはお馴染みの毒舌で淡々と訊ねる。

「ちっ! 口の減らねえ野郎だな。まあいいさ。ここで再会したのも何かの縁だ。オレらと勝負しな。あん時弟をコケにされたんだ。徹底的に叩き潰してやる!」

 赤マッチョは自信満々にそう言い放った。
 何こいつ? 唐突に現れるなり、いきなり勝負を申し込むってどういうつもり? ってか、コケにされたって、あんたらが最初に挑発してきたんじゃん! 自業自得の結果のくせに、そんなにムカついてたワケ? だとしたら器ちっさ過ぎなんだけど!

「断る。貴様らに構うほど私達は暇ではない」

 アレックスは淡々と断り、マッチョトリオの脇をすり抜け、すたすたと先に進んでいく。

「コラ! 逃げんのか!?」

「勝ち逃げは許さねえぞ!」

「それともビビってんのか!?」

 マッチョトリオは巨体に似つかわしくない素早い動きでアレックスの正面に回り込み、凄みを利かせて引き止める。

「おい、ケンユウ。お前少し相手をしてやれ」

 アレックスは大きなため息を一吐き、めんどくさいと言わんばかりの態度で、ケンユウさんに向かって言った。

「冗談だろ? 俺、弱いものイジメなんかしたくねえよ」

 “弱いものイジメ”という言葉に、マッチョトリオはすかさず反応する。

「おい、赤毛のあんちゃん。今なんつったよ?」

 青マッチョが必要以上に顔を近づけてケンユウさんに詰め寄る。

「いや、だってあんたら、すげー弱そうだもんよ。まあ無駄に筋肉ついてるから、ぱっと見は強そうだけどな。けど、肝心の実力の方は見たところ、この嬢ちゃん以下だぜ」

 ケンユウさんはクリンちゃんを指して、マッチョどものプライドを引き裂くような説明をした。

「てめえッ! ぶっ潰すッ!」

 青マッチョがキレてケンユウさんに襲いかかった。
 体重をかけたタックルを繰り出すが、ケンユウさんは反射的にサッと回避する。その直後、何やら鈍い衝撃音が辺りに響いた。

「んがっ!?」

 勢いあまった青マッチョが木に激突したのだ。そして、そのまま気絶してしまった。

「て、てめえっ! よくも弟をッ!」

 赤マッチョと黄マッチョの声がハモる。

「お、俺のせいかよ!? こいつが勝手に木にぶち当たって気絶したんだろーが」

 ケンユウさんはげんなりした表情で吐き捨てた。

「うるせえ!うるせえ! 弟の仇だッ! ……と、言いてえトコだが、てめえを相手にするのは今日はお日柄が悪ぃようだ」

 マッチョ二人はアレックスをびっしーと指し、

「てめえ、コラ! 決闘を他の野郎にやらせんじゃねえっ! てめえが戦えや、この腰抜けがっ! 三秒で潰してやる!」

 アレックスを口汚く罵る。
 マジでなんなのこいつら? ケンユウさんにはかないそうにないと思ったの? だとしたら、どんだけヘタレなんだ……。つーか再びアレックスに絡むなよ! 見た目は弱そうかも知んないけど、こいつ意外と強いんだからね?

「……本当に鬱陶しい連中だ。まるで蠅だな。潰れるのはお前達だ」

 馬鹿馬鹿しさと痛々しさに嫌気が差したのか、アレックスは嫌そうに言って、パチンと指を鳴らした。
 するとマッチョ二人の頭上に“10t”と表記された古典的な重りが現れ、二人を押し潰した。

「ギャーッ!」

 マッチョどもの悲鳴が辺りに響き渡り、マッチョトリオは全員気絶してしまった。

「まったく、わけのわからない連中だったな。先を急ごう。時間を無駄にした」

 アレックスは足早に歩きだした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...