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第二章 帝国編
第7話 義弟
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※新キャラ登場です!
ルード視点続きます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
side:ルード
ー…リオン・ルーベンス・カルド・カリスティリア
先帝の第三側妃の第三子にして数多く存在した俺の兄弟の末の弟。
生まれつき身体が弱く、その為に17の歳を数える現在も線の細さが目立つこの義弟は、
とても儚げな雰囲気を纏った美少年だ。
ふんわりとした短くも柔らかなダークブラウンの髪に同色の潤んだ大きな瞳。
日中の殆どを室内で過ごしてきた証拠に肌も白く、
体つきは17の男にしてはかなり小柄だ。
肌と反比例するように紅く形の良い唇が、彼を一層性別不詳に見せている。
線の細さと顔立ちの愛らしさ、物腰の柔らかさから彼を初めて見た者は
彼を美少女と見間違えることもしばしば。
5つ年下の彼の事をルードは嫌いではなかった。
後継者争いの折、まだ彼の母親である第三側妃が存命の頃は、
野心溢れる彼女と彼女の第一子・第三皇子らに遠ざけられて関わりを持つことは全くと言っていいほどになかったが、争いが散々たる結果を以って終結し、ルードに帝位が転がり込んできた時、彼は俺に言ったのだ。
“皆いなくなってしまったけれど…
ベルナード義兄上が生きていてくれた。
ー……っ僕はそれだけで嬉しいです”
両親が健在なルードと違い支えであったはずの母親や兄、
その双子の姉までもを亡くしたというのに、
涙を流しながら精一杯笑顔を浮かべて自分に言葉をくれた心優しいこの義弟を。
ルードにとって、死んだ実の兄よりも遥かに実の兄弟として心を許せる存在であった。
故に、お茶会に現れた彼の顔を目にした時、第一に笑顔を。
そしてその次には彼の体調への心配を顔に浮かべて、
気付けば気遣う言葉をかけていた。
『ただいま、リオン。
……体調のほうはどうだ?熱は?』
『大丈夫ですよあ義兄上。
最近では日中は外で散歩しているくらいですから!』
『ふっ……そうなら良いが。
あまり無理はするなよ?』
『はい!心得てますよ!!……でも』
『でも?』
『……僕がずっとこんなだから、義兄上の政務のお手伝いも出来なくて…。
情けないんです、自分が』
『そんな事を……』
一時は長く生きられないとまで言われたリオンが、
自分の手伝いが出来ないからと気に病むのを見て、変わらない心根の優しさに目を細める。
気に病むことはない、そう告げようとした俺を遮ってお茶会の主人が声を張り上げた。
『お前は招待した覚えはないぞ、リオン!
何故ここに来た』
『え……』
『おい!!』
『招待されていない以上、この場にお前がいる資格はない。
……そうであろう、リオン』
『は、い。
義母上、義兄上も。
折角のお茶会を邪魔してしまい、申し訳ございませんでした』
『っ待てリオン!!』
制止も虚しく肩を落として去っていくリオンに小さく舌打ちすると、
席を立ち、彼の後を追おうとする。が、またもやレムリアから声がかかる。
『待てルード。
……お前とはまだ話が終わっていないぞ』
『これ以上何の話をするというんだ、下らん。
人をからかい、周囲を巻き込み、
挙句腹違いだからと病弱な末の義弟までも除け者にするとは…話にもならん。
せめて実の息子に真っ当な気遣いが出来る様になってから言うんだな
……レムリア妃!』
『ルード!!!』
言い捨てると今度こそ振り返ることなく、俺はリオンの後を追ってその場を辞した。
自分が酷く感情的になっている自覚はある。
だが今までも、彼女が自分に母親らしさを見せたことはなく。
今ではたった1人になった病弱な弟すら大切にしようとしない彼女に、
これからも母親としての何かを期待しようとは、
最早思えなかった。
だからー…
去っていく俺に母が何かを呟いていたのを、この時俺は聞き逃した。
………………………………………………………………………………
side:レムリア
(捻くれているのは性分だ、許せ息子よ)
早足で去っていくルードの背中を眺めながら、ふうぅー…と息を吐く。
どうやら自分は柄にもなく緊張していたようだと苦笑しつつも、
その背中を見つめる眼差しは酷く優しい。
『種は蒔いた。
ルードが選んだ女ならきっと乗り越えられるだろうが……さて。
あれは果たして、蒔いた種に食い付くか………』
気を付けろよ ルード
本人には決して届くことはないと知りながら、それでも小さく呟かずにはいられない。
(……12年前も今も、ままならんものだなぁ…ルドルフ)
そうして息子のその向こうー…
今はもう見えなくなった人物の姿を頭の中に思い描き、
優しく細めていた目を険しく眇めるのだった。
ルード視点続きます。
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side:ルード
ー…リオン・ルーベンス・カルド・カリスティリア
先帝の第三側妃の第三子にして数多く存在した俺の兄弟の末の弟。
生まれつき身体が弱く、その為に17の歳を数える現在も線の細さが目立つこの義弟は、
とても儚げな雰囲気を纏った美少年だ。
ふんわりとした短くも柔らかなダークブラウンの髪に同色の潤んだ大きな瞳。
日中の殆どを室内で過ごしてきた証拠に肌も白く、
体つきは17の男にしてはかなり小柄だ。
肌と反比例するように紅く形の良い唇が、彼を一層性別不詳に見せている。
線の細さと顔立ちの愛らしさ、物腰の柔らかさから彼を初めて見た者は
彼を美少女と見間違えることもしばしば。
5つ年下の彼の事をルードは嫌いではなかった。
後継者争いの折、まだ彼の母親である第三側妃が存命の頃は、
野心溢れる彼女と彼女の第一子・第三皇子らに遠ざけられて関わりを持つことは全くと言っていいほどになかったが、争いが散々たる結果を以って終結し、ルードに帝位が転がり込んできた時、彼は俺に言ったのだ。
“皆いなくなってしまったけれど…
ベルナード義兄上が生きていてくれた。
ー……っ僕はそれだけで嬉しいです”
両親が健在なルードと違い支えであったはずの母親や兄、
その双子の姉までもを亡くしたというのに、
涙を流しながら精一杯笑顔を浮かべて自分に言葉をくれた心優しいこの義弟を。
ルードにとって、死んだ実の兄よりも遥かに実の兄弟として心を許せる存在であった。
故に、お茶会に現れた彼の顔を目にした時、第一に笑顔を。
そしてその次には彼の体調への心配を顔に浮かべて、
気付けば気遣う言葉をかけていた。
『ただいま、リオン。
……体調のほうはどうだ?熱は?』
『大丈夫ですよあ義兄上。
最近では日中は外で散歩しているくらいですから!』
『ふっ……そうなら良いが。
あまり無理はするなよ?』
『はい!心得てますよ!!……でも』
『でも?』
『……僕がずっとこんなだから、義兄上の政務のお手伝いも出来なくて…。
情けないんです、自分が』
『そんな事を……』
一時は長く生きられないとまで言われたリオンが、
自分の手伝いが出来ないからと気に病むのを見て、変わらない心根の優しさに目を細める。
気に病むことはない、そう告げようとした俺を遮ってお茶会の主人が声を張り上げた。
『お前は招待した覚えはないぞ、リオン!
何故ここに来た』
『え……』
『おい!!』
『招待されていない以上、この場にお前がいる資格はない。
……そうであろう、リオン』
『は、い。
義母上、義兄上も。
折角のお茶会を邪魔してしまい、申し訳ございませんでした』
『っ待てリオン!!』
制止も虚しく肩を落として去っていくリオンに小さく舌打ちすると、
席を立ち、彼の後を追おうとする。が、またもやレムリアから声がかかる。
『待てルード。
……お前とはまだ話が終わっていないぞ』
『これ以上何の話をするというんだ、下らん。
人をからかい、周囲を巻き込み、
挙句腹違いだからと病弱な末の義弟までも除け者にするとは…話にもならん。
せめて実の息子に真っ当な気遣いが出来る様になってから言うんだな
……レムリア妃!』
『ルード!!!』
言い捨てると今度こそ振り返ることなく、俺はリオンの後を追ってその場を辞した。
自分が酷く感情的になっている自覚はある。
だが今までも、彼女が自分に母親らしさを見せたことはなく。
今ではたった1人になった病弱な弟すら大切にしようとしない彼女に、
これからも母親としての何かを期待しようとは、
最早思えなかった。
だからー…
去っていく俺に母が何かを呟いていたのを、この時俺は聞き逃した。
………………………………………………………………………………
side:レムリア
(捻くれているのは性分だ、許せ息子よ)
早足で去っていくルードの背中を眺めながら、ふうぅー…と息を吐く。
どうやら自分は柄にもなく緊張していたようだと苦笑しつつも、
その背中を見つめる眼差しは酷く優しい。
『種は蒔いた。
ルードが選んだ女ならきっと乗り越えられるだろうが……さて。
あれは果たして、蒔いた種に食い付くか………』
気を付けろよ ルード
本人には決して届くことはないと知りながら、それでも小さく呟かずにはいられない。
(……12年前も今も、ままならんものだなぁ…ルドルフ)
そうして息子のその向こうー…
今はもう見えなくなった人物の姿を頭の中に思い描き、
優しく細めていた目を険しく眇めるのだった。
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