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第二章  帝国編

第26話  交流会強制終了

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ルードもモリーもニーナも、ヴィーダ嬢もジョルダン嬢も。
その他にホール内で待機していた侍女達までもが床に伏している様子を
暫し呆然と眺めていたが、
ルードがこの場で一番大事があってはならない存在であることを思い出し、
慌ててお越しにかかる。



『ルード!!っルード!!?』

『……ん、んん?…シェイラか、どうし…!!?』


倒れたルードに懸命に呼びかけると、呻き声を上げながら床から身体を起こした。
すぐに異常事態であることに思い至って周囲をと見渡す様子に、
ほっと安堵の息をつく。
周囲に倒れているニーナやヴィーダ嬢、ジョルダン嬢、その他の侍女達を注意深く見回した後、
ゆっくりと立ち上がる。


『………いきなり意識が…。
一体なにが起こった?』

『……兎も角皆さんを起こしましょう。
なにかしら身体に異常が残っていないとも限りませんし…』

『あ、ああ。
そうだな。しかしその二人は……』

『ええ。ヴィーダ嬢とジョルダン嬢は最後に起こしましょう。
なにか知っているやも』

『或いは、何か仕出かしたかもしれないからな』

『…………』


私の目から見ても先ほどの二人の笑みは不気味に過ぎるし、
この奇妙で異常な現象は二人が接近した途端に起こったのだ。
何かあることは間違いなさそうだが、兎にも角にも皆が皆倒れていては
調べることもままならない。


『……シェイラは大丈夫だったのか?』

『え、ええ……。それがその……』

『まぁ、無事ならひとまずそれでいい。
が……後で話を聞かせてもらうぞ?』

『わかりました』


どの道今聞かれても、
シェイラ自身なんと説明したらいいか言葉に困ってしまう。
こんなことになって混乱と動揺が自身の思考を鈍らせているようだ。


厄介な現象の原因追及は後回しと決め、
二人は手分けして周囲に倒れている人達を起こしにかかる。
私達に声をかけられ順に身を起こしていった皆は
何故床に?と戸惑いの表情を浮かべていたが、
モリーとニーナは険しい顔を件の二人に向けていた。

当の二人はといえばー…


『……ん、っう!?
何これ…頭痛っ……というか何故床に……え、ここどこ?』

頭を抱えながら起き上がり、状況がまるで飲み込めていない
……というか、交流会の会場にいることすら分かってなさそうなジョルダン嬢と。



『っうぅ……、え……。
私は一体……』

他の人達と同様、何故床に?と嘆いているヴィーダ嬢。


『厄介なことになりそうだな…』

『……ええ……』


その様子を見て苦々しく嘆くルードに賛同を示したシェイラはしかし、
その内一人から視線を外すことが出来なかった。

先ほどの翠髪の男性が最後にシェイラに向けて囁いた言葉ー…


の人間に気を付けろ】



微かに耳に残るその囁き声が、いつまでも頭から離れなかった。

この不可思議で奇妙な異常現象の為に、
交流会は強制的に終了を余儀なくされたのだった。


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