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ざまぁは添えるだけ
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ミレーヌ・アヴェリーノ公爵令嬢。今日で五歳になった彼女は、自分の誕生日パーティーにそっと微笑み誕生日プレゼントを大いに喜んだ。
「ミレーヌ様、お誕生日おめでとうございます。ミレーヌ様は魔法の天才とのことで、将来も楽しみですな」
「ふふ、趣味に没頭しているだけですわ。魔法なんて、ロマンが溢れるでしょう?」
「…そうでしょうか?」
彼女が魔法の溢れる世界で、魔法にロマンを見出すのには理由がある。…お決まりのパターン、前世の記憶というやつである。彼女は、ファンタジーが好きなごく普通の日本人の女子高生だった。魔法の特訓などファンタジー要素も多い乙女ゲームを好んでいたのだが、不慮の事故に遭ってしまい幸か不幸かそれに類似した世界に転生した。なので開き直って魔法を極めまくっているのである。
「ミレーヌ様が女公爵となれば、安泰ですな」
「そうでしょうか?魔法ばかりに夢中で、叱られていますのよ?」
ちなみに、ミレーヌの記憶が正しければ多分。ミレーヌは乙女ゲームの悪役令嬢ポジションだ。それも含めて開き直っているが。断罪されても、処刑はされない。魔法を極めまくって、それで生きていけばいいと思っている。
「いえいえ、他の分野でも優れた能力をお持ちだと伺っていますよ」
「他の子達より少し知識があるだけですわ。能力は平凡ですのよ?」
ちなみに、ミレーヌは公爵家の一人娘で将来は婿を取り公爵家を継ぐ予定だ。だがゲーム通りの展開になれば、ミレーヌは断罪され国外追放。家はお取り潰しにはならないはずだが、迷惑をかけてしまうなぁと今から少し申し訳なく思っている。
「そう思うなら少しは魔法以外にも目を向けろ」
「お父様」
ミレーヌの父が、ミレーヌを抱き上げる。ミレーヌは素直にその腕に収まった。少し厳しいが優しい父、穏やかでちょっとおっとりした母。ミレーヌは今世の両親も愛している。
「ミレーヌ、お父様とお母様からのお誕生日プレゼント、なにかわかるかしら」
「…ええ、そこの男の子との婚約ですわよね」
「あら、さすがはミレーヌね!理解が早いわ」
「…ちょっと待ってくださいませ」
父と母が連れてきた男の子とその両親。ミレーヌの記憶違いでなければ、攻略対象の一人であり、ミレーヌの婚約者となる彼。コルネイユ・ベルトランの不服そうな表情を見て、ミレーヌは言った。
「貴方はそれでいいの?婚約は嫌じゃない?大丈夫?嫌なら言っていいんですのよ」
ミレーヌの言葉に、コルネイユはハッとした表情になる。
「…俺の気持ちを、気にかけてくれるのか?」
「だって、私達の人生を左右するお約束ですのよ?私達の気持ちはすごく大切ですわ。私は特に嫌ではないのですけれど…」
ミレーヌの言葉に、ミレーヌとコルネイユそれぞれの両親は顔を見合わせる。子供達の意見を聞いていなかったことに気付き、反省したらしい。
ミレーヌの両親はすぐに顔を上げて、ベルトラン辺境伯の後ろで未だ戸惑うコルネイユに話しかける。
「勝手に大人だけで話し合って決めてしまったわ。ごめんなさいね」
「君の意思を確認せず申し訳なかった。この婚約を続けてもいいだろうか?」
コルネイユは少し考えて言った。
「…いえ、政略結婚なんてそんなものですから。婚約は…俺は、ミレーヌ相手なら続けたいです」
「ミレーヌは?」
「私も、コルネイユ相手なら続けたいですわ。だって、コルネイユったらイケメンで眼福なんですもの」
コルネイユはミレーヌの言葉に吹き出した。眼福なんて、なんて正直な言い方だと。
「はは、なんだかんだでミレーヌが婚約者になってくれてよかった!」
「うふふ。そう言っていただけるなら光栄ですわ」
二人の和やかな雰囲気に、大人たちは胸を撫で下ろした。
「ミレーヌ!来たぞ!」
「あら、コルネイユ!いらっしゃい、今お茶の準備をさせますわ」
「ありがとう。今日もミレーヌに会えて嬉しい」
「私もよ、コルネイユ」
コルネイユはあの日以来、手を抜いてそこそこの成績をキープしていた勉強と剣術を頑張り始めた。そして、その代わりに週に一度ミレーヌに会いに来る許可を得ていた。
「はぁ…私、基本的には魔法や妖精達にしか興味がないのですけれど、コルネイユの顔は好きですわ」
「俺もそんな素直なミレーヌが面白くて好きだ」
それでいいのか、と思うような婚約者二人の会話だが、なんだかんだで相性は良いらしい。二人は穏やかな時間を共に過ごした。
その後二人は成長し、乙女ゲームの舞台、魔法学園に通う年頃に。ミレーヌはコルネイユがヒロインと出会ったら、必要であれば身を引く…あるいは断罪される覚悟でいる。それでもいいと思えるくらいには、コルネイユを気に入っている。
「コルネイユ。そろそろ魔法学園に入学ね」
「楽しみだな」
「ええ、コルネイユの制服姿、楽しみだわ」
「ふはっ…!そこかよ!」
コルネイユの幸せを心から願う。たとえその隣に、自分の姿がなくとも。
「コルネイユ」
「なんだ?」
「…遠慮なんてしないで、自分の幸せを優先してね」
「…急にどうした?当たり前だろ。ミレーヌさえ隣にいれば、俺は幸せだよ」
嘘でも、お世辞でも。その言葉があれば、生きていけると心から思った。
「ミレーヌ様!貴女も転生者でしょう!?」
「…え、ヒロインさんもそうなんですの?」
「やっぱり!もう、悪役令嬢のくせになんで私を虐めてくれないんですか!意地悪!」
ヒロイン…ノエミはミレーヌを睨みつけてくる。
「おかげで攻略が進まないんですけど!!!」
「誰ルート狙いなのかしら?」
「逆ハーレムルートに決まってるでしょ!」
ミレーヌは少し不快だった。
「…私、そういうの嫌いなんですのよね。一人に絞るなら協力して差し上げてもよろしくてよ?」
「うるさい!偉そうに!いいから私に嫉妬して虐めなさいよ!」
そこでノエミは、聖女の魅了の魔法でミレーヌを使役しようとした。ミレーヌはしまったと思ったが、遅かった。障壁の魔法が、間に合わない。目をつぶって耐えようとする。
しかし、ミレーヌは魅了にかからなかった。
「ミレーヌ、無事か!?」
「コルネイユ!?」
気づけばコルネイユがミレーヌとノエミの間に入り、障壁の魔法を展開していたのだ。
コルネイユは障壁の魔法を展開したままミレーヌを抱きしめる。ノエミはそれが気に入らない。
「なにしてるのよ!攻略対象は全員私のものなのよ!?」
そこに、魔法学園の教師陣が現れた。
「ノエミ。君は聖女の魅了を自分のわがままを通すために使おうとしたね?懲罰部屋行きだ。反省しなさい」
「え」
「さあ、行くよ。出来の悪い生徒の教育も、我々の仕事だ」
「や、やだ!何言って…魅了を使っちゃダメなんて知らなかったもん!」
「嘘は良くない。言い訳も聞かない。さあ行くよ」
懲罰部屋と言っても、さほど酷い折檻は受けない…はずだ。ミレーヌは少しばかり同情しつつも、反省して出直して来いと見送った。そしてコルネイユはミレーヌの体を離す。ミレーヌがどこも怪我していないか隅々までチェックしつつ話す。
「ごめん、ミレーヌ。助けに来るのが遅くて」
「そんなことないわ。とっても格好良かった。本当にありがとう、コルネイユ」
ミレーヌは、はてと首を傾げる。
「でも、どうして私がピンチだとわかったの?先生たちまで連れてきて」
「実は、色々あの子について噂を聞いてて。あの子がミレーヌを悪役令嬢とかなんとか、虐めがどうとかこうとか言ってたって。もしかしてミレーヌをいじめようとしているのかなって。ただ、相手は聖女候補だから先生たちにも相談して。一度みんなで話をしようとあの子を探してたところだったんだ」
「あらまあ」
「でも、君が無事で本当に良かった…」
コルネイユはミレーヌをもう一度抱きしめる。
「ふふ、優しいのね。ありがとう」
「心配するのは当たり前だろ。…あ、愛する婚約者のことなんだから」
「…あら」
抱きしめていたのを離して、顔を真っ赤にしつつそんなことを言うコルネイユにミレーヌは微笑んだ。
「ふふ、私も愛してるわ」
「か、からかうなよ」
「本心よ」
微笑みながらそう言うミレーヌに、コルネイユはさらに顔を赤くして白旗を揚げた。
「ミレーヌ様、お誕生日おめでとうございます。ミレーヌ様は魔法の天才とのことで、将来も楽しみですな」
「ふふ、趣味に没頭しているだけですわ。魔法なんて、ロマンが溢れるでしょう?」
「…そうでしょうか?」
彼女が魔法の溢れる世界で、魔法にロマンを見出すのには理由がある。…お決まりのパターン、前世の記憶というやつである。彼女は、ファンタジーが好きなごく普通の日本人の女子高生だった。魔法の特訓などファンタジー要素も多い乙女ゲームを好んでいたのだが、不慮の事故に遭ってしまい幸か不幸かそれに類似した世界に転生した。なので開き直って魔法を極めまくっているのである。
「ミレーヌ様が女公爵となれば、安泰ですな」
「そうでしょうか?魔法ばかりに夢中で、叱られていますのよ?」
ちなみに、ミレーヌの記憶が正しければ多分。ミレーヌは乙女ゲームの悪役令嬢ポジションだ。それも含めて開き直っているが。断罪されても、処刑はされない。魔法を極めまくって、それで生きていけばいいと思っている。
「いえいえ、他の分野でも優れた能力をお持ちだと伺っていますよ」
「他の子達より少し知識があるだけですわ。能力は平凡ですのよ?」
ちなみに、ミレーヌは公爵家の一人娘で将来は婿を取り公爵家を継ぐ予定だ。だがゲーム通りの展開になれば、ミレーヌは断罪され国外追放。家はお取り潰しにはならないはずだが、迷惑をかけてしまうなぁと今から少し申し訳なく思っている。
「そう思うなら少しは魔法以外にも目を向けろ」
「お父様」
ミレーヌの父が、ミレーヌを抱き上げる。ミレーヌは素直にその腕に収まった。少し厳しいが優しい父、穏やかでちょっとおっとりした母。ミレーヌは今世の両親も愛している。
「ミレーヌ、お父様とお母様からのお誕生日プレゼント、なにかわかるかしら」
「…ええ、そこの男の子との婚約ですわよね」
「あら、さすがはミレーヌね!理解が早いわ」
「…ちょっと待ってくださいませ」
父と母が連れてきた男の子とその両親。ミレーヌの記憶違いでなければ、攻略対象の一人であり、ミレーヌの婚約者となる彼。コルネイユ・ベルトランの不服そうな表情を見て、ミレーヌは言った。
「貴方はそれでいいの?婚約は嫌じゃない?大丈夫?嫌なら言っていいんですのよ」
ミレーヌの言葉に、コルネイユはハッとした表情になる。
「…俺の気持ちを、気にかけてくれるのか?」
「だって、私達の人生を左右するお約束ですのよ?私達の気持ちはすごく大切ですわ。私は特に嫌ではないのですけれど…」
ミレーヌの言葉に、ミレーヌとコルネイユそれぞれの両親は顔を見合わせる。子供達の意見を聞いていなかったことに気付き、反省したらしい。
ミレーヌの両親はすぐに顔を上げて、ベルトラン辺境伯の後ろで未だ戸惑うコルネイユに話しかける。
「勝手に大人だけで話し合って決めてしまったわ。ごめんなさいね」
「君の意思を確認せず申し訳なかった。この婚約を続けてもいいだろうか?」
コルネイユは少し考えて言った。
「…いえ、政略結婚なんてそんなものですから。婚約は…俺は、ミレーヌ相手なら続けたいです」
「ミレーヌは?」
「私も、コルネイユ相手なら続けたいですわ。だって、コルネイユったらイケメンで眼福なんですもの」
コルネイユはミレーヌの言葉に吹き出した。眼福なんて、なんて正直な言い方だと。
「はは、なんだかんだでミレーヌが婚約者になってくれてよかった!」
「うふふ。そう言っていただけるなら光栄ですわ」
二人の和やかな雰囲気に、大人たちは胸を撫で下ろした。
「ミレーヌ!来たぞ!」
「あら、コルネイユ!いらっしゃい、今お茶の準備をさせますわ」
「ありがとう。今日もミレーヌに会えて嬉しい」
「私もよ、コルネイユ」
コルネイユはあの日以来、手を抜いてそこそこの成績をキープしていた勉強と剣術を頑張り始めた。そして、その代わりに週に一度ミレーヌに会いに来る許可を得ていた。
「はぁ…私、基本的には魔法や妖精達にしか興味がないのですけれど、コルネイユの顔は好きですわ」
「俺もそんな素直なミレーヌが面白くて好きだ」
それでいいのか、と思うような婚約者二人の会話だが、なんだかんだで相性は良いらしい。二人は穏やかな時間を共に過ごした。
その後二人は成長し、乙女ゲームの舞台、魔法学園に通う年頃に。ミレーヌはコルネイユがヒロインと出会ったら、必要であれば身を引く…あるいは断罪される覚悟でいる。それでもいいと思えるくらいには、コルネイユを気に入っている。
「コルネイユ。そろそろ魔法学園に入学ね」
「楽しみだな」
「ええ、コルネイユの制服姿、楽しみだわ」
「ふはっ…!そこかよ!」
コルネイユの幸せを心から願う。たとえその隣に、自分の姿がなくとも。
「コルネイユ」
「なんだ?」
「…遠慮なんてしないで、自分の幸せを優先してね」
「…急にどうした?当たり前だろ。ミレーヌさえ隣にいれば、俺は幸せだよ」
嘘でも、お世辞でも。その言葉があれば、生きていけると心から思った。
「ミレーヌ様!貴女も転生者でしょう!?」
「…え、ヒロインさんもそうなんですの?」
「やっぱり!もう、悪役令嬢のくせになんで私を虐めてくれないんですか!意地悪!」
ヒロイン…ノエミはミレーヌを睨みつけてくる。
「おかげで攻略が進まないんですけど!!!」
「誰ルート狙いなのかしら?」
「逆ハーレムルートに決まってるでしょ!」
ミレーヌは少し不快だった。
「…私、そういうの嫌いなんですのよね。一人に絞るなら協力して差し上げてもよろしくてよ?」
「うるさい!偉そうに!いいから私に嫉妬して虐めなさいよ!」
そこでノエミは、聖女の魅了の魔法でミレーヌを使役しようとした。ミレーヌはしまったと思ったが、遅かった。障壁の魔法が、間に合わない。目をつぶって耐えようとする。
しかし、ミレーヌは魅了にかからなかった。
「ミレーヌ、無事か!?」
「コルネイユ!?」
気づけばコルネイユがミレーヌとノエミの間に入り、障壁の魔法を展開していたのだ。
コルネイユは障壁の魔法を展開したままミレーヌを抱きしめる。ノエミはそれが気に入らない。
「なにしてるのよ!攻略対象は全員私のものなのよ!?」
そこに、魔法学園の教師陣が現れた。
「ノエミ。君は聖女の魅了を自分のわがままを通すために使おうとしたね?懲罰部屋行きだ。反省しなさい」
「え」
「さあ、行くよ。出来の悪い生徒の教育も、我々の仕事だ」
「や、やだ!何言って…魅了を使っちゃダメなんて知らなかったもん!」
「嘘は良くない。言い訳も聞かない。さあ行くよ」
懲罰部屋と言っても、さほど酷い折檻は受けない…はずだ。ミレーヌは少しばかり同情しつつも、反省して出直して来いと見送った。そしてコルネイユはミレーヌの体を離す。ミレーヌがどこも怪我していないか隅々までチェックしつつ話す。
「ごめん、ミレーヌ。助けに来るのが遅くて」
「そんなことないわ。とっても格好良かった。本当にありがとう、コルネイユ」
ミレーヌは、はてと首を傾げる。
「でも、どうして私がピンチだとわかったの?先生たちまで連れてきて」
「実は、色々あの子について噂を聞いてて。あの子がミレーヌを悪役令嬢とかなんとか、虐めがどうとかこうとか言ってたって。もしかしてミレーヌをいじめようとしているのかなって。ただ、相手は聖女候補だから先生たちにも相談して。一度みんなで話をしようとあの子を探してたところだったんだ」
「あらまあ」
「でも、君が無事で本当に良かった…」
コルネイユはミレーヌをもう一度抱きしめる。
「ふふ、優しいのね。ありがとう」
「心配するのは当たり前だろ。…あ、愛する婚約者のことなんだから」
「…あら」
抱きしめていたのを離して、顔を真っ赤にしつつそんなことを言うコルネイユにミレーヌは微笑んだ。
「ふふ、私も愛してるわ」
「か、からかうなよ」
「本心よ」
微笑みながらそう言うミレーヌに、コルネイユはさらに顔を赤くして白旗を揚げた。
応援ありがとうございます!
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