女公爵は軽薄に笑う

下菊みこと

文字の大きさ
12 / 33

女公爵は闇オークションのトップを跪かせる

しおりを挟む
「始める?何を…」

「チェン様!今回はご協力ありがとうございます!」

チェンに聞こうとしたその時、ドアが突然開き、上等な服を着た若い男性が現れる。

「いやいや、ここが潰されると困る人がたくさんいるからね。人助けだよ人助け!」

「貴方は…?」

「これはこれはエルドラド公爵様。私、グランディネファミリーのジェラーニオ・グランディネと申します。以後お見知り置きを」

「…また外国のマフィアなの」

「また?」

「こちらの話よ」

「おや、そうですか」

「…目的は?」

「なに、ここを潰されないための自衛ですよ。後はまあ、邪竜や天使なんて、高く売れそうだなぁと」

「…悪趣味ね」

「なんとでも」

話しながらアンジェリクは、チェンのネックレスの光をちらりと見る。それは、アンジェリクが持っているネックレスと同じものだった。

「わかっているのかしら?私はこの国の公爵。執事も伯爵家の三男よ?」

「もちろん知っていますとも。情報屋からの確かな情報ですから」

「情報屋さんねぇ…」

アルファの顔が浮かぶが彼女は後回しだ。

「つまり、私達がターブルロンドの公爵と伯爵家の三男だと知っていて狼藉を働いたのね?」

「ええ。今更なにを?」

「チェンは何故、何をどう協力したのかしら?」

「チェン様はちょっと脅させていただきましてね、まあ何の件でとは言えませんが。チェン様にはエルドラド公爵様と執事殿の種族の情報と、取り押さえるのに必要な道具を取り寄せていただきまして」

「…それだけなのね?人身売買の件には関わっておらず、今回の件も脅されて仕方なく協力しただけ。特に手を出してきた訳ではなく、情報を渡すことと道具の提供をしただけ、と」

「ええ。…化け物同士、今更心配でも?」

「ふふ。ええ、そうよ。化け物同士だもの。…チェン!今よ!」

「はいはーい」

瞬間、広々とした部屋が一気に手狭になる。白い光が部屋を満たし、白い獅子が姿を現した。それは神々しく、清廉で美しく、まさに瑞獣と呼ぶに相応しい姿をしていた。白沢だ。

「な!?チェン様、裏切る気ですか!」

「それはもちろん!だって最初からそのつもりだからね!」

「!?」

「無駄話はいいからやっちゃいなさい!」

「人使い荒いなぁ!」

白沢が黒服達を一瞬にしてのした。そして人の姿に戻るとアンジェリクとリュカを解放する。

「…こ、この裏切り者!あの件がどうなってもいいのか!」

「今ここで君を捕らえて、この映像石に録画した情報で追い詰めれば問題ないからね、別にいいよ」

ぷるぷると怒りで震えるジェラーニオ。しかし圧倒的に不利だと悟ったのか悪足掻きはしないようだ。

「跪きなさい」

「はい」

「…貴方達は終わりよ」

「…はい」

「リュカ、治安部隊に連絡」

「はい」

こうして人身売買の行われる闇オークションは潰された。ベアトリス皇女は、人身売買を行う組織を潰したとの報告をアンジェリクから聞くと、人身売買という言葉に胸を痛めるように辛そうな顔をした後、アンジェリクが売られた人達を全て金の力で解放したとの追加の報告に安心したようにふわりと笑うのだった。

「チェン、貴方もうちょっとスマートに解決できなかったの?」

「だってこっちの方が楽しそうだったからさぁ」

「貴方という方は…」

「まあ、今回は助かったわ。ありがとう」

「エルドラドからお礼を言われるとか雪でも降るの?」

「ご主人様に失礼ですよ。口を慎んでください」

「はいはーい」

ジェラーニオ他ファミリー一同は公爵に手を出した罪で極刑。闇オークションは、なんとチェンのファミリーが人身売買は無しで継ぐ形となった。

「いやー、これからどんどん儲かりそう!」

「そういえば脅されてた件ってなんだったの?」

「さあ?まあ、皇女殿下に迷惑をかける話ではないよ」

「それならばいいのですが…」

「あと、次からは一言相談してね?」

「次がないことを祈るよー」

「確かにそれはそうね」

そんなこんなで今回も無事にメアリー人形を献上出来たアンジェリクだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

 怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~

美袋和仁
恋愛
 ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。  しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。  怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。  なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...