独りぼっちのお姫様は、謎の魔法使いさんだけがお話し相手

下菊みこと

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王妃

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「…はぁ」

シャグラン王国の王妃。誰にも愛される貴いお方。そんな風に言われる私だけれど、息子の命一つ守れない。

「ヴェルテュ…」

我が息子ヴェルテュは身体が弱い。生まれ持った魔力量が人よりも多すぎるあまり、魔力が度々暴走してしまうのだ。

「この国には貴方しかいないのに…」

この国には王子はヴェルテュだけ。

王女は一人いるが、アレは私の子ではない。国王陛下が、メイドに手を出した結果出来たなんの後ろ盾もない子。

事もあろうに、養育は私に任されたがほぼ放置している。なぜ生きているのかわからない。しぶとい。

ともかく。私は国を守るためにもヴェルテュの命を繋ぎ止める必要がある。

国王陛下は私が好みではないらしく子を増やす気が無いし、新しく側妃を迎える気もないらしい。本人が乗り気にならないともうどうしようもなかった。だからヴェルテュが唯一の王子なのだ。死なせられない。

「新しい魔法使いは見つからないのですか」

ヴェルテュを救うため、多くの魔法使いを召抱えたが未だに成果はない。

「それが、新たな志願者が現れました」

「ほう」

「さっそく王子殿下を診ていただきましたが、王子殿下の容体が落ち着きました」

「…それは本当ですか!?」

母として、王妃として。これほど嬉しいことはない。

「なんでも、多すぎる魔力を魔力石に変えてしまわれたとか」

「なんと…!」

「それも、出来た魔力石は全て王子殿下に捧げたそうです」

「…!今すぐ褒賞を与えなさい!望むことは全て叶えなさい!」

「は、はい!」

ドタバタと出て行く臣下を見送る。

新しい魔法使いは、なんと優秀なのだろう。

魔力石は魔力を石の形に変えたもの。言うのは簡単だが、かなりの技術がないと難しい。

息子を救い、貴重な魔力石を作りそれを全て息子に捧げる。

逃すわけにいかない。褒賞を与えて縛り付けておかなければ。

「…王妃殿下、失礼します」

「どうしました」

「魔法使い様は、金銭や宝石の類は要らないと固辞されました」

「なに?」

「代わりに叶えて欲しいことがあると」

…何故か、嫌な予感がした。

「王子殿下が大層妹姫様を気にかけていらしたから、自分が後見人になってあげたいと。王子殿下も長期的に魔力石を作り続ける必要があるから、王宮に居座るのだしちょうどいいとか…」

「なんとっ…」

しかし、そういうことなら断れない。息子を人質に取られた気分だが、仕方なく了承した。
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