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忌々しいにもほどがある

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私はあの最悪な逢瀬から一月後、またゴッドリープ様にお会いしに来た。

ゴッドリープ様は笑顔で迎えてくれる。

やはりねずみに多少のお灸を据えるくらいは許されたらしい。

そう思ったのだけど。

違った。

「ゴッドリープ様、お会いしたかったです!」

「うん、オレも君に会いたかったんだ」

「…!本当に!?」

「もちろん」

「わあ、嬉しい!」

初めてそんなことを言われて浮かれていた。

愛の言葉を貰えるのかと期待した。

けれどそんなことはなかった。

「可愛いキューに、余計なことを吹き込んだのは君だね?」

「…え」

どきりとした。

許されてなどいないと知った。

「いやぁ、オレもね。いつでも優しく、ゆとりを持って…下のものに常に寛容であること。それを良しとして生きてきたから。短気な兄だとキューに嫌われたり怖がられるのも嫌だし。一度や二度の失敗は、大目に見ようと思っているんだ」

そう言ったゴッドリープ様の目は、言葉と裏腹に冷たい。

「けれどほら…確認は大事だろう?やってないことで犯人扱いされるのは、ムーンリットだって嫌だろうしね。ただ、キューもキューに付けた教徒も告げ口なんてしてくれないからさ」

…わかっていて、わざと確認している。

「どうなのかなぁって、思ってさ?」

ああ、完全に嫌われた。

もう、ここに来てもなんの意味もないのだ。

私は恩人に愛想をつかされたのだ。













それから、自分がどうしたのかわからない。

何を言ってゴッドリープ様から離れて、どうやって境内まで辿り着いたのか。

ただ、境内にいる呑気な顔のあのねずみを見つけて…気付いたら、掴みかかっていて。

すぐに御付きの教徒に止められてしまったけれど、たしかにその腕に傷をつけた。

そしてそのまま暴れてなんとか私を押さえつけた教徒の手から逃れて…下山した。

「ううっ…ううっ…」

私は今、部屋で泣いている。

怖い。

ゴッドリープ様の怒りに触れてしまった。

一度や二度の失敗は大目に見る…ならば、三度目の失敗は?

きっと許されない。

「ぐすっ…うぇっ…」

嫌われただけじゃなく。

怒りに触れたなら。

責は、親にも及ぶかもしれない。

ゴッドリープ様は…パラディース教は、日に日に勢いを増している。

誰とどんな繋がりがあるかさえわからない。

「ごめ、ごめんなさい…」

今更の、自室での謝罪になんの意味もないとしても。

今はただ、謝るしかできない。

「ごめんなさい…」

どうか、許して。

怖いよ。

ただ、ゴッドリープ様が好きだった。

私を助けてくれた貴方が好きだった。

それだけだったのに。
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