33 / 108
要領を得ない話
しおりを挟む
「…ゴッドリープ様!キューケン様!」
遅れて、いつもの側仕えの教徒とキューのお目付役の教徒が来る。
いつもの側仕えの教徒は片足と片腕にほんの僅かだが痺れがあり、キューのお目付役の教徒は耳が若干遠い。
その境遇ゆえ自立は難しいだろうと長らく総本山に置いている二人。
付き合いが長いゆえに特に信頼している。
だが、キューのお目付役のこの教徒には少し色々聞かねばならない。
「キューは疲れているようだから、代わりに説明してくれるね?事と次第によっては…わかるよね」
「はいっ…」
「兄様っ…」
「キュー、まだ休んでいないとだめだよ」
キューは仲の良いその教徒を守りたいのか、身体を起こそうとするがオレが止める。
「じゃあ、お願い。怒らないであげて。守ってくれたの」
「守った結果がこれかい?」
「これは私の問題なのっ」
私の問題?
どういう意味かな。
「…兄様には踏み込まれたくないってこと?」
「違うっ…違うの、兄様、違うの…」
珍しく…いや、ここに来て初めてキューが泣いた。
ぽたぽた溢れる涙に焦る。
「ああっ…ごめんね、キュー。意地悪をしたいわけじゃないんだ。キューを責めてるんでもないよ。キューが言いたくないなら良いんだ」
「違う、違うの…あのね、キュー、難しくて。でもね、キューが言うから聞いて欲しいの」
キューが、あの聡明なキューが。
まるで年相応に泣いて、懇願して、混乱するままに話そうとする。
…聞いてやらねば。
「わかった、聞くよ」
幸い、オレとの付き合いの長い…と言ってもオレが五つの時からの付き合いだけれど…二人の教徒は空気を読んで黙っていてくれる。
「あのね、キューね…前世の、記憶があるの」
キューの口から語られるのは、本来ならばおおよそ信じられない話だった。
「キューね、キューね、前世で誰にも愛されなくて、やっと家を飛び出したら変な人に刺されたの、痛かったし怖かったの」
「…うん」
「それでね、そのせいで生まれ変わってもやっぱり愛されなくて、でもね、兄様に会えて嬉しかったの」
「うん」
「でね、でもね、やっぱり怖くてね、襲われて、血が出て、思い出して、怖くて」
要領を得ない説明だが、言いたいことはなんとなく汲み取れている…と思う。
「でも、兄様に心配かけたくなくて我慢して、でも息が上手くできなくなってはぁはぁしちゃったの」
おそらく過呼吸かな。
「でも兄様の顔がちらついて、だから意識を踏ん張ったの」
「うん」
「そうしてたら落ち着いたの、兄様のこと考えたら落ち着いたの」
…それに嬉しいと思ってしまうオレはだめな兄だな。
「だから大丈夫、その人怒らないで、叱らないで、意地悪しないで」
「わかった。今回は許すよ」
今回は、と付けたのは彼への忠告でありキューに嘘をつきたくないという気持ちの表れ。
とはいえ本当に、今回は罰することはしない。
何故ならば、キューの話を聞く限り…襲われたとかも問題なのだが、根本はそこじゃないからだ。
遅れて、いつもの側仕えの教徒とキューのお目付役の教徒が来る。
いつもの側仕えの教徒は片足と片腕にほんの僅かだが痺れがあり、キューのお目付役の教徒は耳が若干遠い。
その境遇ゆえ自立は難しいだろうと長らく総本山に置いている二人。
付き合いが長いゆえに特に信頼している。
だが、キューのお目付役のこの教徒には少し色々聞かねばならない。
「キューは疲れているようだから、代わりに説明してくれるね?事と次第によっては…わかるよね」
「はいっ…」
「兄様っ…」
「キュー、まだ休んでいないとだめだよ」
キューは仲の良いその教徒を守りたいのか、身体を起こそうとするがオレが止める。
「じゃあ、お願い。怒らないであげて。守ってくれたの」
「守った結果がこれかい?」
「これは私の問題なのっ」
私の問題?
どういう意味かな。
「…兄様には踏み込まれたくないってこと?」
「違うっ…違うの、兄様、違うの…」
珍しく…いや、ここに来て初めてキューが泣いた。
ぽたぽた溢れる涙に焦る。
「ああっ…ごめんね、キュー。意地悪をしたいわけじゃないんだ。キューを責めてるんでもないよ。キューが言いたくないなら良いんだ」
「違う、違うの…あのね、キュー、難しくて。でもね、キューが言うから聞いて欲しいの」
キューが、あの聡明なキューが。
まるで年相応に泣いて、懇願して、混乱するままに話そうとする。
…聞いてやらねば。
「わかった、聞くよ」
幸い、オレとの付き合いの長い…と言ってもオレが五つの時からの付き合いだけれど…二人の教徒は空気を読んで黙っていてくれる。
「あのね、キューね…前世の、記憶があるの」
キューの口から語られるのは、本来ならばおおよそ信じられない話だった。
「キューね、キューね、前世で誰にも愛されなくて、やっと家を飛び出したら変な人に刺されたの、痛かったし怖かったの」
「…うん」
「それでね、そのせいで生まれ変わってもやっぱり愛されなくて、でもね、兄様に会えて嬉しかったの」
「うん」
「でね、でもね、やっぱり怖くてね、襲われて、血が出て、思い出して、怖くて」
要領を得ない説明だが、言いたいことはなんとなく汲み取れている…と思う。
「でも、兄様に心配かけたくなくて我慢して、でも息が上手くできなくなってはぁはぁしちゃったの」
おそらく過呼吸かな。
「でも兄様の顔がちらついて、だから意識を踏ん張ったの」
「うん」
「そうしてたら落ち着いたの、兄様のこと考えたら落ち着いたの」
…それに嬉しいと思ってしまうオレはだめな兄だな。
「だから大丈夫、その人怒らないで、叱らないで、意地悪しないで」
「わかった。今回は許すよ」
今回は、と付けたのは彼への忠告でありキューに嘘をつきたくないという気持ちの表れ。
とはいえ本当に、今回は罰することはしない。
何故ならば、キューの話を聞く限り…襲われたとかも問題なのだが、根本はそこじゃないからだ。
261
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる