神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました

下菊みこと

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酷い仕置きをしてしまったとは、さすがに言えない

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キューから託された手紙とウサギの編みぐるみを、ベッドから起き上がれない彼の元へ届ける。

「やあ」

「ゴッドリープ様!」

「おっと、無理をしてはいけないよ。まだ横になっているんだ」

「は、はい」

起き上がれないのに無理をしようとするのを止める。

普段はオレの側仕えをしている彼は、甲斐甲斐しくキューを守ってくれたボディーガードを世話している。

「何か不足や不満はないかな。療養に専念できているかい?」

「はい!」

「一刻も早く治すんだよ。キューが心配しているから」

「キュー様が…」

背中に隠し持っていた手紙と編みぐるみを出す。

「ほら、キューがお見舞いのお手紙をくれたよ」

「!」

「それと、二人のためにウサギの編みぐるみも。ボディーガードの君がグレーのウサギさん、そっちの君はオレンジのウサギさん…だってさ」

渡された編みぐるみに感動の涙を流す二人。

この光景、懐かしいなぁ。

自立してしまったあの二人もクマをもらって泣いてたっけ。

「ほら、手紙も読んであげておくれ」

涙が止まらないまま、それでもキューの手紙を読むボディーガードの彼。

止まらなかった涙が、むしろ勢いを増して滝のように流れる。

「思えば嫌なことばっかりだったけど…生きててよかったぁ…う゛ぅぅぅぅ…」

そんなに感動的な手紙だったのか。

ちょっと興味をそそられるが、キューに嫌われたくはないので覗き見はしない。

「よかったなぁ」

「よかったよぉ…」

グズグズいう二人に涙を拭いて鼻をかむよう促す。

大分気持ちがすっきりしたらしい二人は、泣いたばかりだというのにさっきよりずっとイキイキした表情。

「ゴッドリープ様、自立の目処が立つまではずっとずっとキューケン様を守らせてください」

「もちろんいいとも。そのためにもはやく治すんだよ」

こくりと頷く彼に満足する。

「いい子だ。何度も言うけれど、妹を守ってくれて本当にありがとう」

「いえ」

「君には本当に感謝してる。これからもよろしくお願いね、二人とも」

「はい!」

「お任せください、すぐに治して復帰します!」

二人の決意に満ちた目になんだか微笑ましい気持ちになってしまうが、これ以上邪魔をするのもどうかと思い部屋を出る。

「…さて」

キューの手紙と編みぐるみを渡す役目は終わった。

が、まだキューの待つ部屋には戻らない。

クリンゲのいる座敷牢に向かった。

「…ぁー」

クリンゲは、キューが目を覚まして冷静さを取り戻したオレがやっと報告を受けた頃にはすでに暴走した熱心な教徒に壊されてしまっていた。

数々の拷問を受けたらしい。キューには敵わないとはいえ、とても美しい娘だったのにもう見る影もない。

ざまぁみろと思う自分と、可哀想に思う自分とがせめぎ合う。

別にオレはなんの命令も出していないし、責任なんて微塵もないはずだけれど…なんとなくもやもやする。

きっかけがオレ自身だからだろうか。

「クリンゲ」

「ぅー?」

「君はどうしたい?どうされるのがお望みかな」

キューを殺しかけた娘。

キューに本気で殺意を向けた娘。

けれどここまで完膚無きまでに壊されたのなら、もう罪滅ぼしは十分だろう。

とはいえここまで壊れた娘を引き取る先もない。

このまま座敷牢に繋ぐか、息の根を止めてやるか…あるいは。

「…クソギツネ、いる?」

視界の端にふわっと黄色い尻尾が見えた。

「この娘、欲しい?」

意図が伝わったのか否か。

クリンゲはオレの目の前から消えた。

いつもの尻尾と一緒に。

「神隠しされれば、これ以上キューの仇討ちという名目で壊されることはないだろう」

あの娘はキューを傷つけた相手なのに、オレもまだまだ甘いなぁと思いつつ誰もいない座敷牢を後にした。

その後座敷牢が空だと教徒たちの間で騒ぎになったが「全ては神の思し召しだよ」と言って落ち着かせた。
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