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兄弟子

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「ユベール」

「なに?オノレ」

「公爵家の姫君は、俺たち妾の子にも優しいな」

「まだ小さいし理解してないんじゃない?」

「いや、年の差五つよ?」

「五つも離れてれば十分でしょ」

ユベールはつまらなそうに足を組み替えた。

「オノレと俺にとっては都合はいいけどね。自分達の知識が間違ってないか彼女へのレクチャーで再確認できるし、まだ理解していないのか馬鹿にしてこないし」

「そうだな。可愛いしな」

「…まあ、顔立ちは整ってるけど。人の趣味はとやかく言わないけど、婚約者がいる相手だからね」

「そういう意味じゃない。子供らしくて愛くるしいって意味」

「本当?オノレならあり得る」

「お前俺をなんだと思ってるの?」

オノレが魔法でユベールの顔の真横に氷柱を突き刺す。

「おお怖い」

「俺に幼女趣味はないから。…冗談抜きで、お前も少しはニノンと仲良くしろよな」

「嫌だよ、面倒くさい。仲良くなっても、いつかは出自が理由で嫌われるのに」

「まあ否定はできないけど、そのまま懐いてくれる可能性はあると思うよ?」

「いらない」

ユベールは突き放す。オノレはそれ以上何も言わなかった。
















「…は?なんて言った?」

「だから、私孤児院出身なの」

ある日、オノレとユベールはニノンの口からその人生を語られた。ニノンが小さい頃の思い出話を振られて、正直に答えたのだ。

「孤児院で拾われて、育ててもらって。貧しい孤児院だったからいつもひもじかった。でも、みんな優しくて仲良くて楽しかったよ」

「え、は?」

「そしたらパパが迎えにきてくれたの。病院で極めて近しい親族だって結果が出て、親子だって証明されてこの屋敷にきたよ。それでね、それから毎日がすごく変わったの!」

「ニノン…ニノンは親に捨てられたわけじゃないよな?」

「身代金目的で誘拐されて、足がつかないよう捨てられたんだって」

ユベールは顔を青くする。自分のことのようにショックを受けていた。

「ニノン、よく頑張ったね」

オノレは今にも泣き出しそうな顔でニノンの頭を撫でる。妾の子として蔑まれ、下手に魔力を発現したため苦労してきたオノレとユベール。幼いニノンの心がどれほど傷ついたかと考えると胸が痛かった。

「ニノン…ごめん。苦労知らずの箱入り娘だと誤解してた」

「俺も同じく。ニノン、ごめん」

頭を下げるオノレとユベールにニノンはにっこり笑った。

「孤児院も、貧しかったけど幸せだったよ!だから大丈夫!パパも迎えにきてくれたし!」

「ニノン…」

「オノレとユベールにも会えたし!」

「…っ!」

ユベールはニノンをきつく抱きしめる。ニノンも優しく抱きしめ返した。そしてそんな二人を包むようにオノレも腕を広げて二人を抱きしめた。
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