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聖女の本音

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「見えるようになった…」

聖女は一人、部屋で呟いた。

「外には出られないけれど、これで思う存分物語の世界に入り込める」

聖女の瞳には希望が満ちていた。

「聖王猊下が今度来てくれた時には、目を見てお礼を言える」

聖女は腕を組んで祈る。

「神様。貴方様を何度恨んだかわかりませんが、聖王猊下とニノン様との出会いだけは心から感謝致します」

その声は、穏やかで優しかった。









聖女は、元は平民の両親の元に生まれたなんの変哲も無い少女だった。しかし、ある日突然虹の瞳を発現したのだ。

「お父さん、お母さん、真っ暗で怖いよー!わーん!!!」

泣き叫ぶ彼女に、両親は何もしてやれない。それどころか、中央教会に聖女として引き取られることが決まりそばにいることさえ出来なくなった。

「お父さん、お母さん!私行きたくない!お父さんとお母さんと一緒に居たいよぅ!!!」

聖女の叫びも虚しく、彼女は中央教会の深部、魔方陣の部屋に軟禁された。彼女の目の代わりになるのは一番年長で優しいシスター。しかし、聖女にとっては何の慰めにもならない。

「…うう」

毎日ただ泣いて過ごした。そんな聖女の元に、一人の老人がやってきた。

「聖女や、どうかそんなに泣かないでおくれ」

「…誰?」

「聖王じゃ。ロマンと申す」

「聖王猊下?なんでここに?」

「暇じゃろうから話し相手になろうと思っての。今日は仕事が早く片付いたからの」

そう言って聖王は、聖女の頭を撫でた。

「お主は本当に良く頑張ったのぅ。暗闇の中で独りぼっちで生きるのは辛かろう?しかも、こんな幼いうちから虹の瞳を発現するなど。だがお主の存在のおかげで、我が国、我が教会はこれからも存続できる。感謝しておるよ」

優しい言葉に、また涙が溢れ出す。だが、これは先程までのただ悲しい涙ではなかった。

「…う、うえーん!!!聖王猊下ー!!!」

「よしよし、本当に良く頑張った。偉いのう、偉いのう」

この日以降、不定期にではあるが聖王は聖女の元へ通ってくれるようになった。聖女にとって聖王はいつのまにか、三人目のお祖父ちゃんのような存在になっていた。














「聖王猊下、来ないかな」

聖女が小説を読みながら待っていると、部屋のドアがノックされた。

「…はい」

「わしじゃよ。入るぞ」

聖王が聖女の部屋に入る。聖王は聖女に微笑んだ。

「眼鏡型マジックアイテムを着けて、目が見えるようになったんじゃろう?おめでとう」

「聖王猊下、あの…いつもありがとうございます!こうして、面と向かってお礼を言いたかったんです」

「そうかそうか。本当に良い子じゃなぁ。どれ、今日は一緒に本でも読んで過ごそうか」

「はい!」

こうして、穏やかな時間が過ぎていった。
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