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番外編
リーゼロッテの誕生会 4
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女性陣の思わぬ言動、そして行動に驚いていたら、エミリア様を怯えさせてしまっていた。
何足る失態。ワインをかけてくる人間なんて稀少な存在だと思っていたのにここにいた。
魔法で防ぐことも出来たけれど、この方々にご退場いただくにはこれが一番かと思って咄嗟にエミリア様の代わりにワインを被ったけれど、こんな人前で肩を抱き寄せてしまった。
これはワインありきで生まれた距離感たからだなんて、心の中で言い訳しながら、平静を装って尋ねた。
「エミリア様。大丈夫ですか?」
「は、はい……」
俺は恐る恐る瞳を開くエミリア様を眼前に、頭に浴びたワインなんかどうでもいいくらい見入ってしまった。
近すぎ無理だ。人前で何してるんだ俺は。
無事を確認できたので、俺は稀少な存在であるワインの令嬢へ向き直った。三人とも、気まずそうに固まっていた。
「ワインは人にかける為のものではありませんよ」
「手、手が滑ってしまっただけよ。ごめんあそばせっ」
「そうでしたか。それは失礼いたしました。誰にでも間違いはありますよね。ですが、二度目はありませんので、覚えておいてくださいね」
「…………」
三人とも俺から目を反らした時、先輩がこちらへ駆けて来て、俺の頭に布を被せてくれた。
「大丈夫ですか? リオン様っ。――こらっ。コルネ。謝りなさい」
やはり、三人のうちの一人、唯一ワインを手にしていても溢さなかった令嬢が先輩の妹だった。
「も、申し訳ございませんでした」
「君達もほら。リーゼロッテ姫がご立腹だからな」
「えっ。もういらしてますの」
壇上の特等席にリーゼロッテ姫は座り、目の前の貴族に挨拶しながらも、こちらに満面の笑みを向けていた。
それを見ると、三人とも顔を青くさせて俺に頭を下げ、近衛騎士に案内され会場から静かに追い出されて行った。
「はぁ。最悪だな。何であんなじゃじゃ馬どもと妹は仲がいいのだろう。リオン様、大丈夫ですか?」
「はい。服は防水ですし、髪は拭きましたので。それより、私ではなくエミリア様に謝罪して欲しかったですね」
「エミリア様はあちらでお話し中のようですから、後日、謝罪させてください」
「へ?」
振り向くとエミリア様はいなかった。テーブルの向こう側で、どこから来たのか五人の令息らに囲まれていた。
何足る失態、本日二度目。
こういう時は、男性陣の足元に火を放って……。
違う。それはゴロツキに囲まれた時の対処方だ。
などと考えていたら、楽団が演奏するダンスの曲が会場に流れ始めた。
リーゼロッテ様は兄としか踊らない。しかし、毎年誕生日会に兄は呼ばれていないので、曲が流れたら招待客達が自由に誘い合い踊るそうだ。
エミリア様へも男性人の手が伸びていた。いても立ってもいられなくなり駆け出そうとした時、後ろへと腕を引かれた。
「リオン様っ。護衛ですよね。ダンスは見守ってらした方が……」
「ちょっ……。先輩、離してください。ダンスはしません。ですがエミリア様のドレスには、エミリア様のお父様と従者の方、それから、俺以外には触れられないように魔法がかけてあるんです。ですから、周りの方の安全を守るためにも止めてきますっ」
「えっ……。そんな魔法までかけてるんですか? リーゼロッテ様の独占欲は凄いですね」
「……はい」
俺が勝手にかけた魔法だとは言えないけれど、先輩は勝手に納得してくれた。俺はエミリア様のところまで走って、俺より背の高い男性陣の輪の中に無理やり割り込んだ。
「エミリア様。お待たせ致しました」
エミリア様は俺の手を取り微笑むと、スカートを摘まんで淑やかに会釈した。
「折角ですから、一曲ご一緒しましょうか?」
「は……はい」
男性陣は散って行き、俺は誘われるがまま一曲踊ることになった。
いや、誘ったのは俺になるのかな。
あれ。俺、ダンスなんて踊れたかな。
小さい頃、習った記憶がうっすらあるだけで……。
何足る失態、三度目。ダンスの予習をしておけば良かった。
何足る失態。ワインをかけてくる人間なんて稀少な存在だと思っていたのにここにいた。
魔法で防ぐことも出来たけれど、この方々にご退場いただくにはこれが一番かと思って咄嗟にエミリア様の代わりにワインを被ったけれど、こんな人前で肩を抱き寄せてしまった。
これはワインありきで生まれた距離感たからだなんて、心の中で言い訳しながら、平静を装って尋ねた。
「エミリア様。大丈夫ですか?」
「は、はい……」
俺は恐る恐る瞳を開くエミリア様を眼前に、頭に浴びたワインなんかどうでもいいくらい見入ってしまった。
近すぎ無理だ。人前で何してるんだ俺は。
無事を確認できたので、俺は稀少な存在であるワインの令嬢へ向き直った。三人とも、気まずそうに固まっていた。
「ワインは人にかける為のものではありませんよ」
「手、手が滑ってしまっただけよ。ごめんあそばせっ」
「そうでしたか。それは失礼いたしました。誰にでも間違いはありますよね。ですが、二度目はありませんので、覚えておいてくださいね」
「…………」
三人とも俺から目を反らした時、先輩がこちらへ駆けて来て、俺の頭に布を被せてくれた。
「大丈夫ですか? リオン様っ。――こらっ。コルネ。謝りなさい」
やはり、三人のうちの一人、唯一ワインを手にしていても溢さなかった令嬢が先輩の妹だった。
「も、申し訳ございませんでした」
「君達もほら。リーゼロッテ姫がご立腹だからな」
「えっ。もういらしてますの」
壇上の特等席にリーゼロッテ姫は座り、目の前の貴族に挨拶しながらも、こちらに満面の笑みを向けていた。
それを見ると、三人とも顔を青くさせて俺に頭を下げ、近衛騎士に案内され会場から静かに追い出されて行った。
「はぁ。最悪だな。何であんなじゃじゃ馬どもと妹は仲がいいのだろう。リオン様、大丈夫ですか?」
「はい。服は防水ですし、髪は拭きましたので。それより、私ではなくエミリア様に謝罪して欲しかったですね」
「エミリア様はあちらでお話し中のようですから、後日、謝罪させてください」
「へ?」
振り向くとエミリア様はいなかった。テーブルの向こう側で、どこから来たのか五人の令息らに囲まれていた。
何足る失態、本日二度目。
こういう時は、男性陣の足元に火を放って……。
違う。それはゴロツキに囲まれた時の対処方だ。
などと考えていたら、楽団が演奏するダンスの曲が会場に流れ始めた。
リーゼロッテ様は兄としか踊らない。しかし、毎年誕生日会に兄は呼ばれていないので、曲が流れたら招待客達が自由に誘い合い踊るそうだ。
エミリア様へも男性人の手が伸びていた。いても立ってもいられなくなり駆け出そうとした時、後ろへと腕を引かれた。
「リオン様っ。護衛ですよね。ダンスは見守ってらした方が……」
「ちょっ……。先輩、離してください。ダンスはしません。ですがエミリア様のドレスには、エミリア様のお父様と従者の方、それから、俺以外には触れられないように魔法がかけてあるんです。ですから、周りの方の安全を守るためにも止めてきますっ」
「えっ……。そんな魔法までかけてるんですか? リーゼロッテ様の独占欲は凄いですね」
「……はい」
俺が勝手にかけた魔法だとは言えないけれど、先輩は勝手に納得してくれた。俺はエミリア様のところまで走って、俺より背の高い男性陣の輪の中に無理やり割り込んだ。
「エミリア様。お待たせ致しました」
エミリア様は俺の手を取り微笑むと、スカートを摘まんで淑やかに会釈した。
「折角ですから、一曲ご一緒しましょうか?」
「は……はい」
男性陣は散って行き、俺は誘われるがまま一曲踊ることになった。
いや、誘ったのは俺になるのかな。
あれ。俺、ダンスなんて踊れたかな。
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何足る失態、三度目。ダンスの予習をしておけば良かった。
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