華の運命

夜ト

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名前の重み、誓い、怒り

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「ーっ、いいのっ」
「僕が渡した、そして君は受け取った…もう性奴隷なんかじゃない、優季はこれから普通の人間に戻れるんだよ」

これでいいんだよね…コレは母が僕にくれた奴隷開放の手段だが、華にはこの手段は効かない、華は主からの開放がなければ開放出来ない。
母もコレを帝から貰った時は性奴隷だった、性奴隷から華に格上げされるべき、ロケットネックレスを受け渡された。
そのせいで、僕という子供が生まれてしまったが…。

「君はまだ華ではないんだよね、なら開放されたんだ」
「ーっあっ、名前…」

優季が不安と絶望的な光景を思い浮かべて、カタカタと震える。
名前は奴隷や性奴隷、肉体奴隷には付けられない、華のみが名前を付けられて主のペットになる。
今夜優季は雪音により、名前を付けられて呼ばれた。

「あぁ、アレか…性奴隷だったんだ…身寄りも無いんだよね、僕の世話係にならない」
「ペットという事…ですか」



「ペットがペットを飼うーっ」

クスックスッと笑い出す雪音に優季がきょとんとした顔をする。
雪音はお腹を抱えて今にでも笑い転がりそうだが、どうにか保っていると微かに遠慮がちにノックの音と共に声が掛かる。

「雪ーっ、いる」
「硝華入っていいよ」

今までとは雪音の雰陰気が変わる、今までとは違い愁いがあり嘗めやかで可愛い感じになる、先程までの冷たく悪戯そうな悪意に満ちた笑みではなく、易しく今にでも消えてしまいそうな顔に、イヤ姿も違う…先程までは厳つい威厳がある姿をしていたのに、今は支えが無ければ立っていられない様な感じが伝わってくる。



「雪ーっ…聞いたよーっ、ダメじゃないかっあんな人前でーっ何て事をしたのっ、あれっ君は…」

ふとっ雪音の後ろに居た優季に気付いた様に、硝華が顔をしかめる。
硝華が腰に手を当て、深い吐息を付く優季の手に握られているネックレスの意味を雪音に教えたのは硝華だ、顔色も悪かるのは当然の事。

「ソレ、渡したの」
「うん…性奴隷なんて間違ってる」

奴隷と呼ばれている者達が何れだけの犠牲に成っているか、考えるだけで背筋が凍る。
雪音がぎゅっと優季の手をとる、本来は忠誠を誓う為に下の身分がやらなければならない誓いの方法を唱える。

「我、君に名を授け優季を大切にしょう」

ちゅっと優季の手の甲に口付ける、硝華があわてて優季を雪音から放す、雪音は帝のもの。
本来なら触ることは愚か、話す事も目を合わす事も禁じられている尊い存在。

「嶺嗣様に知られたら…」
「…怒るだろうね」



「雪音ーっ、雪音は居るかーっ」

ドダドダッと廊下を音を鳴らし、早歩きで大声で呼ぶ声が中庭の後宮に響き渡り、御付きの者や護衛、執事やメイド達が顔色を変える。
帝である嶺嗣は普段から厳しく躾けられて、帝王学などで立ち振舞いやマナーを学んできた人物だ。
それ故に怒りを、表にし華であるペットを呼びつけていれば誰でも最悪な事を考えるだろう。

「ーっ」
「雪音様…大丈夫でしょうか」

雪音が口元を拭い、ゆっくり立ち上がり帝の元に向かう。
このまま叫び続ければ変な噂が立つだろう。
雪音は覚悟をして、震える身体を奮い正して、足を早める。

「…み、嶺嗣様…御呼びでしょうか」
「優季と名付けていたな、アレを渡したと聞いたが誠か」

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