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09 熱い想いが膨らんで騎士に会いたくて夜まで待てない

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「アーロンっ……あっ、あっ、あっ」

「セシリア様、セシリア様」

「あああっ、だめえぇぇぇっ」


 パッ。
 アーロンが私の胸から手を離した。

 先代王妃が使っていた長椅子に並んで腰かけて少し話をしてから、彼は私に覆い被さり、いつものように胸を揉みしだいていた。

 けれど名前を知ったあの夜から、彼は私を魔女とは呼ばなくなった。相変わらず、淫乱やら爆乳やらと下品な言葉を浴びせて私を興奮させてくれるけれど、魔女だけはその口から出てこない。

 彼はなんでも答えてくれるので、弾む息を整えながら胸を押さえて聞いてみた。


「……はぁ、……アーロン……貴方なぜ、私を、魔女と呼ばなくなったの……?」

「悪口だからです」


 やっぱり、素直に答えてくれる。
 彼は隣でじっと座ったまま、顔だけこちらに向けていた。いつもそうして、私が落ち着くまで見守っていてくれるのだ。


「でも……い、い、……いやらしい事を言うじゃない……」

「悦ぶから」

「えっ」

「言うと貴女は悦ぶし、本当の事ですから。貴女は淫乱な爆乳王女です」


 そんな、キリッと言い切らなくても……
 でも少し、火照ったままの体が反応しちゃう。


「これは悪口じゃありません。貴女の美しい肉についての最上の誉め言葉です」

「肉……ッ!」


 体ではなく、肉。
 甘美な響き。
 
 せっかく落ち着いてきた息がまた上がって、心臓がこれでもかと早鐘を打つ。
 

「俺は蔑みから貴女を罵った事はありません。貴女は女神です。適齢期は過ぎているといっても、その白くてモチモチの肌は吸い付くようで甘い。それに、最近は明るい表情をされるようになって、一層美しくなられました」

「……ほんとに?」

「はい。大きな目が潤んでいるととても愛らしくて、唇はサクランボみたいに瑞々しくて。長い髪も素敵です。汗をかいて俺に泣きついてくるときなんか、もう……」


 ピクッ。
 
 それまで脱力して座っていたアーロンの膝が、痙攣したかのように跳ねた。
 腿の上に置かれていた手が、わなわなと、わなわなと持ち上がる。


「ア……アーロン……?」

「……はぁっ、はぁ、俺は……俺はまだ貴女の乳を揉みたくて仕方ないッ!」

「アーロン!」


 咄嗟に身構えたけ。
 気怠い熱に支配されているこの体では、長椅子から立ち上がる事さえままならない。


「あぁ……今日はもう……っ」

「胸だけじゃない。本当は尻だって揉みたい。っていうかいい加減、素っ裸にひん剥きたいッ!」

「ああっ!」

「生の爆乳が見たいんじゃあぁぁっ! セシリアの生乳ぃぃィッ!!」

「いやあぁっ!」


 卑猥な脅しが私の体を熱くしならせる。
 

「でもッ! ……我慢だぁ……ッ!!」

「ア、アーロン……?」


 彼は深い呼吸を繰り返し、暗く高い天井を仰いで瞑想に入った。
 そして彼が瞑想から帰ってくる頃には、私もすっかり落ち着いていた。私は人に見られないところまで彼に送ってもらい、自室に戻って、眠れない夜を過ごしたのだった。



 しかし。
 目が覚めても、アーロンの事が頭を離れない。
 
 そして私はついに、暗黙のルールを破る決意をした。

 マントを羽織り、騎士の宿舎へと向かう。
 彼は夜警。この時間なら、寝ているはずだ。
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