「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。

百谷シカ

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7 理想の妻との運命の出会い

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 みゅ、ですって?
 それは普通の文脈でいうところのどれに該当するの? 名詞? 動詞? 形容詞? 形容動詞? ……目的語?


「こんな事って、奇跡だよ! クソつまらない婚約は君と出会う為だったんだ! ああ、ああ……ユリアーナ! 君とは離れられない!」


 盛り上がってきたわ。
 次は何? みゅ? きゅ? でゅ?


「……ッ」

「……」

「……」


 何も言わないのね。
 そういう手もある。


「!」


 その時、私は、見つめあう号泣中のユリアーナと興奮中のベリエスを交互に見遣りながら、とてつもない脅威がそこにある事に気づいた。


「(ユリアーナ、待って)」

「……」

「……」


 見つめ合う二人に私の声は届かない?


「(ユリアーナ)」

「……」

「……」


 二人の世界を崩壊させる脅威について、私は報せなければならない。
 やや強引にユリアーナの手を引いた。

 ユリアーナはくるりとふり向きベリエスには背を向けて、大粒の涙を零しながら噛みつきそうな近さで私を睨んだ。


「(駄目よ、お姉様。今更惜しくなったってこれは私の計画なんだから!)」

「(鼻毛が出てる)」

「あ゛あッ! いっけませんわ、ベリエス様! 私がおねえたまの愛しい人を奪って結婚するなんてヘッ! しょんな罪深いきょとほッ!」


 泣き崩れ跪き這い蹲って号泣するユリアーナを抱き起こし、姉妹らしく親密に宥めるふりで鼻毛を抜いた。


「痛ぁ゛いッ!! 痛いわ胸が張り裂けちゃう……っ」


 それは、鼻の、穴の、話ね。

 心から流れたと思われるユリアーナの涙を拭くためではなく、同じ顔の他人の鼻毛を抜いた私の指を拭くために、袖に押し込んだナプキンを引っ張り出す。そして拭いて、前後の整合性を保つためにユリアーナの頬も拭いた。


「(覚えてろ)」

「(今夜、泣き方を教えてくれない?)」

「(ヒィヒィ言わしてやる)」

「(ありがとう)」

「なんて優しい子だ……こんなに感情豊かでこの美貌……っ、ユリアーナ……嗚呼ユリアーナ!」


 ユリアーナを挟んで跪いたベリエスが、ユリアーナの肩を掴んでぐるりと回して引き寄せた瞬間、ユリアーナは人間の壁を越えた。


「とぅうんッ!」


 もしかして擬音?
 心とは直結していない系?


「ユリアーナ、聞いてくれ。どうか泣かないで。僕たちは別れたりしないよ」

「おねえたまとけっこんちゅるの?」


 ベリエスの笑顔が弾けた。


「違う! 僕は君と結婚するのさ!」

「本当ですかぁ?」


 ユリアーナの笑顔も弾けた。
 瞬間的に涙も止まった。お見事。


「君こそ僕の理想の妻だッ!」

「嬉しいですぅ! キャハッ☆彡」

 
 嵐に怯える鳥みたいな声でも、あなたはいいのね、ベリエス。
 別れてみると、とっても面白い人。


「じっと見るな! 亡霊か、君は。まったく気味が悪いったらない。いいか? 君の時代は終わったんだよ! 失せろ!!」

「……」

「ベリエス様ぁ~♪」


 ユリアーナ、ゆっくり殺して。
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