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6 見過ごせない脅威

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 玄関広間はしんと静まり返っていた。
 ユリアーナは驚愕した様子で足を止めた。それから指を奇妙に動かして、憤慨を現した。


「嘘でしょう……帰っちゃったじゃない……!」

「大丈夫よ。自分からした婚約破棄に恍惚として、ゆっくり屋敷中を練り歩いてせせら笑っているところ」

「冗談も大概にして」


 怒りで声が震えているわ。


「あ゛あッ!」


 野太い声を発して、自ら額を打ち付けている。
 私にはない選択肢を次から次へと──


「なぁんだ、エルミーラじゃないか!」


 廊下の曲がり角からひょっこり獲物が現れた。


「ハッ!」

「(ほら、いた)」


 驚く我が双子の妹ユリアーナに、私は、隣で、微動だにせず、もったいぶって囁いた。唇も動かさずにね。……たまに声に出すのを忘れるけれど、平気。声に出したところで半分は全否定が返ってくるもの。姉妹ってそういうもの。

 
「ハッハッハァ~♪ 残念だったねぇ、期待外れのお人形さん。もしかして二人並んでるのか? あ、そうか。君らが隠してた病弱な妹だなぁ? 同じ顔だ。双子って初めて見たよ。でもその顔は見飽きた。うんざりだ! 婚約破棄して清々したよ!!」

「うきゅっ」


 ────。
 
 え?


「えっ?」


 私の代わりに元婚約者が声に出した。
 思いが通じるには遅すぎというものよ。


「婚約を……っ、破棄ですって……!? おっ、おねえたまと……ッ!?」


 おねえたま?
 懐かしの幼児化?

 それに声がいつもの3倍、高い。


「あ、ああ……っ」


 ベリエスが狼狽えている。
 先手必勝ね、ユリアーナ。よくやった。


「ベリエス様ぁ」


 ユリアーナが大粒の涙をはらりと零し、身をくねらせた。
 次から次へと私にはない才能を放出している。


「もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」

「え……っ」

「せっかく、こうして……巡り会えたのに……っ」

「あぁ……っと……」

「家族になれたのに……ッ!」


 ブロークンハーツレディだわ。
 誰が見ても、美貌の双子の片割れは悲劇に打ちひしがれていじらしく泣いている。


「あ、いや、えっと……その……」


 魚は針を飲んだ。


「はぢめまちてユリアーナでしゅ……あなたのいもぉーとになるはずでちた……っ」


 私もこの声を出せるかしら。
 あとで挑戦してみよう。


「だけどこれでお別れなのね……ッ」


 まだ上が?
 どこから出ているの?

 ……妹は人間ではない?


「そんな……っ、ああ! なんて可愛いんだッ!!」


 同じ顔なのに私は一度も言われた事がな──


「みゅっ☆彡」


 みゅ?

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