無実の罪で投獄されました。が、そこで王子に見初められました。

百谷シカ

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6 元祖ひなどり

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 リーダーのマリサと。
 ライジングのヴェロニカと。
 ガーデンのルシンダ。
 そして正気のアドラシオン。

 私を仕上げた4人にポンっと部屋を追い出された。


「ふむ。綺麗だ」

「でんっ、……かぁ」


 1時間そこでお待ちだったんですか!?

 ……なんて、訊けない。
 だって、そうだったら困るし。


「背筋を伸ばしなさい」


 そう命じて殿下は歩き始めた。
 でも、私の歩調に合わせてくれている。

 私は空よりも少し白いような美しい青のドレスに身を包んでいた。
 桃色や紫なんかで調子に乗っている場合ではない。


「緊張する事はない」

「えっ、い、あ……で」

「なんだ」


 言うべきだろうか。
 
 私は、昨日は囚人。
 その前だって伯爵令嬢で、少しリーチがあるからと言っても元王女の乳母の娘。

 王家と食卓を囲むような身分ではない。


「……吐きそうです。分不相応で……」

「ふむ。父親とは違って分別があるな。実に結構」

「……」


 なにも解決しなかった。
 ドレスの締め付けと緊張で頭が真っ白な状態で、食堂に着いてしまった。

 食堂とは思えない、煌びやかな扉。


「ふむ。意外か? 我々は所謂、仲のいい親子なんだ」


 ……。

 素晴らしいけれど、それどころじゃない。


「ピッ、マダム・ピンタードも、いらっしゃるのですか?」

「いや? 食事の時は家族水入らずが信条だ」

「……」


 わ、私は? 
  
 えっ?
 ちょっと意味がわからないッ!!


「妹が会いたがっている。それに、大事な話があるのだ」

「……はい」

「皆、多忙で食事時くらいしか顔を合わせない。もし喉を通らなかったら無理はするな。部屋に運ばせればいいだけの話だ」

「……はい」

「では」


 扉が開いた。
 

「!」


 もちろん魔法じゃないってわかってる。
 向こう側から、すべてを心得ているドアマンが開けたのだ。


「す……っ」


 凄い!
 そして内装も凄い!!

 朝陽が射し込む美しい王家の食堂はもう天国そのもの!!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「その調子だ。ざっくばらんにいこう」

「!」


 慌てて手で口を塞ぐ。

 そんな私には、高貴な方々の視線が突き刺さっていた。


「父と母と妹のフェリシダード」

「……」


 眩暈が。


「まあっ」

「?」


 ガタン、とらしからぬ音がした。
 王女のフェリシダード様が、椅子を蹴散らして立ったのだ。絶世の美女と名高い、大きくて9頭身のフェリシダード様は、目に涙を浮かべて口を手で覆っている。


「……」


 見つめあった。


「ファニタ……!」


 それは母です。


「!」


 走って来た!
 脚が長いから獣並に速い!!


「ああっ!」


 高貴なお声が叫び、私は長い腕にキュルッと抱かれた。
 高貴なお胸に、私の顔が、埋まる。

 ……いい匂い。


「ファニタ……っ」


 それは母です。


「こんなに小さくなって……!!」

「……」


 泣いていらっしゃる。
 母もよく王女様の話を聞かせてくれた。御伽噺ではない、本当のお姫様のお話が、私は大好きだっ──


「あなたが大きくなり過ぎたのよ。それに、その子は娘のシエラ」


 あああああ初めてお聞きする王妃様のお声ッ!!


「シエラ……っ!」

「!」


 高貴な腕に締めあげられて、お胸にもっと押し付けられて……
 息が……


「許せ、シエラ。妹はファニタにべったりで、ひなどりさながらの幼少時代だった。フェリシダード、せめて力を緩めたらどうだ? その腕力では、死ぬぞ」

「……っ、…」


 感極まってくださっている王女が、すっと体を離した。
 そして体格に等しく、長くて美しい指で涙を拭い、大きなてのひらですっぽりと私の丸顔を包み込んだ。


「シエラ……」

「……」


 亡き母への愛に、私まで感極ま──


「継母はこのフェリシダードが討ちます」


 えっ!?
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