えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……

百谷シカ

文字の大きさ
1 / 14

1 愛の破滅

しおりを挟む
「えっ!? ……なに、してるの……?」


 麗らかな朝日の差し込む、部屋の中。
 私は幼馴染に我知らず問いかけていた。


「え?」

「あ」


 モイラのベッドで、モイラの体に巻き付いているのは、私の婚約者のレニー。
 ふたりとも、裸だ。

 脱ぎ捨てられた衣服が部屋中に散乱している。


「どういう事よ……!?」


 胸が張り裂けた。
 体がガクガクと震え、息が乱れる。

 私が戸口で震えているのを見て飛び起きたのは、モイラのほうだった。


「ちっ、違うのよ、オリヴィア! これはっ、なななななんでもないのっ!」

「……なんでもない……?」


 そんなはずない。
 だってふたりは、見るからに……完全に……そう。


「いや、あ……えっと」


 レニーが、やっと、目を擦りながらのそりと身を起こした。
 なぜか私より先に、モイラが泣き始める。


「オリヴィア……!」

「……嫌」

「オリヴィア、違うの……!」

「嫌」


 こんなの、現実なはずない。
 夢だ。
 悪い夢。
 そうでなきゃ、困る。

 私は必死で首を振った。

 でも、現実だった。


「嫌ぁっ!!」


 感情が爆発する。
 私はあれこれと泣き喚きながら、ベッドに近寄ったり離れたりを繰り返した。

 モイラがガウンを羽織って、美しい髪を乱したまま、汗と甘い匂いを纏ったまま、私を宥めに寄ってくる。それを見て、寝惚けているのかふざけているのか、レニーも私を宥めに来た。

 レニーは、裸。初めて見た。
 でも私より先に、モイラが見たのだ。


「ごめんなさい、オリヴィア。あなたを傷つけるつもりはなかったの」

「まあ、落ち着いて」


 必死に取り縋ってくるモイラ。

 でも、レニーは寝惚けているのかもしれない。
 ヘラヘラと笑って、頭を掻いている。


「えっと、ちょっと飲み過ぎて」

「はあ……?」


 悲しくて、声が掠れる。

 昨夜は舞踏会だった。
 カメロン侯爵家に招かれて、幼馴染のモイラに婚約者のレニーを紹介した。


 ──お会いできて光栄です、レニー卿。もし私の大切なオリヴィアを泣かせでもしたら、只じゃおきませんわよ。


 モイラはそう言ってくれた。
 誰よりも信頼し、愛していた、姉のようなモイラ。

 それなのに……


「ああ、オリヴィア。泣かないで。ごめんなさい」


 モイラが、いつものように、私の髪を撫でて、頬の涙を拭う。
 レニーも手を伸ばしてくる。

 悪寒が走った。


「触らないで! 気持ち悪い!!」

「!」


 レニーはぽかんとしていた。
 モイラは、傷ついたような顔をしていた。

 どうして?

 裏切ったのは、モイラなのに。


「……!」


 私は部屋を飛び出した。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

【完結】順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。〜幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?〜

よどら文鳥
恋愛
「本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ。婚約破棄してほしい」  いきなり婚約破棄を告げられました。  実は婚約者の幼馴染と昔、私よりも先に婚約をしていたそうです。  ただ、小さい頃に国外へ行ってしまったらしく、婚約も無くなってしまったのだとか。  しかし、最近になって幼馴染さんは婚約の約束を守るために(?)王都へ帰ってきたそうです。  私との婚約は政略的なもので、愛も特に芽生えませんでした。悔しさもなければ後悔もありません。  婚約者をこれで嫌いになったというわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。  しかし、後に先に婚約した内容を聞く機会があって、驚いてしまいました。  どうやら私の元婚約者は、五歳のときにおままごとで結婚を誓った約束を、しっかりと守ろうとしているようです。

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

【完結】新たな恋愛をしたいそうで、婚約状態の幼馴染と組んだパーティーをクビの上、婚約破棄されました

よどら文鳥
恋愛
「ソフィアの魔法なんてもういらないわよ。離脱していただけないかしら?」  幼馴染で婚約者でもあるダルムと冒険者パーティーを組んでいたところにミーンとマインが加入した。  だが、彼女たちは私の魔法は不要だとクビにさせようとしてきた。  ダルムに助けを求めたが……。 「俺もいつかお前を解雇しようと思っていた」  どうやら彼は、両親同士で決めていた婚約よりも、同じパーティーのミーンとマインに夢中らしい。  更に、私の回復魔法はなくとも、ミーンの回復魔法があれば問題ないという。  だが、ミーンの魔法が使えるようになったのは、私が毎回魔力をミーンに与えているからである。  それが定番化したのでミーンも自分自身で発動できるようになったと思い込んでいるようだ。  ダルムとマインは魔法が使えないのでこのことを理解していない。  一方的にクビにされた上、婚約も勝手に破棄されたので、このパーティーがどうなろうと知りません。  一方、私は婚約者がいなくなったことで、新たな恋をしようかと思っていた。 ──冒険者として活動しながら素敵な王子様を探したい。  だが、王子様を探そうとギルドへ行くと、地位的な王子様で尚且つ国の中では伝説の冒険者でもあるライムハルト第3王子殿下からのスカウトがあったのだ。  私は故郷を離れ、王都へと向かう。  そして、ここで人生が大きく変わる。 ※当作品では、数字表記は漢数字ではなく半角入力(1234567890)で書いてます。

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

魔性の女に幼馴染を奪われたのですが、やはり真実の愛には敵わないようですね。

Hibah
恋愛
伯爵の息子オスカーは容姿端麗、若き騎士としての名声が高かった。幼馴染であるエリザベスはそんなオスカーを恋い慕っていたが、イザベラという女性が急に現れ、オスカーの心を奪ってしまう。イザベラは魔性の女で、男を誘惑し、女を妬ませることが唯一の楽しみだった。オスカーを奪ったイザベラの真の目的は、社交界で人気のあるエリザベスの心に深い絶望を与えることにあった。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

ぱんだ
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

処理中です...