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2 男ってアホね
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父とハモった。
前妻の忘れ形見である私より後妻グラシアと末娘ビビアナに夢中の父と、初めてのハーモナイズ。
「式もドレスも準備万端という事なら、あとは本人の気持ち次第でしょう? ティアと婚約した時、僕はビビアナの存在すら知らなかった。留守がちだからって存在を黙っていたのはそちらの責任です」
「え……ぁ、いや」
すごい理屈。
一応あの子だってフェンテス伯爵令嬢なんだから、わざわざ私たちから説明しなくたって存在くらい知っていてよと思うけど。
というか、知らなかった事を知らなかったわ。
花嫁という主役の私を差し置いて話し続ける二人に苛ついていて、気が回らなかった。
「だからティアとの婚約は破棄します。そして帰宅を待ち、僕はビビアナに求婚します!」
アルバ伯爵はそう宣言すると、やっと私を見下ろして真顔で言った。
「そういうわけだから、婚約指輪を外してくれ」
「嫌です」
ナニコレ、どうなってんの?
お父様、なんとか言ってよ。
「大恋愛は、じきに冷めますぞ」
「言うべき事はそれなの!?」
私が拳を握りしめて叫んでも、父は溜息しか返してこない。
「結果がコレです。ちんまりとした煩い幼児体形のタダメシ食いを抱え、妻との暮らしに集中できない」
「そのちんまりとした煩い幼児体形のタダメシ食いと僕を結婚させようって言うんですか?」
「婚約を申し込んだのは君だ」
「ちょっと! 小柄で胸が小さいのは事実だけど、二人とも、あんまりじゃない!?」
アルバ伯爵がまた私を見下ろして、真顔で言った。
「黙っていてくれ。今、大事な話をしているんだ」
「はあっ!?」
今度は父とハモらなかった。
やっぱり気の合わない父とのアレは、奇跡のハーモナイズだったのかも。
「よく考えてください。こんなにおあつらえ向きな状況は滅多にありません。僕は健康で地位も名誉も財産も申し分ない」
「だから私と結婚するんでしょ!」
「君との婚約はさっき破棄した。口を挟むな」
「なんなの!? さっきから失礼よ!」
「ティア」
父も真顔で私を見下ろす。
そして尤もそうに言った。
「女が口を挟むな。これは伯爵家同士の政治の話だ」
「私を厄介払いできるって喜んでいたじゃない!」
「元気ハツラツなあどけない妻を欲しがる男はきっとまた現れる」
「言い直せばいいと思ってるの!? だいたいビビアナなんて私の数倍タダメシ食いなのにッ!!」
そこでアルバ伯爵が父娘の会話に尤もそうに割り込んできて、口に人差し指を立てた。
「シィー、シィー、シィー。ティア、お部屋に戻ってなさい」
「んもう!」
アルバ伯爵の大きな足を、力いっぱい踏んでやったわ。
「アゥッ!」
なによ。
小さいからって見縊ってくれちゃって。
涙ぐんでやんの。
痛い?
ざまぁみろ!
前妻の忘れ形見である私より後妻グラシアと末娘ビビアナに夢中の父と、初めてのハーモナイズ。
「式もドレスも準備万端という事なら、あとは本人の気持ち次第でしょう? ティアと婚約した時、僕はビビアナの存在すら知らなかった。留守がちだからって存在を黙っていたのはそちらの責任です」
「え……ぁ、いや」
すごい理屈。
一応あの子だってフェンテス伯爵令嬢なんだから、わざわざ私たちから説明しなくたって存在くらい知っていてよと思うけど。
というか、知らなかった事を知らなかったわ。
花嫁という主役の私を差し置いて話し続ける二人に苛ついていて、気が回らなかった。
「だからティアとの婚約は破棄します。そして帰宅を待ち、僕はビビアナに求婚します!」
アルバ伯爵はそう宣言すると、やっと私を見下ろして真顔で言った。
「そういうわけだから、婚約指輪を外してくれ」
「嫌です」
ナニコレ、どうなってんの?
お父様、なんとか言ってよ。
「大恋愛は、じきに冷めますぞ」
「言うべき事はそれなの!?」
私が拳を握りしめて叫んでも、父は溜息しか返してこない。
「結果がコレです。ちんまりとした煩い幼児体形のタダメシ食いを抱え、妻との暮らしに集中できない」
「そのちんまりとした煩い幼児体形のタダメシ食いと僕を結婚させようって言うんですか?」
「婚約を申し込んだのは君だ」
「ちょっと! 小柄で胸が小さいのは事実だけど、二人とも、あんまりじゃない!?」
アルバ伯爵がまた私を見下ろして、真顔で言った。
「黙っていてくれ。今、大事な話をしているんだ」
「はあっ!?」
今度は父とハモらなかった。
やっぱり気の合わない父とのアレは、奇跡のハーモナイズだったのかも。
「よく考えてください。こんなにおあつらえ向きな状況は滅多にありません。僕は健康で地位も名誉も財産も申し分ない」
「だから私と結婚するんでしょ!」
「君との婚約はさっき破棄した。口を挟むな」
「なんなの!? さっきから失礼よ!」
「ティア」
父も真顔で私を見下ろす。
そして尤もそうに言った。
「女が口を挟むな。これは伯爵家同士の政治の話だ」
「私を厄介払いできるって喜んでいたじゃない!」
「元気ハツラツなあどけない妻を欲しがる男はきっとまた現れる」
「言い直せばいいと思ってるの!? だいたいビビアナなんて私の数倍タダメシ食いなのにッ!!」
そこでアルバ伯爵が父娘の会話に尤もそうに割り込んできて、口に人差し指を立てた。
「シィー、シィー、シィー。ティア、お部屋に戻ってなさい」
「んもう!」
アルバ伯爵の大きな足を、力いっぱい踏んでやったわ。
「アゥッ!」
なによ。
小さいからって見縊ってくれちゃって。
涙ぐんでやんの。
痛い?
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