近衛隊長のご馳走は宰相閣下

東院さち

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 散々私の言葉をあれだ、これだといいながら眉間に口付けを落としていた男が、急に無口なったかと思うと、顔のあちこちに触れるだけの口付けを降らせ始めた。

「どうした?」
「ん、いや・・・・・・。やっぱりおまえはリチャード様のためならなんでも出来るんだなと思っただけだ」

 やけに切ない瞳で見つめてくるが、意味がわからない。

「なんだ、リチャード様に焼きもちか?」

 茶化すだけのつもりだ。それを素直に頷くこいつに多少の愛らしさを感じる。
 馬鹿だなぁという、そんな愛らしさだ。腹筋も背筋もゴリゴリに割れている男に可愛いなんて言葉は似合わないけどな。

 上から見つめる男に手を伸ばし、顔を寄せてきたから、褒美のつもりで軽く口付けてやった。
 ブルっと武者震いのように身体を震わせた男の何に火をつけたのか、臨戦態勢になった男の証が私の身体に触れた。

 熱さに、焼かれそうだ――。

「好きなんだ――、好き――、好きだ」

 私を寝台に縫い留め、男は想いの全てを私にぶつける勢いで口付けてくる。

 苦しくて、男の胸をドン! と叩いても、男の舌は私に絡みつき、交わるように蠢く。

「もうっ、止めろ――っ」

 自由にならない手は握りしめられていて、じっとりと汗を掻いていた。

「止めろは、もっと――っていう意味ってわかってる――?」
「意味は――っん・・・・・・っ」
「反対の言葉でって言ったろ――?」

 そう言えばそんなことを言っていたなと、空気が薄くなってぼんやりした頭の中で思い出す。

「も、もっと――っ!」

 ならば、もっとしてくれと願えばいいのかと、閉じていた目を開けた先に嬉しそうな男の顔があって、本当に止めてくれるのかと疑問を感じた。

「何だか嘘でも求められているようで、嬉しいもんだな」

 もう、この男の口を閉じさせたい。吐きそうだ、甘すぎて砂をザーッとバケツ一杯に。

 私の嫌そうな顔を撫でる手がありえないほど優しくて、「ん・・・・・・」と声を漏らしてしまった。

「ここに俺を挿れる――」

 腹を抱え、私をうつ伏せの状態にして腹の下に枕を入れられる。

「後ろからか?」
「ああ、本当はお前の綺麗な顔を見ながらやりたいんだが、最初はこっちのほうが楽らしい。辛くなったら言えよ。いくらでも支えてやる」

 筋肉は伊達ではないようだ。

「ああ――」

 処女と関係したことがあるが、面倒くさいというのが本音だった私は、自分もきっと処女膜はないものの面倒だろうなと思う。

 指が油を纏ってもう一度確かめるように入ってくる。

「苦しくないか?」

 二本の指は中で開いては閉じて、抉るように突き入れたかと思うと回された。

「何か・・・・・・っ、変だ」

 慣れた様子で私の胸と尻を同時に弄り、背中に口付けを落とす男の手際の良さに少々思うところがないわけではなかったが、段々と指の動きに中が変化していくのがわかった。

「そろそろ・・・・・・だな」

 私の変化を感じた男は、タイミングを逃すものかと私の尻を左右に割った。思わずシーツを掴んだ私に「大丈夫だ、ほぐれているから」と言う。

「いくぞ」

 熱く滾る灼熱の棒をゆっくりと、私の中に埋めていく男の動きは緩慢で丁寧だった。
 私が乙女であったらなら、大事にされていると感じるほどに――。

「くっ! ・・・・・・まだ?」

 腹が圧迫されて苦しい。ズッズッ! と入ってくる男のモノは、決して小さくはない。というか、大きい・・・・・・。

「あっああ! これで・・・・・・全部だ」

 密着した身体が、それを知らせてくれた。孔が一杯に広がって、ドクンドクンと中で脈打つのが男の全てだった。

「動いていいか――?」

 主導権はあくまで私のようだ。いっそ自由にしてもらったほうが、私の精神的には楽なような気がする。

「あっ、やだ――。動くな・・・・・・っああ!」

 反対の言葉というのはいい加減止めたい。が、これが課題だと言われると何がなんでもやってのけてやると、燃えてしまうのは優等生を演じてきた性だろうか・・・・・・。

「フフッ」

 ご機嫌な男の笑いが、背後から聞こえる。私が自分の言うとおりにやっていることが嬉しいのだろうか。

「あ、ああっ、や・・・・・・そこ、嫌だ――」

 男は、筋肉もりもりのくせにゆっくりとねちっこい。どんな顔してやがるんだと、振り向いたら、凄い気持ちよさそうな顔にどうした? と心配げな顔を覗かせた。

「んぅ、あ・・・・・・」

 どんなに私を想っているのかわかるその顔に、私の腹がキュウと収縮をする。

「煽るな――」

 煽ってなんかない、ただ、感じただけだ。言わないけど。

「そこばっかり・・・・・・、お前はでくの坊か――」
「だって、お前、気持ちよさそうだから。なら、もっと奥いくぞ」

 私の尻を引き寄せ、更に奥を目指すのか男の腕に力が入る。勃ち上がった私の男は、手によって刺激を受けて張り詰め始めている。

「気持ち・・・・・・よくない――」
「俺は気持ちがいい――」

 ビクッと震えが走る。

「奥、奥・・・・・・だめ――!」

 それ以上はいったらだめなところだと、思う。ガクガクと震えて、最早自分の身体を支えることすら出来ない。崩れ落ちたが腰だけは立派な二本の腕が支えている。

「それは・・・・・・どっちなんだ?」
「あっ、あ、あ・・・・・・っ!」

 男は私を虐めたいわけではないようで、私が切羽詰まって出した声を正確にとらえた。
 それ以上奥は進まず、反対に浅い所を何度も突いてくる。

「誘い込むようだ――、なぁ、名前呼べよ」

 独白のような呟きは無視して、私は今得られる恐ろしい位の快感に耐えていた。

「名前、呼んでくれないのか?」

 背中に口付けを落としながら男は名前名前とうるさい。

「今忙しいから、無理――」
 
 ククッと笑う男の余裕が憎たらしい。私はもう、一杯一杯だというのに。

「そっか、今忙しいのか。手伝おうか?」
「いえ、騎士殿にお手伝いなど申し訳ないので・・・・・・うっ・・・・・・あ」
「遠慮されると、やってやりたくなる男心をお前は知ったほうがいいと思うな」

 歌うように男はそう言った。そして私の身体を筋肉で持ち上げた。

「あっ! や・・・・・・っ! ああっ! あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 男に背中を預ける形で男の膝の上に乗せられた。いきなり体勢が変わったせいで、私はあっけなく達ってしまった。ビクビクと震える私を大事そうに抱いて、男は満足げに私の頬に口付ける。

「達ったな。気持ちよかったのか?」
「驚いただけだ・・・・・・」
「意地っ張りめ。ほら、俺はまだだぞ」

 私を幾分浮かせたかと思うと、手の力を抜き、私の自重で奥に入ってくる。

「あ、待って――、いや違った。早くやってくれ――」
「待てかよ・・・・・・」
「まだ奥が・・・・・・」

 男は初めてだったが、こんな風に身体が受け入れるとは思っていなかったというのが正直なところだった。

「うん、ヒクヒクして、気持ちいい」
「言うな――! じゃなくて・・・・・・お前はもう少し慎みというものをもった方がいい」
「もういいか?」

 男もかなり我慢しているのだろう。私も男だ。こんな生殺しがどれだけ辛いかは知っている。

「優し・・・・・・おもいっきりやってくれ」

 泣きそうになりながら、男に許可を出したら、男は本当に思いっきり動き始めた。私の胸の突起を触り、下から突き上げてきた。

「あっあ、ああっ、あ、んぅ――」

 男が踊れば、私の声も上がる。

「やばい。カシュー、お前良すぎだ――」

 切羽詰まった声が感嘆を上げる。

「あっ、馬鹿! 何言って――あ、んっ。もういい加減達けよ! んんっ」

 揺さぶられているのか自分で動いているのかわからなくなった頃、男はやっと達ってくれた。私が三回も達ったというのに――。

「カシュー、もっかい――」

 もう一度というが、正直クラクラしている。普段使わない筋肉を使いすぎたせいか酸欠だ。

「ヴァレリー・マルクス、これ以上は貴殿の要求は呑めない」

 ニッコリと口角を上げ、眉間に皺も寄せずにそう言ってやったら、男は「やられた・・・・・・」とわけのわからないことを呟いて、私を抱きしめたまま横になった。
 汗も色々なとんだものも気持ち悪いが、取り合えず私は意識を手放した。

 

 私は今、宰相閣下と呼ばれている。結局独り身のままだった。王宮でリチャード様の継嗣であるアルベルト様に仕えている。リチャード様は、アルベルト様が成人されるのを見届けると、元来の身体の弱さもあって他界なされた。

「カシュー、明日だな」

 明日はアルベルト様の結婚式だ。

「ああ」
「なぁ、俺とさ、結婚しない――?」

 何を馬鹿なことを言っているんだと目で言うと、チュッと眉間に口付けされた。

「馬鹿なことを――」
「同性婚、最近巷で流行っているんだ」
「だから?」

 それは知っている。今までもいないわけではなかったが、最近友好関係にある国の王族が男の妻を連れて訪れて、それから流行っているらしい。

「俺のさ、夫になってくれよ――」
「そこは妻になってくれ、じゃないのか?」
「俺はさ、お前の奥さんになって、アラーナ様と妻同士の秘密の話をしようとおもってな」
「陛下に殺されてしまえ――」

 アルベルト様は、ちょっと恥ずかしいくらい嫉妬深いのだ。

「でもさ、お前、俺のこと好きだろ?」

 その自信がどこから来るのか全くわからないが、私が告げる言葉は前から決まっていた。

「そうだな」
「え、そのそうだなは好きってことだよな?」

 散々反対の言葉を閨で言わされてきた私の逆襲と言ってもいい。

「好きだよ」

 不安げに、男は私の顔を見つめる。

「それは・・・・・・、反対の言葉じゃないよな?」

 それには何も告げず、私は口角を上げて笑ってみせた――。
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