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凛の最初の話【1】

離婚しないから

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「子供が出来ないのは、離婚理由になるかもしれないけど…。俺は、離婚しないから!凛がいない生活は考えられないから」

「だったら」

だったら、セックスは別の人としてよって言いそうになった口を塞いだ。

「だったら、何?」

「何もないよ。私は、龍ちゃんを引き留めるつもりはないから…。だから、新しい人探せばいいよ」

「だから、いらないって言ってるだろ?」

「いらないわけないじゃん!赤ちゃん、欲しいくせに」

「欲しいよ!凛との赤ちゃんが……」

龍ちゃんの涙を見て、言いすぎた事に気づいた。
だけど、ごめんが言えなかった。

「お酒飲んでくるわ」

また、龍ちゃんを傷つけてしまった。
龍ちゃんが部屋から出ていった。
私は、毛布を引き寄せて、泣いた。

「馬鹿だな、私」

口に出して泣いた。

愛のないセックスは嫌だとか、好きじゃない人とのセックスじゃないと嫌だとか…。昔は、散々雪乃と語り合っていた。

今になってわかったのは、愛があったって未来がないセックスが嫌なんじゃないかって事だった。

子供っていう未来がないセックスが嫌なだけ…。

そんな気がした。

私は、暫く泣き続けていた。
起き上がって、服を着替えた。

キッチンに行って、お皿を洗う。龍ちゃんは、リビングのソファーでお酒を飲みながらドラマを見ていた。

謝りたいのに、謝れなくてもどかしい。

お皿を洗い終わって、お風呂を沸かした。

龍ちゃんは、ずっとドラマを見ていた。

私は、何も言わずにお風呂に入る。

「どうやって謝ろう」

子供や妊活の話しになると、時々酷い喧嘩をした。
そして、いつも謝るタイミングを逃してしまうのだ。

お風呂から上がって、髪を乾かした。

出てくると、もう龍ちゃんは寝ていた。

「はぁー、またタイミング逃した」

私は、水を飲みながらドラマをつける。二人でいつも一緒に見るお気に入りのドラマを龍ちゃんは一人で見終わっていた。私も再生して、それを見た。

自分が無能だって思っているのを龍ちゃんにぶつけてどうするんだろう…。

龍ちゃんだって、自分の事をそうやって思ってるかもしれないのに…。

人から言われた言葉に振り回されて、どうすんのよ。

私は、頭を掻いていた。

私は、私じゃない。

そう思えないのが辛い、苦しい。

「結婚なんかしなければよかった」

息を吐くように、そう言って泣いた。

【あなたの体は、子供を自力で作る能力がありません】ってハッキリ言ってくれたらいいのに…。それに、もっと早くにそれを知っていたら未来は違ったのかな?

そしたら、龍ちゃんのプロポーズを受けてなかったよ!私きっと…。だって、苦しむのは、私だけでよかったもん。龍ちゃんを巻き込まなくてよかったもん。
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