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友達でいる方法なら知ってる

美春の話⑤

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私は、傷ついた心をぶつけるようにくー子を呼んだ。

それが、今…。

くー子は、心を握り潰す事が辛くて悲しくて、体育座りしていた。

「もう、やめようか」

「嫌だよ、嫌々」

「こんなに、傷ついてるんだよ」

くー子の手首の傷を触った。

「これは、違うくて!関係ないの、美春姉のせいとかじゃないから…。そう、大学で色々あって」

くー子は、そう言って必死で笑ってるけど…。

目の中に光がない。

「いいから、私を咲子さんの代わりにして。いっぱいして…。体だけでもいいから、じゃなかったら…。私」

くー子は、それ以上言えずに泣いていた。

「友達に戻るだけだよ」

友達って、言葉にくー子は、涙目を向ける。

「好きにもなってもらえなくて、抱かれもしなくて、私は友達って道路に捨てられるの?」

「くー子?」

「車に乗せてもらえないの?」

「どういう意味?」

「私は、美春姉の助手席にも後部座席にもいないんだよ」

くー子の言っている意味がわからないけれど…。

言いたい事は、何となくわかる。

「私は、くー子を道路に捨てないよ」

「捨ててるよ!友達って言葉は、そういう意味だよ」

「何言ってるの?」

「あなたに愛はあげないって言ってるって事」

くー子の言葉に私は、幾度となく自分の胸が貫いた意味が理解できた。

「そんな事ないよ」

くー子は、首を横に振った。

「友達っていつでも切り捨てれる関係でしょ?美春姉が、咲子さんに本当の事がバレたら一緒にいれる?」

私は、答えられなかった。

「いれないでしょ?走ってる車からいつ道路に捨てられるかわからない関係なんだよ」

「くー子」

「だから、やめたくない」

「ごめんね、私はくー子をまだ愛せないよ」

「それでもいいから」

「駄目だよ、こんなに心が傷だらけだから…」

くー子は、涙を拭って笑った。

「だったら、最後にして」

そう言って泣いていた。

朝起きるとくー子はいなかった。

代わりにメモが置いてあった。

【友達になれる日が来たら会いに来ます。美春姉を愛してるから、どれだけ時間がかかるかわからないけれど…。】

私は、それを読んで泣いていた。

16歳の彼女に期待を持たせ、ズルズルと関係を続けてきた。

なのに、今になって私はいらないと言った。

何て、酷い事をしたのだろうか…。

友達なんて言葉を使って、彼女を車から道路に私は突き落としたのだ。

私は、くー子の傷つけ方をわかっていた。

同じ傷をつけかえしたのだ。

もっと、きちんと向き合ってあげればよかった。

自分がされた方法じゃなくて…。

ちゃんと向き合う方法を選ぶべきだった。

いつか、くー子が会いに来た時にはきちんと向き合ってあげたい。

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