婚約者が浮気相手を妊娠させてしまいました。あなたたちでどうぞ幸せになって下さい。私はもう知りません。

hikari

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エリーザベトに報告

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ジョフレイの部屋を出た後に、エリーザベトに報告に行くことにした。


まさか、マーニャが妊娠していたなんて……。

驚愕の事実に足がすくんでしまった。

やはり、お腹が膨らんできたのは太ったからではなかった。

孕んでいたのだ。

まさか……だった。

ということは、今回はお泊りということだ。


「あれ、エマヌエラ様」

そこにちょび髭の中年の男性が現れた。

執事のグレンだ。

グレンという名にちょび髭は執事の定番。

「あら、グレン」

「ジョフレイ様と何かあったのですか?」

「はい」

「そうですか。何があったのですか?」

婚約破棄は決まったことだし、グレンが気づくのも時間の問題。

この際、グレンにも今回の婚約破棄のことは包み隠さず話すことにした。

「ジョフレイ様と婚約破棄をしました」

「一体何が起きたというのですか?」

「ねえ、グレン」

「はい、なんでしょう?」

「マーニャは今夜、邸にお泊りしたのよね? で、応対したのはグレンなのよね?」

「そうですが……」

「マーニャ、あの人はジョフレイ様の浮気相手よ。どうして密会させていたのです?」

「ジョフレイ様の強い意思です。ジョフレイ様曰く、マーニャ様は友人だそうで」

「だからってお泊り、認めるのです?」

「マーニャ様はすぐに帰宅するから、ジョフレイ様に会わせて欲しいと言ったんです。まさかお泊りするとは知りませんでした」


なぜかグレンを責めていた。

婚約はすべて白紙撤回になったというのに。


「マーニャは妊娠していたのよ!」

「本当ですか?」

「そうよ!!」

「その子供は勿論……?」

「ジョフレイ様の子供よ!!」

「し……知らなかったです」


それで、度々邸に招き入れていたのだ。

これはグレンにも責任はある。

とはいえ、もうジョフレイに未練はない。


「グレン」

「はい、お嬢様」

「わたくしはもうジョフレイ様には未練はありませんわ。好きになさって下さい。そして、有能な外科医として頑張ってください。陰ながら応援していますわ。そしてグレン。短い間でしたが、お世話になりました。今までありがとうございました」

そう言ってその場をあとにした。

(グレンにお別れの言葉が言えて良かったわ!!)


そこに、茶髪のマッシュールームヘアのメガネをかけた女性が現れた。

侍女長のサリサだ。

サリサという名前もまた侍女によくある名前だ。


「あら、サリサ。どうしたの?」

「グレンとの話を聞いて駆けつけてきたの。大変な話になりましたわね」

「そうよ」

「まさか、ジョフレイ様がマーニャ様を妊娠させていたなんて」

「わたくしもまさかでしたわ。浮気をしているのは知っていたけど、まさか妊娠させていただなんて」

サリサは目を細めた。

「そう、そうなの!!」

悔しさで涙が溢れてきた。

「マーニャ様が邸に出入りしていたのは知っていました。でも、まさか浮気相手だったなんて。私にも言っていましたわ。マーニャ様はただの女友達だって」

本当にただの友達なら、どれほど良かったことか。

しかし、現実はただの友達止まりではない。

二人は間違いなく愛し合っていた。

「ところで、朝食は済まされていたのですか?」

そう言えば、朝食はまだだった。

朝食よりも、エリーザベトの報告が先だ。


「エリーザベト様への報告が先ですわ!」

「やはり、エリーザベト様に報告されるんですか?」

「勿論ですわ。だって。わたくしはエリーザベト様とは仲良しですもの!!」

「それも良いかもしれませんね。報告終わったら、朝食を食べに来て下さいね」

そう言ってサリサは踵を返した。


エマヌエラは何が起きたかわかりやすくするため、婚約指輪を外した。


エマヌエラはエリーザベトの部屋の前に来た。

バーバラは中で歌を歌っている。

いる!! と思った。


トントン!!

ドアをノックする。

「はい」

中から声がした。

「失礼致します」

エマヌエラはドアノブに手を掛けた。

「どうぞ」


エリーザベトは中で着替えていたようだ。

しかし、今は既に着替え終わっていた。

長く伸びる青い髪を後ろで束ね、空のように青い瞳に左右対称の整った顔。

額には飾りがついている。

およそ、ジョフレイとは似ても似つかない外見だ。


バーバラの部屋は天蓋のついたベッドに、四方風景画が飾られている。

部屋は片付いている。

どっかの誰かさんの部屋と違って。


「エリーザベト様」

「どうしたんですの? 朝から忙しないじゃない」

エリーザベトの声は柔和で暖かいソプラノの声。

まったく響かない。優しさを感じる。

「はい。実は……」

エマヌエラは左手を挙げた。

「まあ、指輪がないじゃない。ジョフレイと何かあったの?」

「はい。婚約破棄しました」

「こ……婚約破棄ですって?」

エリーザベトは卒倒しそうになった。

「だ……大丈夫ですか? エリーザベト様」

「あんなに仲睦まじかったのに、どうして?」

「はい。信じてもらえるかわかりませんが……実はカントン子爵家の令嬢、マーニャをこそこそ邸に連れ込んで、行為に及んでいたみたいなんです」

「行為……? 何か証拠でも?」

「はい。マーニャが自ら言ったんです。マーニャは妊娠している。お腹の子はジョフレイ様の子だって」

「えええええええ!?」

「そうなんです」

「そん……な。ジョフレイがそんなことを」

エリーザベトは頭を抱えた。

無理もない。実の息子の失態を俄に受け入れることはできないだろう。


「ごめんなさい。わたくしに魅力がなかったのが原因ですから」

「そうは言っても、これはわたくしたち、シモンチーニ家とローレンシア家の交流としての婚約よ。あなたに魅力がないだなんて……」

「わたくしが悪いんです。ジョフレイ様よりも背が高く、女の癖に声が低いから……」

「背が高いことは自信持って良いのよ、エマヌエラ」

バーバラは抱きしめてくれた。

「ごめんなさいね。あなたに不快な思いをさせてしまって」

バーバラの胸元は暖かい。

「で、これからどうするの?」

「婚約を破棄してしまったのだから、わたくしはシモンチーニ邸に戻ります」

「そう……そうするのね」

「そうしますわ」

「では、今から邸に戻るのね」

「はい」

「気をつけてね。外には追い剥ぎやならず者、与太者がうろついていたり、魔物がいたりするからね」


「ありがとうございました」

エマヌエラは頭を深々と下げた。


そして、部屋を出た。


この日はいつも以上に美味しくない朝食だった。

朝食を食べ終わったら、シモンチーニ邸に戻ることにした。
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