婚約者が浮気相手を妊娠させてしまいました。あなたたちでどうぞ幸せになって下さい。私はもう知りません。

hikari

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両親に報告 マーニャ視点

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マーニャはカントン家に着いた。

両親に報告するためだ。

勿論、ジョフレイと結婚が決まった事を。


妊娠していた事も勿論親には内緒だった。


「これはこれはマーニャお嬢様。よくぞお戻りで」

執事のアルフだ。

身長がマーニャより低く、白髪で白い髭を蓄えたいる。

「ええ、アルフ。私は婚約したの」

「婚約?」

アルフは目線を上げた。

「そうです。ローレンシア侯爵令息のジョフレイ様と婚約しましたの」

「そうですか」

「それにね。私のお腹の中には新しい命が宿っているの」

「な……なんと。ご主人さまはそれを知っているのですか?」

「知らないわ。だから、報告に行くの」

「それを知ったら、ご主人さまはさぞ驚かれると思いますな」

アルクは髭を触りながら言った。

「じゃあ、早速報告に行くわ」

マーニャはそう言って階段を昇った。


マーニャは父、グレンの元に向かった。

グレンとはローレンシア家の執事と同じ名前だ。

その事からも、ジョフレイとは運命的なものを感じていた。

マーニャは父、グレンの執務室に入った。


部屋の暖炉には火がついていた。

確かに、晩秋の今はとても寒い。


「お父様。とっても嬉しいお知らせですわ」

「おおー、マーニャ。嬉しいお知らせとは何だね?」

茶色い髪の大柄な男性が目の前にいる。

お腹も出ている。

この男こそ、マーニャの父、グレンだ。


「はい、お父様。実はローレンシア侯爵令息のジョフレイ様と婚約が成立しました」

そう言って左手を高々と挙げた。

「ん? でも待てよ? ジョフレイ様は確かエマヌエラ嬢と婚約していたのではないか?」

「はい。でも、ジョフレイ様は家同士の繋がりで婚約者がいることに違和感を感じていたみたいです。それで、ジョフレイ様はエマヌエラと婚約を破棄し、私を選んでくれたんです」

「そうだったのか……」

「ジョフレイ様はエマヌエラの分厚い唇、低い声、高過ぎる身長……。そもそも、エマヌエラはジョフレイ様より身長が高い時点で終わっているんですよ、お父様」

「確かにエマヌエラは女性にしては身長が高いな」

「エマヌエラは結婚できない運命なんです。あの身長だと、王侯貴族、誰もが引いてしまいますわよ」

グレンは葉巻に火をつけた。

「確かに、誰にも相手にされないかもしれないな」


「それと……」

「まだ何かあるのかね?」

「私……妊娠しているんです」

「何だと?」

グレンの目の色が変わった。

そして、椅子から立ち上り、テーブルを激しく揺らした。

「はい。勿論、ジョフレイ様の子供ですわ」

「いわゆるデキ婚ってやつか? けしからん!!」

「す……すみません」

まさか謝る羽目になるとは思わなかった。

素直に結婚を喜んでくれると思っていた。

「すみません……じゃない!! つまりは遊んでいたら、できてしまったってことだよな? まさか婚前に行為に及んでいたとはな」

そう言って椅子に座った。

そして、葉巻を口に含み、勢いよく煙を吐き出した。

煙は天井に向かって立ち上った。


「お父様……。申し訳ありません。でも、それが私とジョフレイ様の意思なんです」

「まさか妊娠していたなんてな。マリアナとグレイとレベッカが聞いたら何というだろう?」

マリアナは母。グレイは兄。レベッカは姉だ。


ちなみに、カントン家は長子に継承権があるため、女性ではあるものの、姉のレベッカが継承することになっている。

こんな時ばかりは、自分が長子でなくて良かったと思っている。


コンコン。

「失礼致します」

入ってきたのは侍女のユラだった。

「ユラ。マリアナとグレイとクレシダを連れてきてくれ。至急だ」

「わかりました。でも、グレイ様もクレシダ様も仕事です」

「構わん!! 今はそれどころではない。おおごとなのだ」

「わかりました」


とはいえ、グレイはアロー公爵家で令息の警護をしている。

クレシダもアロー家で侍女を務めている。


アロー家は近い。

ほんの数時間で行ってこれる。


コンコン。

そこに、オレンジ色の髪をお団子にし、尖った鼻に吊り上がった目。

母のマリアナだ。


「あら、マーニャ、どうしたの?」

「こいつ、妊娠しているみたいだ。お前からも何か言ってやれ」

「まぁ、マーニャ。妊娠しているの?」

マリアナが訝しげな顔をした。

「はい、お母様。私はジョフレイ様の子供を身ごもりました」

「な……何ですって?」

「申し訳ありません!!」

マーニャは土下座をした。

「そう言えば、ジョフレイ様は婚約者がいたはず? そう、シモンチーニ男爵令嬢の……」

「そうです。エマヌエラとジョフレイ様は婚約していました。でも、ジョフレイ様は婚約者が家と家の間で決められているのはあまりにも不本意だということで」

「そう……だったのね。で……エマヌエラはジョフレイ様と婚約を白紙撤回したのね?」

「そうです」

「まぁ……。その原因があなただったり?」

「一応そうなんですが……」


わかっていた。

自分が原因でジョフレイがエマヌエラと婚約を破棄したことを。

「でも、仕方ないわね。婚約者が予め決められているのは」

「ですよね?」

「私は結婚、認めるわ」

「何だ? お前はそう言うのか?」

「そうですわ。基本、下位貴族は婚約者が決められていないようだけど、シモンチーニ家は元を正すとローレンシア侯爵家と親戚筋にあるからね」

「つっ……」

グレンは舌打ちをした。


小一時間して、ドアが鳴った。

「入れ!」


茶髪の男女が部屋に入ってきた。

兄のグレイと姉のクレシダだ。


「お前ら、よく聞け」

と言ってマーニャを指さした。

エヘンと喉を鳴らし、グレンは続けた。

「マーニャは妊娠をしている。お前ら、どう思うか? ちなみに子供はジョフレイ様の子供だぞ」

「デキ婚ですか? お父様」

と、クレシダ。


「そうだ。遊ぶに遊んで妊娠してしまったのだよ」

「恥ずかしいな」

と、グレイ。

「申し訳ありません。お兄様、お姉様」


クレシダは「仕方ないわね」という顔でこちらを見ている。

グレイの顔は明らかに憤っていた。


「なあ、マーニャよ」

「はい、お兄様」

「エマヌエラはどうしたんだ?」

「はい。エマヌエラはジョフレイ様と婚約を破棄しました」

「婚約破棄をさせた? とんでもない話だ」

「そうだな。まぁ、こんな奴とは親子の縁を切りたいほどだ」


「良いですわ。私が出ていけば良いんですね?」

「わかっているじゃないか!!」

と、グレン。

「出ていってくれ。我々のためにも」

と、グレイ。


「さようなら、お父様、お母様、お兄様、お姉さま」

そう言ってマーニャは執務室を出た。


晩秋の空は曇っていた。

秋晴れとは程遠かった。

マーニャは馬車に乗り、ローレンシア家へ向かった。
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