49 / 200
新生編
RE BORN
しおりを挟む「はい、一旦休憩です。数値が落ち着きました。」
ルーナは計器を見ながら声をかける。その声に、隊員はやっと解放されたとばかりに床に倒れ込む。それほどに体力と魔粒子を使用して、快楽とは程遠い、まるで苦行を終えた僧侶かの様な面持ちである。サリザンドは眠るグレースの瞼を開いて眼を確認し、魔道具の確認をする。最後に神核を鑑定して息を吐き安堵する。もう、安心だ、そう確信した。
「一か八かでやりましたけど、これで肉体は出来上がりました。後は様子を見ましょう。」
ビクトラはタオルでグレースの体を拭き、水を口移しで飲ませて髪を撫でながら額に口付けを落とす。心からその瞳をもう一度見たいと願い祈っている。
「グレース、早く起きてくれ。もう、こんなのはごめんだ、全然気持ちよく無かったぞ。起きたらご褒美くれよ?」
涙を瞳に溜めてビクトラはグレースの手を取り、枕元に座ってグレースの顔を見つめた。視界がチカチカと発光し、視界が遮られビクトラは思わず眼を瞑ってしまった。その時、まだ耳に記憶が新しい声が聞こえる。
「ご褒美なんて貰えると思ってるの…?待ってるのはお仕置きだよ。」
ゴゴゴゴゴッ
禍々しい黒の光が渦を巻いてグレースを包んだ。
「グレース!!!」
ビクトラはガバッと抱きついてぎゅうぎゅうに抱きしめた。
「おい、ヴィク。お前らもそこに並べ。」
まさかの反応にビクトラは驚き床に転び落ちた。そしてグレースのオーラのあまりの禍々しさに、思わず全員一列に並び敬礼する。でなければ殺されそうな勢いだった。グレースの神力は部屋を包みビリビリと空気が振動させ皆を恐怖で包み込んでゆく。
「おい、お前。俺の喉奥まで突っ込んでくれてありがとな。気持ち良かったか?ん?返事は?」
急に指を指されたコレットは涙目で天を見つめ叫んだ。
「大変具合が宜しくありました!!!」
皆、「ぐっ」と軽く唸り目を瞑った。
「おい、お前。俺の乳首散々こねくり回してくれてありがとな?でもな、テメェの手遊びの道具じゃ無いんだよ。暇だったんか?ん?」
リャーレは耳を押さえて俯いて叫んだ。
「指が私の一族は性感帯の一部でございます!」
「はぅっ!」とまたもや全員腹を押さえて苦しむ。まさに拷問。
皆つぎは自身の番かと震え涙目になり天井を見つめた。
「おい、お前。名前は?」
グレースは睨みを効かせてアガットを呼びつけ躙り寄る。
「は、私は特殊任務部隊 隊長 アガット•ボーゲンと申します。」
アガットは瞬時に冷静さを取り戻し敬礼し、グレースの後ろに視線を定めて眼を合わせない様に直立して固まった。
「アガット、君は俺が嫌い?ずっと眉間に皺寄せてさ、ゴシゴシって節くれた指で歯列なぞってくれちゃって。分かってるよ。助けてくれたんだって。みんなには感謝してしてる。でも、俺はさ。見えてたんだ。皆んながさんっざん俺を可愛がってくれたのをさ。」
グレースは満面の笑みでアガットのシャツの襟を掴んだ。
そして思い切り顔を寄せてキスをした。
「!!!」
アガットは目を白黒させて両手を上げて固まっている。
な、何だこの状態は!このグレース様は何をお考えになっているんだ!?これは、罰か!?うぉ!舌が入ってきた!助けろビクトラ!!
「んーー!んんんん!んむーー!(ビクトラ!たすけろ!これ!)」
ビクトラはうわー。と残念な顔をしてアガットに手を合わせた。
「はぁ。ヴィクの次に君、キスが上手かったよ!受けのセックスも初めてだったのにさ、朱雀とやった時位に君の責めは気持ち良かったよ。ここにいる皆んなさ、あ、そこのピンク毛の君と、青髪のおにーさんもね?」
「俺の恋人兼巡行隊に入れるな?いいよな?助ける為って言ってもやって良い事と悪い事ってあるじゃない?それガン無視してやりたい放題でさ、俺気持ちよく無かったよ。気分的に。だから、原書手に入れたらあんたらの魔粒子空っぽになるまで可愛がって貰うから覚悟してな?」
ツンと顔を横に向けて頬を膨らませたグレースは恥ずかしげに皆を見ながら「ありがと、助けてくれて。」そう言い捨てると部屋を出た。
精一杯の照れ隠しがとんでもなくビッチであった事にグレースは気付かず、都は頭を抱えて絶句していた。
グレースの去った後の部屋では、サリザンドとルーナはポカンと口を開けて立ち尽くし、皆その場に座り込んで灰となった。そして脱隊を検討する隊員もいたと言う。
廊下にはグレースの心浮かれて晴れやかな声が響いている。
「朱雀ーーー!可愛い俺の小鳥!ただいまーー!!」
その声にビクトラは声を殺して咽び泣いた。
「こんなに泣いたのいつぶりだよ。お前の所為で大隊長形なしだぜ。」
「よく帰って来てくれた。」
一瞬でグレースに飲み込まれた人生。新しく生まれ変わった自分をビクトラは嫌いじゃないなと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる