神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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閑話

俺は飼育員じゃない!

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さて、今日もグレースを癒す羽の手入れをするか。

バッサァ!!!

うむ。今日も調子がいい。

昨日はグレースと夜通し睦み合ったからか、羽の艶が違うな。

何度か羽ばたきをして、抜け羽を落とす。

ふむ。羽ばたきをするとグレースのお気に入りの家具が燃えてしまう。

どうしたものか。

こういう時は奴に頼むのが良いとグレースが言っていたな。

ドンドンッ ドンドン ドンドン

ん?なんだ?アイツは居ないのか?しかし気配はするな。

ガンッ!

「うぉっ!!!」

「居るではないか。」

「なんですが!貴方は!こんな朝早くに!」

布団にはホルーと部下の猫人族がいた。

「鷹の目。起きろ。我が羽の手入れをさせてやる。」

「ちょっ!勘弁して下さいよ!巡行手配やらで疲れてるんですよ!」

「それにっ!」

ホルーがチラリと隣りを見ると、叩き起こされて

不機嫌な遊び相手。

「またかよ。俺帰るわ。こいつ見てると羽毟りたくなるし」

布団の上で頭をガシガシと頭を掻くホルーを見て

朱雀が真顔で心配する。

「なんだ?ノミか?潰してやるぞ?」

「違いますよ!で、ご用件は?」

「羽の焔が部屋を焦がした。」

「…いい加減覚えて下さいよ。俺は貴方の世話係じゃないんですよ。」

ホルーが起き上がるといつもの道具を持ち出してきた。

「座って下さい。」

「うむ。」

ドサッとベットに座り込むと、ホルーが粗めの櫛で羽を梳いて、

それから両手で細かく内側の羽を梳いてゆく。

そして、羽の鞘を抜いたり粉綿羽に触れて手入れを続ける。

尾脂腺に触れるとヌタっと何かが溢れてきて、

其れを羽になすりつけていくと艶が生まれた。

最後に羽の付け根を手が小刻みに揉み解す。

「うむ。今日も中々だったぞ。」

道具を片付けた後、箒やらで部屋を片付けていくホルーに

朱雀は少し感謝した。

「どれ、鷹の目にも礼をせねばな。」

その言葉にホルーの顔が曇る。

「いや、いいですから。俺まだ寝たいんで。」

朱雀は無理矢理、ホルーを抱き上げひっくり返すと

ホルーの羽を片方広げて手梳で羽を整える。

「んっ!ちょっ!そこは!」

「何だ?文句でもあるのか?」

焔がチラチラと舞い出した。

「い、いえ、。何でもないで、、す。」

一通り同じ様に手入れをしてやった事に満足した朱雀は

部屋を出て行った。

「俺の羽がっ……」

半分以上引っこ抜かれて布団に散乱した羽をホルーは

涙ながらにかき集めて捨てた。

「最悪だ。」

羽を刺激されて立ち上がった物を見下ろしてため息を吐く。

「毎朝毎朝、俺の気も知らないで勘弁してくれよ。」

窓を開けて中庭を見下ろすと、羽ばたきしながら

焔で枯れ草やゴミを燃やして掃除をする朱雀がいる。

「小鳥!おいで!」

傍若無人な炎鳥も、神の一声で犬になる。

あんな小鳥がいたら成鳥はどんなだよ。

目が虚ろになるのが自分でも分かって、嫌気がさす。

「グレース!見てみろ!今日も鷹の目が梳いてくれたぞ!」

「そっか、良かったな小鳥。綺麗になったね。」

はぁ、朝からイチャイチャと。心に毒だな。

興奮した朱雀が熱風を巻き上げる。

「うあっちっ!!」

五階まで届くこの熱風。想いの強さを思い知る。

「朝からお熱いことで。さ、二度寝でもするかな?」

ふと朱雀に目をやると、同時に目があった。

「鷹の目よ!感謝する!」

手をヒラヒラと振りつつ、グレース様に会釈をして窓を閉めた。

あの可愛い笑顔が見れたなら、明日も手入れをしてやるか。

そんな気分になる。

俺に最愛が出来るまで、飼育員をしてやるか。

今日もホルー副参謀の後頭部には赤い羽が刺さっている。

それが、未来の最愛を遠ざけているとも知らずに。

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