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心の枷編
力の解放
しおりを挟む教会奥の泉に設置されたベットで都は目覚めた。
「都、おはよう。」
「ニニギ?ニニギ?なんで、声、届かなかったの?」
「テュルケットの使徒に双葉が襲われた。俺達の神力も枯渇してる」
「‼︎双葉は⁉︎大丈夫なの?」
「…猫神が守ったよ。」
「そう、そう。良かった。猫神様は?」
「……気にしなくていい。」
ニニギの顔を見て都は察した。
猫神の力のお陰で双葉は守られた。そして猫神は消えた。
そういう事なんだろうと。
「ふっっうっっ私が、神力を、、使えてたら!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
ニニギはそっと都を抱きしめた。
「辛かったな。こっちで上手くやってもらうために、グレースを切り離して人格を与えた事が仇となった。」
「違う!私が、、縋った!甘えた!」
「覚悟を決めたのに、前世で理性が、、世間体とか周りの目を気にした!だから、グレースの影に隠れたの!でも消えるのが怖くて、、グレースと一体化、出来なかった。」
「どうする?もう、崩壊までに時間がない。君を俺が殺そうか?」
都はニニギを見上げた。楽になれる、もう皆を困らせない。そう思った。その瞬間、思いを打ち消す様にグレースの叫びが響き渡る。
——— ふざけるなよ。いちいち問題拗らせやがって。
——— 受け入れろよ現実を!悩むな!
——— 滝に飛び込んだ時みたいに俺達に飛び込んで来い!
そして、都とグレースはニニギの造る精神世界で向き合った。
「双葉を、愛のない親の元に生まれる子供にしたいのか?」
「親の顔色を伺う子供にはもう、、したくないだろ。」
その言葉に都は考えた。双葉はマイクと自分の距離に気付いていた。だから良い子にしていた。それを私もどこかで気付いていて、甘えていた。
「ビクトラも、リャーレも、アガットも、ルーナも、サリザンドにソレス、朱雀も。都を愛するよ。満たしてくれる。寂しさも、悲しみも、全部受け止めてくれる。俺は皆んなの子供が欲しい。旅が終わったら家族を作りたい。都と俺の家族だ。」
「俺だって、他人じゃなくて、、なんていうか、母ちゃんに甘えたい時があるんだ。都の記憶の中の母ちゃんを羨んだよ。俺にもいたならなって。」
「なぁ、俺が無条件に甘えられるのは、、都しかいないって分かってるんだろ?俺の帰る場所を無くさないでよ!」
泣き咽せる都をグレースは抱きしめ額に口付けをした。
「なぁ、都。都は本当に綺麗なんだ。俺が心配する程にさ。自惚れていいんだ。それ位、綺麗なんだから隠さないで、蓋をしないで。」
「都の喜びが力になる。その力は世界を癒してくれるから。」
ニニギはそっと二人を抱き締め囁いた。
「諦めないで。」
そしてテュルケットの錫杖を出し、二人にその錫杖を握らせる。
その上には荒削りされたダイヤモンドが嵌め込まれていた。
「白使いが放つ光は、二人には毒にもなる。でも、この石が吸収して旅を楽にしてくれるだろう。白使いには気をつけて。」
「それに、教会の神官はテュルケットをまだ盲信してる。でも、ここの神官は信じていい。旅に連れて行って神力の使い方を学ぶといいよ。」
そう告げた後、二人の肩に頭を乗せて伝えた。
「俺達にこれから二人を支える力はもうない。」
「サポートも、これが最後だ。でも、この世界と二人はもう繋がってるから直感に従って旅に出るんだ。」
二人は手を繋いで錫杖を受け取った。もう逃げないと改めて誓いながら。
「ニニギ、本当にもう会えないの?」
ニニギは困った顔をして笑った。
「あと何百年か、何千年か分からないけど。皆んなが俺らを信じてくれたら力も戻る。そしたら真っ先に会いに行くよ。」
「そっか。俺達日本人はあんたらと繋がってる事を忘れたりしないから、大丈夫だな。時間はかかるかも知らないけどさ!」
「また、会おう。この世界で待ってるよ。」
「あぁ、大丈夫。信じててよ。日本を守るから。」
「うん。グレースと一緒に信じて待ってる。」
「じゃあね、ニニギ。ツッキーや大国主様、お腐神様や猿田彦様、皆んなに、皆んなに大好きだよって伝えてよ!」
笑顔のニニギは消えてゆく。そして静かに世界は元に集約されて
色を取り戻した。
「グレース、今なら戻れる?」
都は天蓋から見える太陽を見つめ囁いた。
——— あぁ。でも、当分はこのままでいる。
「なんで!?」
——— 都にはすべき事あるだろ?
「……。」
——— 旅に出よう。その中でみんなと少しずつ打ち解けていこうぜ。
「分かった。そうする。」
その両手にはしっかりと錫杖が握られ、ニニギとのやり取りが
夢ではなかった事を都は実感した。
「失礼致します。神官長のマルスでございます。お目覚めでしょうか?」
「はい、お入り下さい。」
マルスが扉を開けると、太陽を見つめて微笑む都の姿がそこにあった。
光を浴びて神力が都を包むその姿にマルスは無言で魅入った。
「マルスさん?大丈夫ですか?」
視線だけマルスに向けた都を、宗教画の様だとマルスは思った。
「あ、失礼致しました。ニニギ様とは無事お会いになられましたでしょうか?」
「えぇ、ありがとう。会えました。嬉しかった、、本当に。」
ニコリと微笑む顔には憂いも翳りもなく、ただ満足感に満ちたものだった。
「それはようございました。我々神官も、昨日の御姿に心が張り裂けそうで御座いましたから、御使い様とのお時間にご満足なさったご様子。我々も嬉しく思います。」
「ありがとう。マルスさん!」
「さぁ、守護者の方々がお迎えにお見えです。お出になられますか?」
都はまだ皆に会う決心がつかなかった。急に会って何を言えば良いのか
分からず、どうしようかと考える。
「明日、こちらから戻りますと伝えて頂けますか?今暫くこちらで考えたいのですが。」
傅くマルスは「畏まりました。」と言って部屋を出て行った。
「グレース、急には変われないからさ。許して。」
——— 仕方ないな!俺だって早く朱雀やヴィク達と会いたいんだからね!分かってる?
「ふふふっ。分かってるよ。」
「どうせエッチな事したいんでしょ?」
——— そう思うって事は都もだろ?
「なっ!!んなわけないでしょ!!」
——— 俺のせいにして良いから、一度溺れてみろよ!
「……沈んで戻れそうになくない?その沼、深そう。」
——— 愛に沈むなら、それも良いだろ?
「…はぁ。それもそうね、落ちるしかなさそう。」
「それよりさ、気付いてる?私達の周りに見た事無い色の光があるの」
—ああ、本当だ。黄緑とか橙色、ピンクに灰色もあるね。
「集めてみようか。」
錫杖のダイヤで光に触れると、一気に吸収されてダイヤが
真っ黒になった。その黒ダイヤに試しに白い光をぶつけたら
部屋中の魔粒子が破壊され衝撃波がダイヤから放たれた。
「!!!怖っ!!」
——— なっ!何これ。エグッ!!
「でも、なんか空気、綺麗になってない?それに、濁りのない魔粒子が下から湧き出てるね。」
——— これ調和じゃない?両手で試してよ!
錫杖を床に置き、都は右手に黒、左手に白の光をイメージする。
集まった光を手を合わせる様にしてぶつける。
キーーーーーーーーーーーン、、、ドンッ!!!!
同じ現象が起こり確信する。これが神力。
「今まで、こんな事出来なかったのに。」
「受け、、入れたからかな?この世界を、、、。」
——— 良かったね。これで誰かに隠れる必要は無くなった。俺達にも何か出来るって証明された。
「ゔんっ。ふっっうっ、、うっ、ゔん!」
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