98 / 200
神話編
ガーライドナイトの誓い
しおりを挟む「都様、まずは謝罪をさせて頂きたい。俺の所為で嫌な思いをされていたでしょう。俺は、巡行から外れようと思っています。」
アガットの言葉に思わずソレスを放り投げてしまい、空飛ぶソレスは
アガットの顔面にへばり付いた。
「うん?!!はぁ?ちょっ、何でそうなるんですか!」
「うーーーん。ちょっと待って下さい。」
確かにね、アガットさんの拒否の仕方は露骨で俺も傷付いたけれども、
けれどもだよ?俺はそれをグレースへの誠意だと思ってたよ。
サリーがアガットさん達に激怒したとは聞いたけれど…。
マッドな部分あるからなぁサリーは。でも抜けられるのは困る!
「あの…良かったら、お互いやり直しませんか?」
「やり直す…ですか?」
当然責め立てられると思っていたアガットは、眉間にいつもの皺を
寄せて都の言葉に考え逆鉤ねていた。
「えぇ。この関係の拗れは、もう互いに何を言っても解決しないでしょう?だから、全てを水に流して一から構築し直しましょう。」
「いや、しかし…」
「分かりますよ?疲れましたよね。グレースにも、俺にも。」
「正直、こんな恋愛モメしてる場合じゃないですしね!」
「……」
「だから、忘れましょう!」
「そうだ!義兄弟ってわかりますか?俺、憧れてたんですよ、義兄弟!三国志好きでねー。あ、俺、関羽が好きなんですよ!アガットさん関羽っぽいんだよな!うんうん。」
そうなんだよ!関羽様なんだよな、アガットさんの雰囲気って。
いやぁ、我ながら良い着地点だ。義兄弟!
「は、はぁ。関羽?ですか、申し訳ない、存じ上げませんが。」
しまった‼︎三国志スイッチ急に入ったわ。ビクトラさんは何気に孫策だ
と勝手に思ってる!あーー!ウォーレンさんって司馬孚だな。
ヤバい楽しいな。はっ!いかん、また拗れた。
「話が脱線しました。俺達、義兄弟としてやり直しませんか?俺は兄貴であるアガットさんに素直に頼りたいと思います。」
「義兄弟…ですか?いや、ちょっと…混乱してます。」
「うーん。俺は皆んな大好きだから、ギクシャクしたくないんですよね。グレースだってそう思ってるんです。やり方が間違ってるだけで欲しい形は同じです。」
アガットは硬派ないつもとは違う疲れ切った顔で都を見つめた。
都の邪気の無いニコニコとした表情に、はぁ、と溜息を漏らし
オールバックの黒髪をグシャグシャと掻き乱した。
「えと、なんて言うかグレースは俺から生まれた魂なのはご存知ですよね?グレースにとって俺から生まれたという事実が精神的な支えなんですよ。彼は俺の持つ孤独と欲望から生まれた。だから常に何かに縛られていないと落ち着かないんです。他人事に聞こえるかも知れませんが、俺の無意識にあったらしい一部なんでピンと来なくて、すみません。」
「えぇ、それは…分かっています。」
「で、グレースにとっての縛りが俺なんです。他の誰かからも縛られたい、でも主軸が俺なんです。だから、皆さんが俺を愛さない事が不満で不安なんですよ。」
「…そういう事だったのか。」
「俺も、そんなグレースの欲望にどうしても引っ張られてしまうので、あんな想いを伝えるつもりは無かったのにぶち撒けちゃいました。」
ヘラリと笑って戻って来たソレスの背を撫でる都に、以前の縋る様な
甘さは無かった。その姿にアガットは以前の都とは完全に違うのだと
思い知る。そして、本音を都に伝える事にした。
「そう…でしたか。俺はなんでグレースだけを愛してはいけないのかが分からなかった。都様を嫌いになれる訳は無いのです、大切なお方だ。しかし、グレースを愛しく想うのとは…違うんです。どう言い繕っても同じには出来ない。」
「ですよね、分かりますよ。俺だってルーナやサリーとアガットさんを比べれば当然二人を選ぶ訳ですし。グレースは自分の好きな物を俺に好きになって欲しかったんでよ。きっとね。だから、俺達が友達以上の家族となればグレースも安心する、俺達も変な気を遣わなくて良い。一石二鳥じゃありませんか?」
兄貴か、俺一人っ子だったし父親も結構な亭主関白でモラハラだった
からな。今思えば抑圧されてたな。前世でこんな兄ちゃんに守って
もらいたかったぜ!これからは俺も遠慮せず絡んでみようかな!
「都様は、そうやって傷を隠してこられたのか?」
「傷を隠す?」
「お優し過ぎませんか?俺達は真名を預けている、下僕と変わらないのに何故我々の心を慮るのです。愛せと、命令すれば良いのです。それだけで丸く収まるのに…。俺達に気を遣い、決して強制はなされない。」
「…俺は、貴方をグレースの影だと…貴方を蔑ろにしてしまった。それをなじる事もせず笑顔の下に隠されている。」
え?何。真名のすり替えってそんな事も出来るの?確かに彼等の真名は
俺の魂と神格に繋がってる。グレースの気遣いの弊害が!
それにしても怖過ぎてビビるわこの世界。
引くわぁ…人権もへったくれもないのか。
影かぁ、ちょっと、かなりショックだけど間違ってはいない。
それに悪いけど強制とか趣味じゃない。社会人してたらこんなすれ
違いからのトラブルなんて腐る程ありますからね。ごめんなさいで
済まんとですよ、大人の喧嘩はね遺恨が残りやすい。
「誰かと関われば傷は絶対負うんです。蔑ろになんてされてませんしね。今回は互いに気を遣い過ぎてこんがらがって拗れただけです。」
「だから俺は、アガットさん達に傷付けられてないです。俺が俺を傷付けただけだから、そんな風に言わないで下さいよ兄貴!」
「アガット兄さんがいいですか?それともアガット兄ぃ?いや、兄貴⁉︎どれにします?」
ニコニコと笑う都様は全てを水に流そうと言う。
俺はこの方に敬意を抱いた。サリザンドに巡行から外れろと言われた
時は仕方ないなと受け入れるつもりだった。
グレースから離れたくはなかったが、グレースに許される事は無いとも
思ったし、何より勝手に都の気持ちを大袈裟に捉えて面倒事だと距離を
おいた自分が恥ずかしかったのだ。そんな俺を都様は兄と呼ぶと
仰る。救われた気がした…そして無性にこの優しさに、救いようの
無い孤独を感じてしまう。ただ、輪に入りたかった。そう言っている
気がした。
主人なんだ、彼等は俺の主人だったんだ。恋人だとか愛に浮かれ
過ぎて自身の立場を忘れていた。また、俺はこの方を御守りして良いの
だろうか?
「貴方はグレースの恋人で、俺の義兄。家族なんだ、俺は兄貴の主人じゃない。だから、そんな立場で俺を見ないでくれよ。」
アガットの心の声を探り聞いて都は笑い、席を立つとお茶を淹れた。
「これを飲んだなら、アガットさんは俺の兄貴で俺は弟だ。決めてくれる?どうするかさ。」
差し出されたティーカップ。アガットは震える手で受け取るか逡巡し
ている。
「グレース、出てきて。見てて、これが俺の本当に望む物だよ。」
「都、アガット。ごめん…なさい。俺が間違ってた?」
「グレース、間違ってた。俺達が間違っていたんだ、やり直そう?遅くないさ。」
「アガット、ごめん。俺、都が大事だからアガットが俺にくれる好きをあげたかったんだ。都はいつも俺を一番に考えてくれるから。」
「あぁ、俺こそすまなかった。お前の大事な物を傷付けてしまって。」
そっとティーカップを受け取ると、都と顔を合わせてお茶を飲み
干した。
「弟と思い、都の幸せを誰よりも守り大切にすると誓う。」
「俺も、兄と思い助け合うと誓います。俺達は家族だよね?兄貴!」
「あぁ、弟よ。俺の唯一の家族だ。ありがとう、ありがとう。」
アガットの涙にグレースが号泣して、泣きたくないのに涙がでた。
本当にこの身体不便、そう都は神核でラファエラと笑う。
問題はビクトラさんとリャーレさんなんだよな。
この二人は、、、対応が難しい。リャーレさんは自身で答えを出して
いるから、俺はそれを受け入れるしか無い。けれど、ビクトラさんは…
正直俺は彼に惚れてる。グレースとの触れ合いを羨ましいと思う。
彼が受け入れてくれたらと何度も思ったけれど、それは無いと理解
している。ただもう少しフランクになれると良いな…俺がグレースと
一つになれたならこんなにも苦しくないんだけどな。
さぁ、夜も明ける。ビクトラさんに挨拶だけして行こう。
0
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる