神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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神話編

ガーライドナイトの誓い

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「都様、まずは謝罪をさせて頂きたい。俺の所為で嫌な思いをされていたでしょう。俺は、巡行から外れようと思っています。」

アガットの言葉に思わずソレスを放り投げてしまい、空飛ぶソレスは

アガットの顔面にへばり付いた。

「うん?!!はぁ?ちょっ、何でそうなるんですか!」

「うーーーん。ちょっと待って下さい。」

確かにね、アガットさんの拒否の仕方は露骨で俺も傷付いたけれども、

けれどもだよ?俺はそれをグレースへの誠意だと思ってたよ。

サリーがアガットさん達に激怒したとは聞いたけれど…。

マッドな部分あるからなぁサリーは。でも抜けられるのは困る!

「あの…良かったら、お互いやり直しませんか?」

「やり直す…ですか?」

当然責め立てられると思っていたアガットは、眉間にいつもの皺を

寄せて都の言葉に考え逆鉤ねていた。

「えぇ。この関係の拗れは、もう互いに何を言っても解決しないでしょう?だから、全てを水に流して一から構築し直しましょう。」

「いや、しかし…」

「分かりますよ?疲れましたよね。グレースにも、俺にも。」

「正直、こんな恋愛モメしてる場合じゃないですしね!」

「……」

「だから、忘れましょう!」

「そうだ!義兄弟ってわかりますか?俺、憧れてたんですよ、義兄弟!三国志好きでねー。あ、俺、関羽が好きなんですよ!アガットさん関羽っぽいんだよな!うんうん。」

そうなんだよ!関羽様なんだよな、アガットさんの雰囲気って。

いやぁ、我ながら良い着地点だ。義兄弟!

「は、はぁ。関羽?ですか、申し訳ない、存じ上げませんが。」

しまった‼︎三国志スイッチ急に入ったわ。ビクトラさんは何気に孫策だ

と勝手に思ってる!あーー!ウォーレンさんって司馬孚だな。

ヤバい楽しいな。はっ!いかん、また拗れた。

「話が脱線しました。俺達、義兄弟としてやり直しませんか?俺は兄貴であるアガットさんに素直に頼りたいと思います。」

「義兄弟…ですか?いや、ちょっと…混乱してます。」

「うーん。俺は皆んな大好きだから、ギクシャクしたくないんですよね。グレースだってそう思ってるんです。やり方が間違ってるだけで欲しい形は同じです。」

アガットは硬派ないつもとは違う疲れ切った顔で都を見つめた。

都の邪気の無いニコニコとした表情に、はぁ、と溜息を漏らし

オールバックの黒髪をグシャグシャと掻き乱した。

「えと、なんて言うかグレースは俺から生まれた魂なのはご存知ですよね?グレースにとって俺から生まれたという事実が精神的な支えなんですよ。彼は俺の持つ孤独と欲望から生まれた。だから常に何かに縛られていないと落ち着かないんです。他人事に聞こえるかも知れませんが、俺の無意識にあったらしい一部なんでピンと来なくて、すみません。」

「えぇ、それは…分かっています。」

「で、グレースにとっての縛りが俺なんです。他の誰かからも縛られたい、でも主軸が俺なんです。だから、皆さんが俺を愛さない事が不満で不安なんですよ。」

「…そういう事だったのか。」

「俺も、そんなグレースの欲望にどうしても引っ張られてしまうので、あんな想いを伝えるつもりは無かったのにぶち撒けちゃいました。」

ヘラリと笑って戻って来たソレスの背を撫でる都に、以前の縋る様な

甘さは無かった。その姿にアガットは以前の都とは完全に違うのだと

思い知る。そして、本音を都に伝える事にした。

「そう…でしたか。俺はなんでグレースだけを愛してはいけないのかが分からなかった。都様を嫌いになれる訳は無いのです、大切なお方だ。しかし、グレースを愛しく想うのとは…違うんです。どう言い繕っても同じには出来ない。」

「ですよね、分かりますよ。俺だってルーナやサリーとアガットさんを比べれば当然二人を選ぶ訳ですし。グレースは自分の好きな物を俺に好きになって欲しかったんでよ。きっとね。だから、俺達が友達以上の家族となればグレースも安心する、俺達も変な気を遣わなくて良い。一石二鳥じゃありませんか?」

兄貴か、俺一人っ子だったし父親も結構な亭主関白でモラハラだった

からな。今思えば抑圧されてたな。前世でこんな兄ちゃんに守って

もらいたかったぜ!これからは俺も遠慮せず絡んでみようかな!

「都様は、そうやって傷を隠してこられたのか?」

「傷を隠す?」

「お優し過ぎませんか?俺達は真名を預けている、下僕と変わらないのに何故我々の心を慮るのです。愛せと、命令すれば良いのです。それだけで丸く収まるのに…。俺達に気を遣い、決して強制はなされない。」

「…俺は、貴方をグレースの影だと…貴方を蔑ろにしてしまった。それをなじる事もせず笑顔の下に隠されている。」

え?何。真名のすり替えってそんな事も出来るの?確かに彼等の真名は

俺の魂と神格に繋がってる。グレースの気遣いの弊害が!

それにしても怖過ぎてビビるわこの世界。

引くわぁ…人権もへったくれもないのか。

影かぁ、ちょっと、かなりショックだけど間違ってはいない。

それに悪いけど強制とか趣味じゃない。社会人してたらこんなすれ

違いからのトラブルなんて腐る程ありますからね。ごめんなさいで

済まんとですよ、大人の喧嘩はね遺恨が残りやすい。

「誰かと関われば傷は絶対負うんです。蔑ろになんてされてませんしね。今回は互いに気を遣い過ぎてこんがらがって拗れただけです。」

「だから俺は、アガットさん達に傷付けられてないです。俺が俺を傷付けただけだから、そんな風に言わないで下さいよ兄貴!」

「アガット兄さんがいいですか?それともアガット兄ぃ?いや、兄貴⁉︎どれにします?」






 ニコニコと笑う都様は全てを水に流そうと言う。

俺はこの方に敬意を抱いた。サリザンドに巡行から外れろと言われた

時は仕方ないなと受け入れるつもりだった。

グレースから離れたくはなかったが、グレースに許される事は無いとも

思ったし、何より勝手に都の気持ちを大袈裟に捉えて面倒事だと距離を

おいた自分が恥ずかしかったのだ。そんな俺を都様は兄と呼ぶと

仰る。救われた気がした…そして無性にこの優しさに、救いようの

無い孤独を感じてしまう。ただ、輪に入りたかった。そう言っている

気がした。

 主人なんだ、彼等は俺の主人だったんだ。恋人だとか愛に浮かれ

過ぎて自身の立場を忘れていた。また、俺はこの方を御守りして良いの

だろうか?

「貴方はグレースの恋人で、俺の義兄。家族なんだ、俺は兄貴の主人じゃない。だから、そんな立場で俺を見ないでくれよ。」

アガットの心の声を探り聞いて都は笑い、席を立つとお茶を淹れた。

「これを飲んだなら、アガットさんは俺の兄貴で俺は弟だ。決めてくれる?どうするかさ。」

差し出されたティーカップ。アガットは震える手で受け取るか逡巡し

ている。

「グレース、出てきて。見てて、これが俺の本当に望む物だよ。」

「都、アガット。ごめん…なさい。俺が間違ってた?」

「グレース、間違ってた。俺達が間違っていたんだ、やり直そう?遅くないさ。」

「アガット、ごめん。俺、都が大事だからアガットが俺にくれる好きをあげたかったんだ。都はいつも俺を一番に考えてくれるから。」

「あぁ、俺こそすまなかった。お前の大事な物を傷付けてしまって。」

そっとティーカップを受け取ると、都と顔を合わせてお茶を飲み

干した。

「弟と思い、都の幸せを誰よりも守り大切にすると誓う。」

「俺も、兄と思い助け合うと誓います。俺達は家族だよね?兄貴!」

「あぁ、弟よ。俺の唯一の家族だ。ありがとう、ありがとう。」

アガットの涙にグレースが号泣して、泣きたくないのに涙がでた。

本当にこの身体不便、そう都は神核でラファエラと笑う。



 問題はビクトラさんとリャーレさんなんだよな。

この二人は、、、対応が難しい。リャーレさんは自身で答えを出して

いるから、俺はそれを受け入れるしか無い。けれど、ビクトラさんは…

正直俺は彼に惚れてる。グレースとの触れ合いを羨ましいと思う。

彼が受け入れてくれたらと何度も思ったけれど、それは無いと理解

している。ただもう少しフランクになれると良いな…俺がグレースと

一つになれたならこんなにも苦しくないんだけどな。

さぁ、夜も明ける。ビクトラさんに挨拶だけして行こう。








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