神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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最終章

最終話 1 神の祝福

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 魂があるから人や獣は命を得るのか、命があるから魂が宿るのか。

気が遠くなる程遠広大な宇宙と神の領域の狭間を、一つの光が

7色、24色、48色、光の色数を増やし混ざり合っては白い

尾となり闇に軌道を残して行く。

天界の片隅では、八百万の神々がその行末を見ていた。


「ごめんねぇ都ちゃん。本当はもっと楽に終わる筈だったんだよー」

「稲穂神…それを言ってもあの魂には分かんないよ」

「ツッキー…だってぇ」

「まったくよぉ、俺達まで欺かれて良い様に使われたよなぁ」

「本当よねぇ猿神!これなら転生とかさせずに素直に輪廻に還してあげれば良かったわよぉ…ねぇ、ニニギ」

「…俺は…そうは思わない…」

「えぇ?嘘ぉ」

「神であっても事象を把握する事は出来やしない…全ては命ある物が起こし紡いで行くもんだ…都…あの魂もそうだ…神の手を離れた後は全て彼自身が選択した事だ…俺達に出来るのはここまでだ…幸せが彼に…彼女に訪れる事を見守るしか出来ない」

「やぁだぁ!珍しくおセンチぃ?」

「腐神…黙ってろ」

「都…最期に祝福を私達から贈ろう…いつか天界に戻るその時まで…さらばだ」


大国主は掌に載せていた白兎を宇宙にそっと放した。


「白兎…今度はちゃんと魂を得られる…お行き」


ぴょんぴょんと跳ねながら、ゆっくりと都の魂の光の残滓を追って

白兎は駆け出した。


「あぁ、可愛かったのになぁ」

「月読命…彼は君のペットでは無いよ」

「わーってますよ!でも…可愛かったなぁ」


一つの魂と、記憶が遠く彼方へ消えて行くと神々は名残惜し気に

神殿へと帰って行った。





「嫌だす!何でオラなんだべ⁉︎」

「ジタバタするなソレス‼︎」

「わーーー!み、都さまの神核使うでねーんだか⁉︎」

「その前に試すんだよ!成功率は高い方が良いだろ⁉︎」

「サリザンド!やめてあげてよ!ソレスが可哀想だろ!」

「煩い!マルス!」

「俺は都だよ!」


光の間の泉でサリザンドは核蘇生魔法を行おうとしていた。

だが、その魔法も成功率は6割と確実では無かった為、

都の身体を生み出す前にソレスで試そうとしている。


「お、オラの核はもう何回もやっただね!嫌だす!嫌だす!」

「サリー!」

「あぁ!煩い!みんな出ていけ!」

「はぁ…お前ら…本気で都を取り戻す気があるのか?」


ビクトラは腕を組み、わちゃわちゃと騒ぐサリザンド達を見て溜息を

溢した。カムイはそんな3人を見て、懐かしいあの小悪魔の様な

笑みでケラケラと笑っている。


「あぁ、カムイ様…貴方のその笑顔…何年振りでしょうか?愛しい人…やっと悲しみから解放されますね」


涙ぐみ、カムイを背後から抱きしめリャーレはそのこけた頬や首筋に

キスをして頬擦りをした。その姿をルーナは気が遠くなる様な気持ち

で見ている。


「リャーレさん…相変わらずだね」

「はい。私は少し…嫉妬しているんです」

「誰に?」

「ルーナさん、内緒ですよ?」

「うん」

「都様に…」

「は?都に嫉妬⁉︎」

「今までは私達だけのカムイ様でしたから…」


美しい顔で笑いながらも、腹の底では悔しいんだな。とルーナは

苦笑いしてリャーレの肩を叩いた。


「これからだってそうですよ。だって都は俺達の物だから」

「ふふ、そうでした。それと、どうします?都様が無事お戻りに
なられたら…オブテューレで暮らしますか?それならカムイ様も私達の側に居てくれますし、ありがたいのですが」

「あぁ、どうなるんだろうなぁ…それも良いかも。俺達は都が居てくれたらどこでも暮らせるし」


そんな二人の会話にカムイが割って入った。


「…俺…都が身体を取り戻したら…中に帰りたい」

「え?」

「もう、都と離れるのは嫌だ…権能に戻ったとしても離れたく無い。それに、都と一緒なら皆んなを愛せる…ヴィク、リャーレ、アガット、ルーナ、サリザンド、ソレス…それに…コルだって…」


カムイはあれから一度も目が合わないコルを見つめている。

コルを愛したのはカムイで、それに引きずられる様に

都がコルを受け入れた。だが、カムイはまだコルを愛していて、

突き放したのは自分だったが、もう一度あの目で見つめてほしいと

思っている様だった。


コルはなぁ、もうカムイ様に気持ちが無いんだよねぇ…。

一途だからこそ、気持ちを決めたら後戻りはしない。

それがコルなんだなぁ…参ったな。でも、都の中にカムイ様が

戻ったら、以前の様に良いところ3日に一度しか

都は出てこなくなるかもしれないじゃん!それは困る!


「カムイ様、そんな必要はありませんよ」

「ルーナ?」

「コルは都を好きと言うよりは…都しか受け入れてくれなかったから都に執着しているんだと思うんです。ゆっくり、皆んなで生活して…コルを愛してあげたらきっとコルも昔の様にカムイ様を大切にしますよ」

「…そう…なのかな…でも、俺…こんなんだし…愛して貰える自信無いや。へへっ、悪いな変な事言って」


自分の今の姿を思い出し、カムイは視線をコルから外すと

賑やかに騒いでる都を見つめた。


「カムイ様…貴方は美しい…私たちの太陽です。コルさんを見ないで…私達を、私を見てください…」

「リャーレ、お世辞はいいよ。分かってる…俺は醜い…そもそも俺は醜い本能だったんだから、あるべき姿に戻っただけだ…でも、ありがとう」

「カムイ様…」


一向に進まない核蘇生に、グレース神は隅で跪いていたが、流石に

イライラしたのか立ち上がり神力の波動を光の間に放った。

ビリビリと部屋を揺らし、皆びっくりしてグレース神を振り返った。


「…グ、グレース神?」

「貴様ら…良い加減にせよ…都様の御前にも関わらず茶番をいつまで続ける気だ…消炭にしてくれようか」

「あわわっ、ラファエラ!ごめん、怒んないでよ!」


都はグレース神に近寄ると頭を撫でて、『ごめん』と宥めた。


「都様…早く都様の中に私は戻りたいのです」

『はぁぁ⁉︎』

皆、その言葉に驚き都とグレース神の間に割って入ると、神だと

敬っていた筈の彼らは、新参者となったグレース神に突っかかった。


「おい!どう言う事だ!」

「…黙れ梟…そこを退け…都様が見えぬでは無いか」

「おい、ラファエラ…まさかお前、都の中に戻るつもりか⁉︎」


アガットの久しぶりの怒号にみな驚き振り返った。


「お、おぉ…アガットの怒号久々だな」


カムイはリャーレの腕の中でビクリと肩を震わせ、恐る恐る振り

返ると、そこにはアサシンの様な凍て付く眼差しのアガットがいた。


「何を驚く…当たり前では無いか。元々我は都様の権能。主人の中に戻るのは必定。やっと一つになれる…こんなに幸せな事は無い…梟よ、さっさと身体をお作りしろ!」

「なっ‼︎嘘だろ⁉︎…都、受け入れたりしないよな?」

皆の視線を浴びて、都は手を振りながら頭をブンブンと振っている。


「いやっ、ちょっ。わかんないよそんな事!そもそも身体が出来るかも分からないのに…」


その時だった。泉に光の柱が生まれ、その水を霧散さた。

そしてそれに呼応する様にマルスの身体が硬直し、そのまま床に

倒れ込んでしまった。硬くなった体は泡を吹きガクガクと痙攣して

いて、何が起きたのか、皆急な出来事に動けずに居た。

「都⁉︎」

誰よりも早くカムイはマルスの体を抱き寄せ、白目を剥いた身体を

揺すった。





















































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