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48. 俺の親父はどんなやつ②
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んーんーと頭を悩ますトーマスにクスリと笑みをこぼすヒルデ。
「お父君も……坊ちゃまには呪いのことを話しても良かったかもしれませんね」
だって彼の周りには信頼できるものがいたから。トーマスはどうだろうかと考える。
「いや……何も知らなかったから、こうしていられるたけで自分が子を成した後、亡くなるってわかってたらお酒や女とか金とか……何かに逃げていたかもしれないぞ」
きっと周りの人も心無い言葉で傷つけていたと思う。だってそうでもしないと恐怖に飲み込まれてしまう。父親が何も言わなかったのは、死への恐怖をトーマスに感じさせないため。それだけ父親が感じた死への恐怖は恐ろしかったのだろう……。
はて?と自分の言葉に違和感を抱く。
「なあ……」
「なんでございましょう?」
「俺って……子供いないよな…………?」
「私は存じ上げませんが……どこかで子種を蒔いていらっしゃったのですか?」
「はあっ!?俺はサラさん一筋だ!!サラさんの手も握ったことないけど……」
哀れみの視線を向けるヒルデ。
「その視線やめろ!まだ若いんだからいくらでもチャンスはあるだろ!!」
「人はすぐに老いるものです」
「………………」
「私をジロジロ見るのはおやめください」
心の声が聞こえる……誰がオバハンだ。
「おふざけはこれくらいにしといて……。いや、俺に子供いないのにどうして王女は俺のこと連れて行こうとしたのかと思ってよ」
呪いは子を成した後に現れる。トーマスにまだ子はいない。チェ■■くんなのだからいるわけなし。トーマスの疑問にヒルデは淡々と答える。
「ムカついたんじゃないですか?」
「は?」
「何も知らずに幸せそうだったから」
「……………………」
「坊ちゃまは顔も声も当時の男爵にそっくりだそうですよ。そんな人間が楽しそうにしているのか単純にムカついたんじゃないですかね?坊ちゃまは親に愛され、友人にも使用人にも愛され……羨ましい……妬ましかったんじゃないですか?王女の周りにはあまり信頼できる方はいなかったようですので、尚更その思いは強かったようでしょうね」
両親や兄姉から甘やかされてきたものの、そこに厳しさはほとんどなかった。ただただ人形のように愛でられた。トーマスは愛されながらも自分の足で立つ力を持っている。他人の力を借りつつ、時には自分が他人の力になる。王女はそんな強さが羨ましかったのかもしれない。それはトーマスには言わないが……
そんな内心の言葉が聞こえないトーマスはヒルデの言葉にゾッとする。むしろここまで生きてこれたことが奇跡だったような気がする。
「…………オレ、よく無事だったな」
「ちなみにこれが当時の男爵です」
ヒルデがどこかから取り出した紙を見る。そこには……
「なんか……違和感があるな…………」
「そうですね。坊ちゃまとジオ様を混ぜちゃいましたという感じですね」
そこに描かれていたのは、トーマスの顔にジオのようなスラッとした身体がくっついた絵だった。違和感はあるものの結構な素敵男子がそこにはいた。
「坊ちゃまもこんな感じの身体になったらモテるんじゃないですか?」
「…………俺は自分の筋肉が好きなんだ」
しかし、同じ顔なものの体格が違うだけでこうも人に与える印象が違うとは…………。これでかの男爵と自分を重ねるとは……
「王女は目が悪いのか……?」
ヒルデは答えず、また可哀想な子を見るかのような目でこちらを見てきた。かと思うと何かひらめいたようだった。
「そういえば坊ちゃま、この後お暇ですか?」
話しが急に違う方に飛んでいったので、驚いたが返事はしっかりする。
「今日は何もないが」
「じゃあ手伝っていただけますか?」
「ああ、構わないぞ。何やればいいんだ?」
その言葉にニヤッと笑うヒルデ。その手には大きな丈夫そうな袋とスコップと虫取り網が握られていた。
「大事なものを取り戻しに参ります」
そういうヒルデの顔は少々下卑た笑みが浮かんでいた。
「お父君も……坊ちゃまには呪いのことを話しても良かったかもしれませんね」
だって彼の周りには信頼できるものがいたから。トーマスはどうだろうかと考える。
「いや……何も知らなかったから、こうしていられるたけで自分が子を成した後、亡くなるってわかってたらお酒や女とか金とか……何かに逃げていたかもしれないぞ」
きっと周りの人も心無い言葉で傷つけていたと思う。だってそうでもしないと恐怖に飲み込まれてしまう。父親が何も言わなかったのは、死への恐怖をトーマスに感じさせないため。それだけ父親が感じた死への恐怖は恐ろしかったのだろう……。
はて?と自分の言葉に違和感を抱く。
「なあ……」
「なんでございましょう?」
「俺って……子供いないよな…………?」
「私は存じ上げませんが……どこかで子種を蒔いていらっしゃったのですか?」
「はあっ!?俺はサラさん一筋だ!!サラさんの手も握ったことないけど……」
哀れみの視線を向けるヒルデ。
「その視線やめろ!まだ若いんだからいくらでもチャンスはあるだろ!!」
「人はすぐに老いるものです」
「………………」
「私をジロジロ見るのはおやめください」
心の声が聞こえる……誰がオバハンだ。
「おふざけはこれくらいにしといて……。いや、俺に子供いないのにどうして王女は俺のこと連れて行こうとしたのかと思ってよ」
呪いは子を成した後に現れる。トーマスにまだ子はいない。チェ■■くんなのだからいるわけなし。トーマスの疑問にヒルデは淡々と答える。
「ムカついたんじゃないですか?」
「は?」
「何も知らずに幸せそうだったから」
「……………………」
「坊ちゃまは顔も声も当時の男爵にそっくりだそうですよ。そんな人間が楽しそうにしているのか単純にムカついたんじゃないですかね?坊ちゃまは親に愛され、友人にも使用人にも愛され……羨ましい……妬ましかったんじゃないですか?王女の周りにはあまり信頼できる方はいなかったようですので、尚更その思いは強かったようでしょうね」
両親や兄姉から甘やかされてきたものの、そこに厳しさはほとんどなかった。ただただ人形のように愛でられた。トーマスは愛されながらも自分の足で立つ力を持っている。他人の力を借りつつ、時には自分が他人の力になる。王女はそんな強さが羨ましかったのかもしれない。それはトーマスには言わないが……
そんな内心の言葉が聞こえないトーマスはヒルデの言葉にゾッとする。むしろここまで生きてこれたことが奇跡だったような気がする。
「…………オレ、よく無事だったな」
「ちなみにこれが当時の男爵です」
ヒルデがどこかから取り出した紙を見る。そこには……
「なんか……違和感があるな…………」
「そうですね。坊ちゃまとジオ様を混ぜちゃいましたという感じですね」
そこに描かれていたのは、トーマスの顔にジオのようなスラッとした身体がくっついた絵だった。違和感はあるものの結構な素敵男子がそこにはいた。
「坊ちゃまもこんな感じの身体になったらモテるんじゃないですか?」
「…………俺は自分の筋肉が好きなんだ」
しかし、同じ顔なものの体格が違うだけでこうも人に与える印象が違うとは…………。これでかの男爵と自分を重ねるとは……
「王女は目が悪いのか……?」
ヒルデは答えず、また可哀想な子を見るかのような目でこちらを見てきた。かと思うと何かひらめいたようだった。
「そういえば坊ちゃま、この後お暇ですか?」
話しが急に違う方に飛んでいったので、驚いたが返事はしっかりする。
「今日は何もないが」
「じゃあ手伝っていただけますか?」
「ああ、構わないぞ。何やればいいんだ?」
その言葉にニヤッと笑うヒルデ。その手には大きな丈夫そうな袋とスコップと虫取り網が握られていた。
「大事なものを取り戻しに参ります」
そういうヒルデの顔は少々下卑た笑みが浮かんでいた。
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