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第一章:アーリーンの恋 【第二部】貴族学園で二度目の恋を
2.クラス分け
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事前に通知は受けていたが、廊下に張り出されていたクラス分け一覧表でも自分がA組であることを再確認したアーリーンは、D組、C組、B組の前を素通りしてA組の教室の前までやってきた。
成績順とはいえ、当然ではあるが家柄も基準に入っているという噂通り、A組にいるのはほぼ侯爵家以上の者ばかりだ。
「ヤミソンにいさま……ううん、ヤミソン殿下も、いらっしゃるのね」
呟いてみると、緊張して足が遅くなった。
同じクラスにいることは、先ほど名前を確認したので間違いなかった。
むしろ第二王子であるヤミソン殿下がA組以外に籍を置く筈がないのだが。
警備上の問題もある。守るべき存在を一か所に集めておく方が守り易いのは当たり前のことだ。
あの日以来、アーリーンは自分宛てに王宮から届いた招待状すら欠席し続けてしまっていた。
さすがに3度続けてお断りしてからは、招待状が届くことも減ってしまった。
それはそれで寂しかったが、どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。
そうして、ついに逃げる訳にはいかなくなった。
「大丈夫。エルドレッド……殿下より、ずっとマシよ」
「何をぶつくさ言っているの。ここはあなたのような者が来る場所ではないわ。自分の場所へお帰りなさい!」
ダン、と激しい足音が響いて、驚きと共に目を瞠る。
そこには、美しい令嬢が立ち塞がっていた。
艶やかなブルネットの髪が、白皙の頬と引き結ばれた赤い唇を引き立てる。
「ナディーン・ケイフォード辺境伯令嬢?」
あの日、エルドレッドから王太子妃失格を告げられてからのアーリーンは、それまでとは心を入れ替え真面目に女家庭教師の下で勉強に勤しんできた。
国内貴族の名前や特徴に関してもきっちりと覚えた。たとえ会ったことは無くとも相手が誰か推測することができるほど。
「あら。私のことが分かるのね。偉いわ」
「ありがとう……ございます?」
「ならば、私の言葉を受け入れることもできるわね?」
「えっ!?」
「あなた、地方の男爵かせいぜい子爵家の方でしょう? だったらこのような場所にいる資格などないでしょうに。どうせ上位貴族の子息に取り入ろうとでもいうのでしょう。不潔な精神で学園に通わないで下さるかしら。ここは勉強をする場所ですわ!」
誇らしげに胸を張って宣言された。
アーリーンも、ナディーンの理念には大いに賛成だ。だが、だからこそ教室へ早く入りたかった。
「ですが、その。わたくしの教室は、A組です。あらためて名のり……」
「嘘おっしゃい! 今年度のA組は侯爵家以上の者しかおりません。ご存じでしょうが、辺境伯は侯爵家相当とされておりますわ。ですから私はこの栄えあるA組の末席を汚すことができました。だからこそ、あなたのような下劣な嘘をついてまで押し入ってこようとする者は許せませんのよ!」
「げ、下劣……」
あまりの謂れように眩暈がした。
目の前の令嬢は自分の言葉に高揚してしまったのか、アーリーンが自己紹介する隙すら与えようとはしてくれなかった。
落ち着いて貰うにはどうすればいいのか。アーリーンは途方に暮れた。
「あんまり遅いから探しに来ちゃった。なにこれ、変装なの? 似合ってるけど、でも僕はいつものアーリーン嬢の方が好きだなぁ」
するりと、編み込んでいた髪を止めているピンを抜かれて髪が一気に解けていく。
ただでさえふわふわしているアーリーンの髪が、編み込まれていたお陰で癖が大きくついて、よりふわふわのモコモコになって広がった。
「や、ヤミソンにいさまったら!」
「あはは。よかった。僕の知ってるアーリーンだ」
笑顔で言われて頬が染まる。
思わず視線を遮るように、頭を下げた。
何度も練習を重ね、女家庭教師から褒められるまで上達したカッツィーを取る。
「失礼しました、ヤミソン殿下」
「んー? にいさまって呼んでってお願いしたよ」
腰を下げ、俯けた顔を覗き込まれた。
「同じ歳ではありませんか」
そのままの姿勢で答える。絶対に、ギブアップなんてしない。
「半年も歳上だ」
「半年は半年。一年ではありませんから。その証拠に、同じ学年、同じクラスとなれて光栄です、ヤミソン第二王子殿下」
「降参だ! でも学園内で、殿下はやめて欲しいな」
両手を挙げて降参のポーズを取ったヤミソンに、アーリーンは笑顔を見せた。
「一年間、どうぞよろしくお願いいたします。ヤミソン様」
「様もなくていいのに」
「それだけは、ご容赦ください。私は侯爵家の娘です。臣下としての礼を失する訳にもいきませんし、なにより婚約者でもない異性を呼び捨てになどできません」
キッパリと伝えると、ようやく諦めてくれたらしい。
「昔のアーリーンとは、違うって事ね。了解」
「ヤミソン様。どうか私のことを呼び捨てにするのもお止めください。まだ婚約者募集中なので」
「おぉー! 新生アーリーン嬢はいうことは手厳しい」
「ふふ。王宮へ出入りさせて頂いていた頃より勉強に励んで参りましたから。簡単に負けたりいたしませんわ」
「あのっ!」
ナディーン嬢から声を掛けられ気が付いた。
そういえば彼女との間のことは何も解決していなかった。
なんとなくヤミソンのお陰でうやむやに終わらせそうになってしまった。
「あれ、まだいたんだ?」
にこやかな笑顔なのに、どこか冷たい声でヤミソンが一歩アーリーンの前へ出る。
「ヤミソン第二王子殿下に、ケイフォード辺境伯が二女ナディーンがご挨拶申し上げます」
「いい。要らない。ここは学園だ。爵位を持ち込むべき場所ではない。それで? アーリーンにまだ文句があるっていうのかな」
「いえ、その……その者……ひえっ。いえ、その御方は、その……」
「はぁ。まだ分からないの? 分かりたくないなら、授業が始まるまで待てばいい。教師がきたら本当の名前と籍が本当にA組にあるのかわかるでしょ」
言い終わらない内に、ヤミソンがアーリーンの肩に手を掛けると、守るように教室へと誘った。
「あの!」
そのヤミソンの手をアーリーンはやさしく振りほどくと、廊下で呆然と立ち尽くしていたナディーンの所まで戻り、冷たくなった彼女の手を取った。
「自己紹介が遅れて失礼しました。わたくしは、ペイター侯爵家の一女、アーリーン゠エバンゲリネ・ペイター。家の方針もあり、デビュタント前ということでお茶会の席などには出席せずにおりました。同じクラスになったのですから、これをご縁に、お見知りおきくださいませ」
先ほどヤミソン殿下へ贈ったカッツィーより簡略化したものを、敬意とは別のもの、親愛を込めて笑顔で贈る。
侍女のアンナから教わった対令嬢向けの秘密兵器だ。
同じA組にいる令嬢は少ないので、初日ではあるが発動させてしまって問題ないだろう。
鉄は熱いうちに打てというように、同性の友情は強引にでも引き寄せてしまうべきで、得られると思ったらそのチャンスは逃がすべからずだと、懇々と教え込まれたのだ。
そうして多分いまこの時が、アンナのいうチャンスなのだと思う。多分だが。
「……ハイ。しちゅれいしました。わ、わたしは、その、大変しちゅれいを」
「いいのです。気になさらないで。ここは王立貴族学園ですもの。礼法も仲良くするのも、ここで一緒に勉強していきましょうね」
「はいぃ」
ダメ押しに、謝罪を遮ってにっこりと笑い掛けると、ナディーン嬢も笑顔になってくれて、アーリーンはホッとした。なんとか拗れずに済んだようだ。
にこにこと笑い合っていると、ヤミソンが近付いてきた。
なにやらわざとらしいほど拗ねた顔と声をしている。
「まったく。一体どこでそういう手管覚えたの? 男にはしてないだろうね」
じろりと睨まれて、慌てて手を振った。
「あるはずがないです。もうずっと、お茶会へも出席していなかったことは、ヤミソン殿下もご存じではありませんか」
「……」
「えっと、……ヤミソン、様」
ヤミソンとも勿論エルドレッドとも、距離を置こうと思っていたアーリーンとしては不本意そのものだ。だが如何にも不満だという視線を送ってくるヤミソンの機嫌をこれ以上損ねたくなくて、強請られるまま名前を呼んだ。
その時、少しだけ頬が赤くなったのは許して欲しい。
幼馴染みとはいえこうして顔を合わせるのは5年振りなのだ。
アーリーンを守るように前に立ったヤミソンは、アーリーンの知っている幼馴染みのヤミソンとはまるで別人だった。
ほとんど違いのなかった背の高さもすっかり引き離されて、表情を確かめようとしても視線を上へと向けなくてはいけなくなっていた。肩幅だってすっかり広くなっている。
ただ『アーリーン』と名前を呼ぶ声だけは変わっていなくて、それだけは安心できた。
勿論、成長途中ではあるし大人というにはほど遠いけれど、それでも先ほど肩に乗せられた手の大きさも、アーリーンと手を繋いでいた頃とまるで違って大きくて、節くれだっていた。
思わず思考があらぬ方向へと進んでしまって、アーリーンの頬がどんどん熱くなっていく。
それを誤魔化したくて、ヤミソンの視線を避けるように顔を俯けた。
「はぁ。参ったな、もう」
ヤミソンの呟きに、萎れる。
浮かれている場合などではない。入学初日早々、廊下で騒動を起こし、第二王子の手を煩わせてしまったのだ。
これがアンナにバレたら叱られること間違いなしだ。
やってしまった感が酷い。
自然と肩が落ち、顔色も悪くなっていく。
「はい。朝から、大変ご迷惑をお掛け致しました」
震えそうな声を必死に抑えて深々と頭を下げて謝罪すると、アーリーンはその後はずっと顔を俯けたまま、教師が来るまで顔を上げようとしなかった。
成績順とはいえ、当然ではあるが家柄も基準に入っているという噂通り、A組にいるのはほぼ侯爵家以上の者ばかりだ。
「ヤミソンにいさま……ううん、ヤミソン殿下も、いらっしゃるのね」
呟いてみると、緊張して足が遅くなった。
同じクラスにいることは、先ほど名前を確認したので間違いなかった。
むしろ第二王子であるヤミソン殿下がA組以外に籍を置く筈がないのだが。
警備上の問題もある。守るべき存在を一か所に集めておく方が守り易いのは当たり前のことだ。
あの日以来、アーリーンは自分宛てに王宮から届いた招待状すら欠席し続けてしまっていた。
さすがに3度続けてお断りしてからは、招待状が届くことも減ってしまった。
それはそれで寂しかったが、どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。
そうして、ついに逃げる訳にはいかなくなった。
「大丈夫。エルドレッド……殿下より、ずっとマシよ」
「何をぶつくさ言っているの。ここはあなたのような者が来る場所ではないわ。自分の場所へお帰りなさい!」
ダン、と激しい足音が響いて、驚きと共に目を瞠る。
そこには、美しい令嬢が立ち塞がっていた。
艶やかなブルネットの髪が、白皙の頬と引き結ばれた赤い唇を引き立てる。
「ナディーン・ケイフォード辺境伯令嬢?」
あの日、エルドレッドから王太子妃失格を告げられてからのアーリーンは、それまでとは心を入れ替え真面目に女家庭教師の下で勉強に勤しんできた。
国内貴族の名前や特徴に関してもきっちりと覚えた。たとえ会ったことは無くとも相手が誰か推測することができるほど。
「あら。私のことが分かるのね。偉いわ」
「ありがとう……ございます?」
「ならば、私の言葉を受け入れることもできるわね?」
「えっ!?」
「あなた、地方の男爵かせいぜい子爵家の方でしょう? だったらこのような場所にいる資格などないでしょうに。どうせ上位貴族の子息に取り入ろうとでもいうのでしょう。不潔な精神で学園に通わないで下さるかしら。ここは勉強をする場所ですわ!」
誇らしげに胸を張って宣言された。
アーリーンも、ナディーンの理念には大いに賛成だ。だが、だからこそ教室へ早く入りたかった。
「ですが、その。わたくしの教室は、A組です。あらためて名のり……」
「嘘おっしゃい! 今年度のA組は侯爵家以上の者しかおりません。ご存じでしょうが、辺境伯は侯爵家相当とされておりますわ。ですから私はこの栄えあるA組の末席を汚すことができました。だからこそ、あなたのような下劣な嘘をついてまで押し入ってこようとする者は許せませんのよ!」
「げ、下劣……」
あまりの謂れように眩暈がした。
目の前の令嬢は自分の言葉に高揚してしまったのか、アーリーンが自己紹介する隙すら与えようとはしてくれなかった。
落ち着いて貰うにはどうすればいいのか。アーリーンは途方に暮れた。
「あんまり遅いから探しに来ちゃった。なにこれ、変装なの? 似合ってるけど、でも僕はいつものアーリーン嬢の方が好きだなぁ」
するりと、編み込んでいた髪を止めているピンを抜かれて髪が一気に解けていく。
ただでさえふわふわしているアーリーンの髪が、編み込まれていたお陰で癖が大きくついて、よりふわふわのモコモコになって広がった。
「や、ヤミソンにいさまったら!」
「あはは。よかった。僕の知ってるアーリーンだ」
笑顔で言われて頬が染まる。
思わず視線を遮るように、頭を下げた。
何度も練習を重ね、女家庭教師から褒められるまで上達したカッツィーを取る。
「失礼しました、ヤミソン殿下」
「んー? にいさまって呼んでってお願いしたよ」
腰を下げ、俯けた顔を覗き込まれた。
「同じ歳ではありませんか」
そのままの姿勢で答える。絶対に、ギブアップなんてしない。
「半年も歳上だ」
「半年は半年。一年ではありませんから。その証拠に、同じ学年、同じクラスとなれて光栄です、ヤミソン第二王子殿下」
「降参だ! でも学園内で、殿下はやめて欲しいな」
両手を挙げて降参のポーズを取ったヤミソンに、アーリーンは笑顔を見せた。
「一年間、どうぞよろしくお願いいたします。ヤミソン様」
「様もなくていいのに」
「それだけは、ご容赦ください。私は侯爵家の娘です。臣下としての礼を失する訳にもいきませんし、なにより婚約者でもない異性を呼び捨てになどできません」
キッパリと伝えると、ようやく諦めてくれたらしい。
「昔のアーリーンとは、違うって事ね。了解」
「ヤミソン様。どうか私のことを呼び捨てにするのもお止めください。まだ婚約者募集中なので」
「おぉー! 新生アーリーン嬢はいうことは手厳しい」
「ふふ。王宮へ出入りさせて頂いていた頃より勉強に励んで参りましたから。簡単に負けたりいたしませんわ」
「あのっ!」
ナディーン嬢から声を掛けられ気が付いた。
そういえば彼女との間のことは何も解決していなかった。
なんとなくヤミソンのお陰でうやむやに終わらせそうになってしまった。
「あれ、まだいたんだ?」
にこやかな笑顔なのに、どこか冷たい声でヤミソンが一歩アーリーンの前へ出る。
「ヤミソン第二王子殿下に、ケイフォード辺境伯が二女ナディーンがご挨拶申し上げます」
「いい。要らない。ここは学園だ。爵位を持ち込むべき場所ではない。それで? アーリーンにまだ文句があるっていうのかな」
「いえ、その……その者……ひえっ。いえ、その御方は、その……」
「はぁ。まだ分からないの? 分かりたくないなら、授業が始まるまで待てばいい。教師がきたら本当の名前と籍が本当にA組にあるのかわかるでしょ」
言い終わらない内に、ヤミソンがアーリーンの肩に手を掛けると、守るように教室へと誘った。
「あの!」
そのヤミソンの手をアーリーンはやさしく振りほどくと、廊下で呆然と立ち尽くしていたナディーンの所まで戻り、冷たくなった彼女の手を取った。
「自己紹介が遅れて失礼しました。わたくしは、ペイター侯爵家の一女、アーリーン゠エバンゲリネ・ペイター。家の方針もあり、デビュタント前ということでお茶会の席などには出席せずにおりました。同じクラスになったのですから、これをご縁に、お見知りおきくださいませ」
先ほどヤミソン殿下へ贈ったカッツィーより簡略化したものを、敬意とは別のもの、親愛を込めて笑顔で贈る。
侍女のアンナから教わった対令嬢向けの秘密兵器だ。
同じA組にいる令嬢は少ないので、初日ではあるが発動させてしまって問題ないだろう。
鉄は熱いうちに打てというように、同性の友情は強引にでも引き寄せてしまうべきで、得られると思ったらそのチャンスは逃がすべからずだと、懇々と教え込まれたのだ。
そうして多分いまこの時が、アンナのいうチャンスなのだと思う。多分だが。
「……ハイ。しちゅれいしました。わ、わたしは、その、大変しちゅれいを」
「いいのです。気になさらないで。ここは王立貴族学園ですもの。礼法も仲良くするのも、ここで一緒に勉強していきましょうね」
「はいぃ」
ダメ押しに、謝罪を遮ってにっこりと笑い掛けると、ナディーン嬢も笑顔になってくれて、アーリーンはホッとした。なんとか拗れずに済んだようだ。
にこにこと笑い合っていると、ヤミソンが近付いてきた。
なにやらわざとらしいほど拗ねた顔と声をしている。
「まったく。一体どこでそういう手管覚えたの? 男にはしてないだろうね」
じろりと睨まれて、慌てて手を振った。
「あるはずがないです。もうずっと、お茶会へも出席していなかったことは、ヤミソン殿下もご存じではありませんか」
「……」
「えっと、……ヤミソン、様」
ヤミソンとも勿論エルドレッドとも、距離を置こうと思っていたアーリーンとしては不本意そのものだ。だが如何にも不満だという視線を送ってくるヤミソンの機嫌をこれ以上損ねたくなくて、強請られるまま名前を呼んだ。
その時、少しだけ頬が赤くなったのは許して欲しい。
幼馴染みとはいえこうして顔を合わせるのは5年振りなのだ。
アーリーンを守るように前に立ったヤミソンは、アーリーンの知っている幼馴染みのヤミソンとはまるで別人だった。
ほとんど違いのなかった背の高さもすっかり引き離されて、表情を確かめようとしても視線を上へと向けなくてはいけなくなっていた。肩幅だってすっかり広くなっている。
ただ『アーリーン』と名前を呼ぶ声だけは変わっていなくて、それだけは安心できた。
勿論、成長途中ではあるし大人というにはほど遠いけれど、それでも先ほど肩に乗せられた手の大きさも、アーリーンと手を繋いでいた頃とまるで違って大きくて、節くれだっていた。
思わず思考があらぬ方向へと進んでしまって、アーリーンの頬がどんどん熱くなっていく。
それを誤魔化したくて、ヤミソンの視線を避けるように顔を俯けた。
「はぁ。参ったな、もう」
ヤミソンの呟きに、萎れる。
浮かれている場合などではない。入学初日早々、廊下で騒動を起こし、第二王子の手を煩わせてしまったのだ。
これがアンナにバレたら叱られること間違いなしだ。
やってしまった感が酷い。
自然と肩が落ち、顔色も悪くなっていく。
「はい。朝から、大変ご迷惑をお掛け致しました」
震えそうな声を必死に抑えて深々と頭を下げて謝罪すると、アーリーンはその後はずっと顔を俯けたまま、教師が来るまで顔を上げようとしなかった。
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