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最初の三日間は空腹に苛まれた、だが四日目から麻痺してきて何も感じない。これ幸いと思ったバルトロ王子は調子に乗った。しかし、五日目に異変を感じる。
酷く喉が渇いて仕方がないのだ、飲まず食わずと約束した手前、彼は早速後悔をした。

「うぐぅ……くそう、こんな事ならばもっと多めに水分を摂取しておけば良かった。だが、小水として出てしまうものな」
恨みまがしい事を呟きながら彼は爪を噛む、だがその時、胃に違和感を感じた。
「う、痛い!なんだ!?あ、まさか爪を噛んだせいなのか?これすらも許されないとは厳し過ぎやしないか」

大慌てで唇から爪を離した、すると胃の痛みは消え去り彼は「ほう」と安堵の表情を浮かべた。
「くそう、何が呪い玉まじないたまだ!俺はいったい何を飲まされたのだ?」
腹をさするが特に何も変化はない、不気味な玉を飲み込んでしまったことに自責の念に苛まれた。時間はまだ五日以上ある、ここで根を上げるのも癪に障った。

「水分がないのなら涎で凌げばよい、酸味のあるレモンを思い浮かべれば……」
彼はじっと目を瞑りレモンを思い浮かべた、するとジワリと涎が溢れてきたではないか。これで喉の渇きはなんとかなった。
だが、ほんとうに潤ったわけではない。無から有は生じないのだから。


九日目の朝。
ふらつきながら太陽の光をみた、小さな格子戸の外は天気が良い。小鳥の囀りが聞こえる、それすらも想像を掻き立てて「あぁ、捕まえて屠ればさぞ美味かろう」などと呟く始末だ。
王子は限界に来ていた、どうしようもなく喉が渇き、飢えに苦しんでいる。

「あ、ああ、どうして私はこんな事をしているのだったか、恨めしいぞ……」
彼は身体中を掻きむしりどうにもならない事を嘆く、「ガーガー」と喚いていると門の前で控えていた護衛兵が訊ねてきた。
「王子殿下、水を差し下ましょうか?断食をお止めになるのなら申し出てください」
「え……」

断食を止めようなどと誘惑をしてくる護衛兵に王子は縋るように門扉を叩く。
「何を言っている……私は」
「お辛いのでしょう?はたっぷり用意しております、いつでもお言いつけください」
「ゴクリ……」

チャポリと水瓶の音が聞こえた、彼はどうしようもない焦燥に駆られていた。

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