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結局彼は我慢を貫いた、やっとのことで十日目の朝を迎えたのだ。
「やった……俺はやったのだ!ゲホゲホ……あぁ」
すぐに引き戸を開けて一目散に外にでようとした、だが肝心の戸は開かない。どうやら護衛兵が閉じたままにしているようだ。焦った彼は最後の力を振り絞り強引に開けてしまう。
「ぐぬぅ……どうしてこうも重いのだ!さっさと開ければ良いものを姫は最後の抵抗をしているつもりか」
すぐに異変に気付いた護衛兵たちは驚いた、引き戸がこじ開けられて王子の腕が延びていたからだ。
「なりません王子!まだ姫の王女の確認が出来ておりません!」
「ええい!喧しい!こちらはそれどころではないのだ!飯だ、いいや水をもて!俺はここから出るのだ!」
「王子殿下!」
やっとの想いで外に出られた王子は外気の空気を思い切り吸い込んだ。
外は思いのほか好天で陽の光が眩しかった、あれほど煩わしかった小鳥の囀りさえ今は心地よいと思った。
「ははははっ!私は勝ったぞ、賭けに勝ったのだ!どうだ私は生きている!」
騒ぎを聞きつけてきたピエリナ王女が近寄ってきて驚愕する表情を見せた。こうして互いに対峙することを酷く怯えている。
「ああ、なんて事かしら王子……」
「どうだ、約束通りに俺は生還してやったぞ!これでサファイヤは俺のものだ!アーハハハハッ」
業突く張りのバルトロ王子はそう宣った、己の欲を剥き出しにした彼はとても醜い。
ところがピエリナ王女は首を横に振り「そのような約束はしていない」と言う。
「私は言いました”話を聞くだけ”だとね、それから時間は十日経っていませんよ」
「なんだと!?」
思いがけない彼女の言葉に王子は目を剥いた、当然だろう彼の中では約束が果たされていたのだから。
「嘘を吐くな!俺はちゃんと……」
王女は悲し気に俯いてその場を離れて行く、それを追うバルトロは必死に走り出した。もう少しで彼女の腕を取れるところまできた。
だが、それは叶わない。
「あ……何故だ、俺は十日間頑張った……はず……それなのに」
想い通りに動けない彼はズサリと地に伏した、両足がそれを拒絶したせいか、いいや違う。彼の足は砂になって霧散したのだ。
「約束は丸十日でございます、午後3時21分に解除となります。いまは何時だと思いますか、朝の6時54分でございます。大幅な先走りですわ」
「あ……ああ、俺は……そんなバカな……」
「さようなら、強欲な王子」
「あ、待って……俺はこの手に……もっ」
サラサラと朝日に揺れる王子の身体は一片も残らず砂になって消えた。
「ああ、なんて綺麗なんでしょう、あの方は最期に素敵なものを見せてくれました」
すっかり砂となった王子の身体は蒼い砂粒になっていた、王女はひと掬い取って生国へ送るように命じた。
完
「やった……俺はやったのだ!ゲホゲホ……あぁ」
すぐに引き戸を開けて一目散に外にでようとした、だが肝心の戸は開かない。どうやら護衛兵が閉じたままにしているようだ。焦った彼は最後の力を振り絞り強引に開けてしまう。
「ぐぬぅ……どうしてこうも重いのだ!さっさと開ければ良いものを姫は最後の抵抗をしているつもりか」
すぐに異変に気付いた護衛兵たちは驚いた、引き戸がこじ開けられて王子の腕が延びていたからだ。
「なりません王子!まだ姫の王女の確認が出来ておりません!」
「ええい!喧しい!こちらはそれどころではないのだ!飯だ、いいや水をもて!俺はここから出るのだ!」
「王子殿下!」
やっとの想いで外に出られた王子は外気の空気を思い切り吸い込んだ。
外は思いのほか好天で陽の光が眩しかった、あれほど煩わしかった小鳥の囀りさえ今は心地よいと思った。
「ははははっ!私は勝ったぞ、賭けに勝ったのだ!どうだ私は生きている!」
騒ぎを聞きつけてきたピエリナ王女が近寄ってきて驚愕する表情を見せた。こうして互いに対峙することを酷く怯えている。
「ああ、なんて事かしら王子……」
「どうだ、約束通りに俺は生還してやったぞ!これでサファイヤは俺のものだ!アーハハハハッ」
業突く張りのバルトロ王子はそう宣った、己の欲を剥き出しにした彼はとても醜い。
ところがピエリナ王女は首を横に振り「そのような約束はしていない」と言う。
「私は言いました”話を聞くだけ”だとね、それから時間は十日経っていませんよ」
「なんだと!?」
思いがけない彼女の言葉に王子は目を剥いた、当然だろう彼の中では約束が果たされていたのだから。
「嘘を吐くな!俺はちゃんと……」
王女は悲し気に俯いてその場を離れて行く、それを追うバルトロは必死に走り出した。もう少しで彼女の腕を取れるところまできた。
だが、それは叶わない。
「あ……何故だ、俺は十日間頑張った……はず……それなのに」
想い通りに動けない彼はズサリと地に伏した、両足がそれを拒絶したせいか、いいや違う。彼の足は砂になって霧散したのだ。
「約束は丸十日でございます、午後3時21分に解除となります。いまは何時だと思いますか、朝の6時54分でございます。大幅な先走りですわ」
「あ……ああ、俺は……そんなバカな……」
「さようなら、強欲な王子」
「あ、待って……俺はこの手に……もっ」
サラサラと朝日に揺れる王子の身体は一片も残らず砂になって消えた。
「ああ、なんて綺麗なんでしょう、あの方は最期に素敵なものを見せてくれました」
すっかり砂となった王子の身体は蒼い砂粒になっていた、王女はひと掬い取って生国へ送るように命じた。
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みんなの感想(5件)
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あの、ピエリナ姫様…
強欲王子が青い砂粒になったのが呪い玉の効果なら「真心」と名付けられたあのサファイアはまさか…(ガクブル)
ご感想ありがとうございます。
じつは…そうなんです
ちょっと恐ろしい真実でした(>_<)
6.うわー‼️最後がやり直しのチャンスもないか~💦😭💦自業自得としか💧。
ご感想ありがとうございます。
そうですワンチャンなしでした( ;∀;)
5.頑張る王子❗(* ̄∇ ̄*)。
ご感想ありがとうございます。
頑張れるでしょうか('ω')