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ポートリック

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港町ポートリックを目指して南下しているララ達はその一歩手前まで来ていた。
なんと馬車で3週間かかるはずの距離をたった三日で走破したことになる、これにはララは茫然とした。
「さすがに早すぎるわ、時間軸がおかしくなりそうよ」
「はは、そう言うな早い事に越したことはないだろう?」
「それはそうだけど」

目的地より少し手前のベスホップという小さな町に立ち寄ったララは早速宿を取る、この町で中堅らしい宿は中々なものだった。お値段もそれなりにしたが、そこは資金が潤沢なので気にしない。
「はぁ~久しぶりのベッド……」
夕食もそこそこに部屋に籠ったララはう~んと伸びをする、ちなみにだがシェイドとは部屋は共有していない。当初そこは揉めたのだが「同衾するというなら絶交」とララが言えば従う他ないのだ。
尻に敷かれているシェイドは止む無く宿を離れれ、神らしく精神体に戻りどこかへ消えて行った。

これは宿代を安くするためである、そんな便利なことなら最初からそうして欲しいとララは思う。
「まったく、面倒なことだわ……ふあぁあ」
鳥の身体に張り付いていたララは一気に疲れがでてしまいグッスリ寝込んでしまった。翌日は宿の女将が起こしに来るまで寝入ってしまったことに焦った。

「う~ん良く寝た、ご飯も美味しい」
久しぶりに一人だけのご飯を宿で摂った、これはかなり嬉しい事だ。シェイドがいると何かと気を使うのだ。腐っても神なのだなとララは嘆息した。

宿を後にすると早速シェイドが来るものと思っていたララだ。
ところが彼は現れないどうしたことだと頭を捻ったが、それならそれで構いはしないと乗り合い馬車へ移動する。銅貨を支払い席を確保した。
「町までは半日というところかしら、お尻が痛いのは我慢ね」


ガタコトと揺れる馬車はなんなくポートリックに着いた、お尻を気にしながら伸びをして彼女は最後の町へ降り立った。
「ポートリック、国を出るための最後の土地ね」
ここにもギルドはあったが、彼女はわざわざ顔を出すことはしない。前の町グエンドローで荒稼ぎしたせいだ。ここでは目立つことはしたくないのだ。

「また破落戸ゴロツキどもに狙われたら敵わないものね……」
彼女なりに学習したのだ、目立つ杭はどう抗っても打たれるのだと。そんな彼女は船着き場にやってきて出航はいつ頃なのか調べる。
最新の出航日は三日後とあった、そこには国外へ出る為の関所が常設されていた。彼女はギルドカードを持っていて良かったと安堵した。

「あと三日か……しばらくはゴロゴロして過ごすのもありかしら?」
彼女は宿を探しながら屋台の串焼きなどを買った、海辺の町らしく魚介が豊富だ。烏賊となにかの貝類を甘く煮付けた串を頬張りながらひたすら歩く。
港町はとても大きくて人も多い、メインストリートをモミクチャにされながら彼女は歩く羽目になった。しばらく行けば一本道を外れると緩やかな通りがあることに気が付いた。

「はあ、メイン通りを外れるとこんなにも違うのね」
ゆったりノンビリのという通りにも屋台やマーケットらしきはあった。ホッと息をはいた彼女はまたそこで買い食いするのだ。
「あ~美味しい!」
ぱくつく彼女を見て可笑しそうに笑う屋台の御婆さんが「一夜干しだからねえ」と微笑む。気にいった彼女はそこでお腹いっぱいにすることにした。

「どれもこれも美味しいです、特にコレ!」
「ふふ、そうかい良かったよぉ、鯛の一夜干しだよ」
満たされた彼女は良い宿はないか尋ねる、すると娘たちが営んでいる宿があると紹介してくれた。
「ロウ婆から紹介されてと言えば良いよ、少しはサービスしてくれるよ」
「はい、ありがとうございます」

宿屋”タコつぼ亭”という場所を紹介して貰った彼女はそこに行く、カランという音を叩て伺うと可愛らしい案内人が「いらっさい!」と、たどたどしい声で迎えてくれた。
「お食事ですか、御休みですか?」
その後ろから若い女将らしきが声を掛けて来た。

「あの、ロウ婆から紹介されて……泊まりで三日ほど」
「まあ、いらっしゃい!歓迎しちゃうわ」



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